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70代から何かを新しく始めることについて

70代から何かを新しく始めることについて

「70代は人生の黄金期」といった煽り文句を使わずに、この年代で新しいことを始める難しさと、それでも始める理由について考える。

TOMOAKI··趣味

「70代は人生の黄金期だ」という言い方をよく見かける。仕事や子育てから解放されて、自分のためだけに使える時間が初めて手に入る、という理屈だ。分からなくはないが、この言い方には少し引っかかるところもある。自由な時間があることと、それを使って何かを新しく始めやすいことは、別の話だからだ。

新しいことを覚えにくくなる、というのは本当か

「年を取ると新しいことが覚えられない」という思い込みは古い、という説明もよく見る。脳には可塑性があり、新しい体験によって神経細胞のネットワークが変化する、という研究の紹介も見かける。ここで注意したいのは、可塑性があることと、若い頃と同じ速さで技術が身につくことは、同じ意味ではないという点だ。何かを新しく覚えるのに、以前より時間がかかるようになるのは、実感としても自然なことだと思う。それを「脳が若返る」という言葉で塗り替えてしまうと、覚えるのに時間がかかること自体を、あたかも失敗のように感じさせてしまう。

脳内物質の名前を挙げて説明されることも多いが、そうした説明は「なぜ気分が良くなるのか」の一つの見方であって、それ自体が新しい趣味を始める理由になるわけではない。気分が良くなる理由を後から科学の言葉で補強しなくても、単に「やっていて楽しい」で十分なはずだ。

身体と予算の制約は、現実の話として残る

膝が痛い、体力が続かない、年金暮らしで予算が限られている。こうした制約は、精神論では消えない。道具に頼る、無理に鍛えようとしない、100円ショップやホームセンターの安い材料で試してみる、図書館や公民館のような無料に近い場を使う。これらは地味だが、実際に効く工夫だと思う。

続かなくても、それはそれでいい

新しく始めたことが続かないとき、「自分には向いていなかった」という結論で終わらせて構わない。それは失敗ではなく、選択肢を一つ減らせたという程度のことだ。逆に、続けることに意味を持たせすぎると、始めること自体への腰が重くなる。

散歩のテーマを変えてみる、キッチンでハーブを育ててみる、タブレットで絵を描いてみる、俳句をノートに書きつけてみる。どれも大げさな準備はいらない。うまくならなくても構わない、というより、うまくなることを目的にしなくていい種類の時間だと思う。

誰かと関わることについて

趣味を通じて誰かと繋がることには、確かに支えになる面がある。地域の句会に出る、習字を教える、SNSで日々のことを発信する。ただ、これも義務にする必要はない。一人で完結させたい時期もあれば、誰かと分かち合いたい時期もある。夫婦であっても、同じ趣味を強要し合わず、それぞれ別のことに没頭する時間を認め合うほうが、無理がないように思う。

70代を「黄金期」と呼ぶかどうかは、正直どちらでもいい。何かを新しく始めるのに、遅すぎるということはない、というだけで十分だと思う。