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日常に奇妙さを足す七つの実践に、実験の裏づけはあったか

日常に奇妙さを足す七つの実践に、実験の裏づけはあったか

録音、言葉の切り貼り、編み物、テラリウム。気晴らしとして勧められる七つの実践を、実験の数字で確かめた。実践そのものを直接検証した研究は見つからず、近い研究の結果も割れていた。

TOMOAKI··趣味

気晴らしにも、正解ができている

リフレッシュやセルフケアは、いつのまにか、こなすべきタスクのような顔をしている。週末のヨガ、評判のキャンプ地、星の数で選んだマインドフルネスのアプリ。どれも悪くない。ただ、あらかじめ用意された正解をなぞる安らぎには、どこか消費的な後味が残る。そこに「ちょうどいい奇妙さ」を持ち込む、という名目で勧められる実践がある。音を録音する、言葉を切り貼りする、編み物を街に置く、というような。

この記事では、そのうち七つを、実験や調査の数字で確かめる。先に結果を言うと、勧められている形のまま、七つの実践そのものを直接検証した研究は、私が探した範囲では、一つも見つからなかった。周辺に近縁の研究があるのは、環境音、ランダムな刺激、擬人化、調理、園芸、編み物、窓の景色の七つ。つまり、近縁の研究を手がかりにするしかない。

その前に、前提を一つ確かめておく。慣れた刺激には脳が順応してしまう、という説明をよく見かける。古典の「快楽順応」の研究(フレデリックとレーウェンスタイン、1999年)が扱うのは、感情の強さが時間とともに薄れる心理上の現象で、脳の順応を示したものではない。順応を遅らせる条件を調べた研究もある。2012年のシェルドンとリュボミアスキーは、大学生481人を3か月、3時点で追い、感謝を続けることと、変化に関わる経験の多様性が続くことが、良い変化による幸福の目減りを遅らせたと報告した。ただし、1つの学生標本による相関・縦断の研究で、実験的な操作ではない。

日常の経験の多様性と気分を、実生活で追った研究もある。2020年のヘラーらは、ニューヨークとマイアミの若い成人132人(解析対象は122人)に、平均約105日間、スマホのGPSで位置を記録させ、2日に1回ほどランダムな時刻に気分を答えてもらった。1日をいくつの場所に分散して過ごしたかを表す指標と、肯定的な気分の関連は小さかった(B=0.79、p=.014)。新しい場所を訪れた日の係数(1.60)の半分ほどだ。しかも、新しい場所を訪れた日という変数を同じモデルに入れると、残ったのは新奇な場所のほうだった。前日の多様性は、翌日の気分を予測しなかった。多様性が気分を上げる、という話は、新しい場所に行った日は気分がいい、という話に近い。

「退屈は創造性を上げる」という実験の中身

七つの実践の土台にあるのが、退屈が創造性を呼ぶ、という主張だ。もとになっているのは、英国セントラル・ランカシャー大学のサンディ・マンらの実験で、2013年1月に英国心理学会の部会で発表され、論文は2014年にCreativity Research Journalに載った。論文の要旨によると、実験1は80人で、退屈な課題(電話帳の数字を15分書き写す、と報道されている)をした群は、しなかった群より、そのあとの創造性課題で成績が高かった。課題は、発泡スチロールのカップの使い道を考えるものだ。実験2は90人で、書き写す群、ただ読むだけの群、対照群の3条件。読むほうが書き写すより創造的だったのは、収束的な課題など一部の状況に限られる、と要旨は書く。

「続報で、読むだけのほうが効果が高いと分かった」と紹介されることがあるが、これは続報ではなく、同じ論文の実験2だ。「40人」と紹介されることもあるが、これは報道の言い方で、1群の人数にあたる。平均値や効果量は、論文の本文を読めていないので、書けない。この書き写し課題を直接追試して、失敗した公刊論文は、見つからなかった。ただ、近い主題では結果が割れている。ウォータールー大学の2022年の学位論文は、状態としての退屈が、むしろ発散的思考に不利だったと報告している(要旨のみ確認)。

マンの実験でいう「退屈」は、電話帳の数字を書き写すという課題で誘導した状態で、日常の退屈と同じものとは限らない。要旨は、空想が、退屈と創造性をつなぐ媒介になっているのではないか、と論じている。退屈という感情が創造性を上げたのか、退屈な課題をしている間に心がさまよったことが効いたのか、この実験は区別できない。

「退屈そのもの」ではなく、軽い作業中の空想が鍵かもしれない、という研究もある。2012年のベアードらは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の学生145人に、ものの変わった使い道を考える課題を出し、そのあと12分の休憩を挟んで、同じ課題の問題に取り組ませた。休憩は4種類。要求の高い課題、要求の低い課題、何もせず座って休む、休憩なし。成績が伸びたのは、要求の低い課題の群で、それも、以前に取り組んだ問題(反復問題)だけだった。新しい問題には、どの条件でも改善がなく(p=.39)、何もせず座っていた群は、休憩なしとの差が出なかった(p=.30)。

この結果は、「何もしないより、退屈な作業のほうが効く」という方向を示すが、再現は揃っていない。別の研究者たちによる追試は、同じ効果を示さなかった。2024年のマレーらは、心のさまよいが創造性に何をもたらすかを調べ、効果を見つけなかった。同じ論文は、2016年のスミーケンスとケイン、2021年のシュタインドルフらの研究も、効果を示さなかったと紹介している。2022年のテンとリエンも、90人を分析した自分たちの実験で、低負荷の課題の群が対照群を上回らなかった。

課題をいったん離れると、問題が解けやすくなる「孵化効果」の研究は、もっと数が多い。2009年のシオとオーメロッドのメタ分析は、孵化効果が全体として正であり、発散的思考の課題で、言語的な洞察課題や視覚的な洞察課題より利益が大きいと報告している(要旨のみ確認)。休憩の前に課題に取り組んだ準備の期間が長いほど、孵化の効果は大きかった。低負荷の課題を挟むほうが休息より強い、という優位は、要旨では、言語的な洞察課題で報告されている。ベアードらが見たのは発散的思考の課題での優位で、メタ分析が報告した課題型とは違う。いずれも作業を離れた休憩の効果で、退屈そのものの効果ではない。

心がさまようのは、楽しいことか

退屈や何もしない時間で起きているのは、心のさまよいだ。2010年のキリングワースとギルバートは、Scienceの1ページの短報で、iPhoneアプリを使い、日常のランダムな瞬間の思考と気分を集めた。解析対象は、成人2,250人(米国在住が73.9%、平均34歳)。心がさまよっていたのは、サンプルの46.9%だった。46.9%は、起きている時間の割合ではなく、ランダムに問いかけたサンプルの割合になる。性行為を除くすべての活動で、30%以上のサンプルで心がさまよっていた。

さまよっているとき、気分は低かった(b=−8.79)。ただし、楽しいことを考えてさまよっているときは、いまの活動に集中しているときと、気分が変わらなかった(b=−0.52、有意でない)。不快なことを考えていると、b=−23.9。何を「している」かは、気分の個人内のばらつきの4.6%を、何を「考えている」かは10.8%を説明した。論文は、「後の幸福度が下がる」とまでは書いていない。時間差の分析が、心のさまよいが不幸の「原因」であることを強く示唆する、と書く。詳細は補足資料に回されていて、私は補足資料を読んでいない。

心のさまよいは、コストばかりではない、という整理もある。2013年のムーニーハムとスクーラー、2015年のスモールウッドとスクーラーの総説は、読解や持続的注意の成績が下がるコストの一方で、将来の計画と創造的な問題解決には、価値があり得ると論じている。数字は本文を読めていないので、引かない。退屈には、頭を空にできる退屈と、頭を縛る退屈があるのかもしれない。ただ、それを分ける線は、今のところ、はっきりしない。

何もしない時間は、苦手でもあり、役にも立つ

では、何もしないで、ただ座っていると、どうなるのか。2014年のウィルソンらは、Scienceに11の実験を報告した。部屋には何もなく、時計やスマホや筆記具は預けて、6〜15分、ただ考える。大学生を中心に、楽しさの評価(9段階)が中点以下だった人は49.3%、集中が難しいと答えた人が57.5%、心がさまよったと答えた人が89.0%。自宅でやらせた実験では、32%の人が、立ち上がるなどの「ズル」を認めた。参加者を無作為に分けた実験もある。15人ずつの2群で、ふつうに考えて過ごした群の楽しさは平均3.20、外的な活動(本を読む、音楽を聴くなど)をした群は6.87だった。一人で考えているだけの時間は、短くても、苦手な人が多い。

有名なのは、電気ショックの実験だ。一人で座っている間、任意で、自分に電気ショックを与えることができた。解析の対象は、「もう一度ショックを受けないようにお金を払う」と答えた人に限られた42人(男性18人、女性24人)。そのうち、少なくとも1回、自分にショックを与えたのは、男性12人(67%)、女性6人(25%)だった。男性の1人は190回で、この外れ値を除くと、男性の平均は1.47回になる。合わせて18人、42人中の約43%だ。ただ、見るべきは大きさより、分母のほうだと思う。もともと「ショックは避けたい」と答えた人だけの、男女差の大きい、小さな部分集団の結果で、「人は何もしないより、痛みを選ぶ」と一般化できる数字ではない。この結果には、データの読み方への批判もある(フォックスらの2014年のコメント、要旨のみ確認)。

何もしない時間が役に立つ、という研究もある。2014年のデワーらは、高齢者70人(平均71〜73歳)に15語の一般名詞のリストを聞かせ、そのあと10分、暗い部屋で静かに休む群と、間違い探しをする群に分けた。物語を使った2012年の研究に続くものだ。7日後の再生は、休息群のほうがよかった(F(1,68)=12.957)。ただし、対象は高齢者で、課題は単語リストの再生だ。ウィルソンらの実験とは、対象も、測るものも、違う。何もしない時間が、苦手でもあり役にも立つ、というのは、同じ場面の話ではない。

七つの実践を、一つずつ確かめる

ここから、七つの実践を順に見ていく。

一つ目は、身の回りの音を録音すること。録音する行為そのものを、対照群つきで調べた研究は、見つからなかった。近いのは、自然音を聴く実験だ。2010年のアルヴァッソンらは、大学生約40人(本文の内訳は42人)に、暗算でストレスを与えたあと、4種類の音を聴かせた。自然音(50 dB)、高い騒音(80 dB)、同じ騒音を下げたもの、静かな環境音。皮膚の電気的な指標の回復は、自然音のほうが速い傾向があった(全体でp=0.048、自然音と高騒音の比較でp=0.045)。心拍変動には差がなかった。2021年のバクストンらのメタ分析は、自然音の研究18本をまとめて、ストレスや不快感の低下をg=−0.60と報告したが、研究間のばらつきは大きい。2022年のストッベらは、オンラインで295人に6分間、鳥の声と交通騒音を聴かせ、鳥の声で不安が減り、交通騒音で抑うつが増えたと報告した。認知課題には差がなかった。地下鉄の軋みや換気扇の唸りのような、人工的な生活音への注意が効く、という実験は、見当たらなかった。アルヴァッソンの実験は、むしろ、好ましくない音が回復を遅らせる傾向を示す側にある。

二つ目は、雑誌やチラシから単語を切り取って並べること。この切り貼りの技法そのものを検証した実験は、見つからなかった。近い実験として、2022年のMalthouseらの事前登録研究がある。無関係なウィキペディアの記事(「おまかせ表示」)を読ませると発想が高まるか、3つの研究(214人、263人、85人)で調べた。改善は見られず、しばしば、成績はむしろ悪化した。ベイズ分析も、効果なしという仮説を強く支持した。抄録の人数は592人で、各研究を足すと562人になり、合わない。ランダムな刺激が効くかどうかは、課題に十分関連しているか、ほどよくランダムであるかに、左右されるのかもしれない。

三つ目は、ベンチや消火栓に、「何を考えているのか」を想像すること。擬人化の研究は、人がどんなときに物へ意図を読み込むかが中心だ。意図的にそうすることの効果を測ったものには、行き当たらなかった。2008年のエプリーらは、孤独な人ほど擬人化しやすい、と報告した。2016年のバーツらは、178人で再現した。ところが、2024年の事前登録の追試(Xiaoら)は、慢性的な孤独感と擬人化の関連が、弱いか、ほぼ見られなかったと報告している(人数885人は二次情報による)。擬人化の個人差の尺度の研究(2010年)は、探索的な因子分析が348人、確認的な因子分析が609人で、その尺度を使って、動物への感情の帰属が40人、道徳判断が50人、環境への関心が52人、技術への信頼が54人と、小さな相関研究が積み重なっている。擬人化しやすい人が何を判断するかの記述で、擬人化を意図的に行うことの効果ではない。

四つ目は、電子レンジを使わず、数時間かけて一皿を作ること。「手間をかける」ことの効果を測った研究は、ない。調理のプログラムの研究はある。2020年のKurokoらは、ニュージーランドの12〜15歳の介入群91人、対照群27人に、5日間の集中的な調理プログラムと、その後6週間、毎週のミールキットを行い、精神的なウェルビーイングが対照群より改善したが、12か月後に差が残ったのは調理の自己効力感だけだった。2018年のファーマーらのレビューは、377件の検索結果から基準を満たした11の研究を評価して、質は低く(無作為化していない、検証されていない尺度、小さな標本)、証拠は予備的だとしている。調理教室の効果には、社会的な交流と、教室に通うことの効果が混ざっていて、手間をかけること自体の効果は切り出せない。日本の追跡研究(JAGES、10,978人、6年)では、傾向スコアでマッチングした男性1,347組、女性321組で、週1回以上料理をする人は、週1回未満の人より、要介護につながる認知症の発症の危険が低かった(男性0.77、女性0.73)。観察研究で、料理ができるほど元気だった可能性を排除できない。要旨しか読めていない。

五つ目は、瓶の中の苔と石の景色(テラリウム)。テラリウムの効果を測った査読論文は、確認できなかった。園芸や植物の世話には、近縁の研究がある。2015年のLeeらは、24人の若い男性に、室内植物の植え替えとコンピューター作業を、各15分、交互にしてもらった。植え替えのあと、拡張期血圧が低く、気分は「快適」「落ち着く」と評価された。ただし、比べた相手は計算作業で、何もしない、別の趣味、ではない。2017年のSogaらは、園芸のメタ分析で、22の研究、76の比較から、全体の効果量d=0.42と報告した。園芸療法は0.61、日常の園芸は0.31。出版バイアスがあり、患者対象の研究が多く、テラリウムのような小さな作業に当てはまるかは分からない。

六つ目は、小さな編み物を街に置くこと。編み物そのものの研究は、ある。2013年のライリーらは、編み物のサイトを通じて、3,545人のオンライン調査を行い、編む頻度と「穏やか」「幸せ」の感覚に関連を見つけた。自己選択の自己申告で、編む人が幸せなのか、幸せな人が編み続けるのかは、分けられない。2018年のコナーらは、658人の若い成人を13日間、日記で追跡し、創造的な活動が多い日の翌日に、肯定的な感情が高いと報告した。逆の向きは支持されなかった。ただ、これは編み物に限らない、広い「創造的活動」の定義だ。2016年のFutterman Collierらは、経験者47人に、動揺する出来事を思い出させたあと、無作為に、テキスタイルの制作、静かに自分を見つめる、書く、の3つに割り当てた。制作の群で、肯定的な気分と没頭が最も高く、反すうが最も低かった。ただ、比べた相手の一つは「書く」で、これは否定的な気分を保つように設計されている。全員が熟練者でもある。街に編み物を置く行為(ヤーンボミング)の心理を測った研究は、見つからなかった。2022年12月の神戸新聞は、兵庫県芦屋市の編み物の団体が、毛糸の編み物700枚以上を、総合公園のケヤキ8本に巻いたと報じている。置く人の心理を測ったものではない。

七つ目は、半日、窓辺から動かず、景色を眺めること。「半日」という長さの効果を測った研究は、見つからなかった。窓の景色の古典は、1984年のウルリッヒの研究だ。胆のうの手術を受けた患者を、窓から木が見える部屋と、壁が見える部屋で、年齢などを合わせた23組46人について、記録を比べた。入院日数は、木の景色が7.96日、壁が8.70日(P=0.025)。看護記録の否定的なコメントは、1人あたり、木の景色で1.13件、壁で3.96件だった。ただし、部屋の割り当ては無作為ではなく、空いた部屋に順に入れた。景色を眺める時間の長さそのものを調べた研究でもない。もう一つ、1995年のテネッセンとシンプリッチは、大学寮の窓から見える景色を、研究者が自然から人工まで4段階に分類し、その部屋の学部生72人を調べて、自然の景色が見える学生のほうが、指向性注意の測定の成績が高かった、と報告している(抄録のみ確認)。これも、部屋が無作為に割り当てられたわけではない。無作為割り付けの実験もある。2016年のLiとSullivanは、高校生94人を、窓なし、人工物の景色、緑の景色の教室に無作為に割り付けた。ただし1回のセッションで、結果の数字は二次情報でしか確認できていない。窓の景色の研究は、有名なわりに、規模の小さい観察に支えられている面が大きい。

ここで、「裏づけがある」という言葉の中身を、分けておく。実験は、無作為割り付けがあるか、対照が何か、測っているのが自己申告か生理指標かで、読める範囲が変わる。園芸のメタ分析(22の研究)は、事例の質がばらつき、出版バイアスがあった。編み物の大規模調査(3,545人)は、自己選択の標本だった。植え替えの実験(24人)は、比べた相手が計算作業だった。窓の景色の古典(23組、72人)は、無作為割り付けがなかった。どれも、方向は示すが、大きさを言うには足りない。

数えてみると、七つのうち、実践そのものの効果が直接測られたものは、ない。近縁の研究は、効果の方向を示すもの(園芸、編み物、窓の景色、自然音、調理のプログラム)と、示さないもの(ランダムな刺激)に分かれる。擬人化は、効果ではなく、起きる条件が研究されている。そして、近縁の研究も、小標本、自己申告、対照の弱さを抱えている。

日本の数字を、近い代理として置く

記事の主題に、直接対応する日本の統計はない。近い代理として、趣味の行動者率を見ておく。令和3年の社会生活基本調査(10歳以上、サンプル約17万)によると、過去1年に、園芸・庭いじりをした人が26.0%(2016年は25.7%)、料理・菓子作りが19.0%、日曜大工が11.0%、楽器が10.2%、編み物・手芸が8.8%(10.6%から減少)。編み物・手芸は、女性が16.5%、男性は0.8%だった。園芸は年齢で大きく違い、20〜24歳が4.8%、70〜74歳が43.1%になる。女性の65〜69歳は49.4%で、ほぼ半数が園芸をしている。

「何もしない時間」に近い数字もある。NHKの国民生活時間調査では、「休息」(休憩、おやつ、お茶、特に何もしていない状態)をした人が、平日に42.3%(2015年)、39.6%(2020年)、31.5%(2025年)と減っている。ぼんやり専用の項目ではないので、「ぼんやり」とは読めない。余暇時間のゆとり感を示す指数も、日本生産性本部の調査で、2020年の+12.8から、2025年は−0.8へ落ち、2018年以来のマイナスになった。

2026年版(速報)のレジャー白書では、2025年の年間の参加率が、園芸・庭いじり19.8%、料理(日常的なものは除く)12.5%、編物・織物・手芸7.4%だった。社会生活基本調査と数字が違うのは、聞き方と対象が違うためで、並べて優劣はつけられない。

日本の追跡調査(JAGES、高齢者49,705人、6年)では、趣味の種類ごとの認知症の発症の危険が出ている。女性の手工芸のハザード比が0.73、園芸が0.85、読書は0.98で有意でない。男性の園芸は0.91で、有意ではなかった。これは観察研究で、趣味を続けられるほど元気だった、という逆の可能性は、排除できない。

実験の外側に残る、小さな実践

ここまでを、並べ直す。退屈が創造性を呼ぶ、という実験は、80人の書き写しで、近い主題の研究では結果が割れている。ランダムな刺激は、検証した範囲で効かなかった。擬人化は、孤独感との関連の追試が、再現と、弱いか、ほぼなしという結果に割れた。そして、これは擬人化という実践の効果ではない。園芸や編み物や窓の景色には、近縁の研究があるが、小標本か、自己申告か、観察研究だ。窓の景色の古典は、無作為ではない割り当ての23組の患者の記録で、無作為に割り付けた実験は、高校生を対象にした1回のセッションの結果を、二次情報で確かめられただけだ。

だからといって、七つの実践が無意味だ、ということにはならない。裏づけがない、ということと、効かない、ということは、別の話だ。測られていないものは、まだ、何も言えない。ただし、ランダムな刺激だけは、近縁の実験が、効果なしの側に傾いていた。それ以外の六つは、足場が足りない、という段階にある。

裏づけの薄い実践を、それでも続けている人は、何を根拠にしているのだろう。根拠が要らない、という答えも、ありえる。ただ、その場合、「効く」という言葉は、いつから必要になったのだろうか。

出典

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  • Futterman Collier, A. D., Wayment, H. A., & Birkett, M. (2016). "Impact of Making Textile Handcrafts on Mood Enhancement and Inflammatory Immune Changes." Art Therapy, 33(4), 178–185.(著者所属機関の紹介ページで確認。効果量は未確認)
  • Sio, U. N., & Ormerod, T. C. (2009). "Does Incubation Enhance Problem Solving? A Meta-Analytic Review." Psychological Bulletin, 135(1), 94–120.(要旨のみ確認)
  • Tennessen, C. M., & Cimprich, B. (1995). "Views to Nature: Effects on Attention." Journal of Environmental Psychology, 15(1), 77–85.(抄録のみ確認)/Li, D., & Sullivan, W. C. (2016). "Impact of Views to School Landscapes on Recovery from Stress and Mental Fatigue." Landscape and Urban Planning, 148, 149–158.(書誌のみ確認。数字は二次情報)
  • Ulrich, R. S. (1984). "View through a Window May Influence Recovery from Surgery." Science, 224(4647), 420–421.(本文で確認)
  • 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果」.(概要PDFと第30-2表で確認)
  • NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」2015年・2020年・2025年.(公表されているCSVで確認。「休息」の定義は休憩、おやつ、お茶、特に何もしていない状態)
  • 日本生産性本部 余暇創研『レジャー白書2026』速報版(2025年の調査).(PDFで確認)
  • Ling, L., 辻大士, 長嶺由衣子, 宮國康弘, 近藤克則 (2020). 高齢者の趣味の種類および数と認知症発症 JAGES 6年縦断研究. 『日本公衆衛生雑誌』, 67(11), 800–810.(全文で確認)
  • 神戸新聞 (2022年12月). 芦屋ヤーンボミングクラブの記事.(報道による。学術調査ではない)
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