趣味とは何か——「鏡」という言い方を、実験の細部で疑う
趣味には承認欲求や嫉妬が映る、とはよく言われる。だが同じ賞状でも、予告された子どもだけが絵を描かなくなり、不意にもらった子どもは変わらなかった。趣味を「鏡」にたとえる言い方がどこまで通用するのか、実験の細部から確かめてみる。
殺生石の伝説が語る毒より、記録の噴火は大きい。茶臼岳は1408年からの噴火で180余名を死なせた。開湯伝説の食い違い、温泉の効能の基準、隣の那須塩原の別荘地をめぐる最高裁判決まで、資料で読む。

法隆寺宝物館の「静寂な展示室」、根津美術館の「静謐なアプローチ」。静けさを公式に書く東京の4か所と、何も書かない3館。その静けさが何でできているかを、筆者は訪ねずに公開された説明と研究だけで読む。
1997年の組織の経済理論は、過負荷で判子を押すしかない上司から、実質的な権限が部下へ移ると予測した。その予測が置いていた前提は、生成AIの時代にも保たれるのか。レビューと説明責任と権力の研究を、証拠と推論を分けてたどる。

ノーベル賞受賞者の「少なくとも22倍」は、何と比べた倍率か。このサイトの以前の版は、それを「最大」と書いていた。通説を検証した8本の記事を並べ直し、数字を変えずに意味を変える6つの手口を見ていく。

考案者は、20〜45分の区切りは後に短い休憩を挟めば注意と精神活動を最大にしうると「証明されている」と書き、その参考文献に小説の学習ガイドを挙げた。中身は未確認だ。AIに任せて待ち、確かめる働き方で、25分は何を測るのか。

ブエノスアイレスのチェス選手34人では、マスターに届くまでの練習量が3,016時間から23,608時間まで開いていた。1万時間の元の研究、その後のメタ分析、計画的な練習を唱えたエリクソンとの論争をたどり、練習量で説明できる範囲を確かめる。

睡眠が短い体質については、たとえば一つの家族の二人から、関わる遺伝子の変異が報告されている。ただ、この二人について、短くても支障がないかを確かめた結果は、論文の本文には示されていない。一方、睡眠を削った実験では、眠気の自己評価がわずかにしか増えなくなっても成績は落ち続けた。本物のショートスリーパーを数字で区切る、合意された線は見当たらず、同じ病名の患者3,703人には1,030通りの症状の組み合わせがあった。

結婚して責任感が出た、という趣旨のことを取引先に言われた。自分では、何も変わっていないつもりだった。米国の男性4,287人を追った研究では、既婚男性の17.7%の賃金の上乗せは、伸び方の違いまで取り除くと0.5%まで縮んだ。その違いから計算すると、彼らは結婚の1年前に、すでに8.5%多く稼いでいた。それでも双子で比べると、差は消えない。

「手段と目的を取り違えるな」とよく言われる。だが1937年の心理学は、手段がそれ自体の目的に変わる過程を職人気質や生涯の関心が育つ道筋として描き、1940年の社会学は官僚制の硬直として描いた。クラッカーを食べると強くなる、という絵本を聞かされた幼児は平均3.1枚、何も聞かなかった子は9.07枚食べた。

夢中を探すなら休日、と考えがちだ。だが1989年に発表された、シカゴの働く人にポケベルを持たせた調査では、挑戦も技能もふだんより高い時間の割合が、仕事中は54%、余暇中は17%だった。直接測り直しても向きは変わらなかった。それでも1989年の調査の参加者は、仕事中に別のことをしたがっていた。

コーチングの成績・スキルへの効果量は、研究を1本抜くと0.60から0.19に下がる。コーチング、タレントマネジメント、OKR、1on1、エンゲージメントサーベイの土台を、できる範囲でさかのぼって読み、流行と検証の順番を調べた。

マインドセットが変わったと確認できた13の研究だけを集めると、成績への効果量は0.04で、ゼロと区別がつかなかった。リスクの高い生徒への効果は、研究者によって0.09から0.19まで割れている。どちらを採るかの前に、何を数えているのかを見る。

温泉法上は、25度以上であれば成分が薄くても温泉になる。掲示の義務は禁忌症と、加水・加温・循環・入浴剤の別にあり、適応症にはない。コクランは関節リウマチを「証拠不十分」とした。家庭の浴槽を含む浴槽内の溺死・溺水は、2025年に8,031人。

17市場の調査で、利用者が自分のブランドを「違う」と選んだのは平均11%。英国の標準・特典付きの当座預金は、約9割が乗り換えれば得という試算なのに、当座預金全体の乗り換えは年3%。

「計測できないものは管理できない」はデミングの逆の主張として広まった誤引用である。SMART目標やKPI崇拝の実害と、それが覆い隠しているものについて。

趣味に投じた金額と時間は、続けるかやめるかの判断とは無関係のはずだ。鳩の実験からNBAのドラフトまで、サンクコスト効果をめぐる研究を辿る。

プロテインを摂り遅れると筋トレが無駄になる、というルールの一次資料をたどると、70代・未経験者・わずか13人の実験に行き着く。効いているのは時計ではなく、別の数字だった。

「情熱を先に見つければ、あとはずっと楽しく続けられる」――そう信じる人ほど、壁にぶつかった瞬間、興味を失いやすいという実験結果がある。この助言は「収入と安定を追え」と比べて、進路の性別の偏りを大きくしうるが、想像上の短期の反応だ。

ノーベル賞受賞者はアマチュアの演者である確率が「少なくとも22倍」と言われる。倍率の出どころと、論文の表の数字の出し方を読み直し、「1万時間」の再現、スポーツ選手の研究、日本の高齢者5万人の追跡も、原典にたどった。

海外に住んだ期間は創造性課題の成績と関連した。旅行の期間は、実験1で有意に負(p=.049、解釈は保留)、実験2で無関係だった。2009年の5つの実験の人数と操作を読み直し、続報、日本の留学の統計までたどった。