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25〜44歳の平日19時以降、自由時間116分に趣味は19分
平日19時以降に残る自由時間は、25〜44歳の有業者の全員平均で116分。趣味・娯楽に分類されるのは19分だった。意志力の枯渇説が崩れたあと、夜の使い方を統計と回復の研究から並べ直す。
「平日に趣味を30分」は、誰の夜でもない
平日の夜に趣味を持つ、という話は、たいてい「時間をどう作るか」から始まる。その前に、時間が実際にどう使われているかを見ておきたい。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査(2021年10月に実施)の生活時間編で、仕事をしている人の平日の1日を見ると、「趣味・娯楽」に使った時間の総平均は30分だった。
この30分は、しかし誰の夜も表していない。同じ統計表の行動者率は18.0%、つまり平日に趣味・娯楽をした人は5人に1人もいない。した人の平均は165分、2時間45分である。10人のうち2人が2時間45分ずつ過ごし、残る8人は何もしなかったとすれば、10人の平均は33分になる。だが33分だけ過ごした人は、10人のなかにひとりもいない。平均は計算上の数字で、誰かの実際の夜ではない。
もうひとつ、並べて置きたい数字がある。同じ調査で、過去1年間に趣味・娯楽をしたかを尋ねると、86.3%(10歳以上)が「した」と答えている。年に一度でも該当すれば「した」になる質問と、昨日の行動を記録する質問は、対象の年齢も聞き方も違うので、そのまま引き算はできない。それでも、「この1年に一度でも趣味をした」ことと「今日、手をつけた」ことのあいだには、思っているより大きな溝がある。平日の夜の話は、その溝のなかで起きている。
この記事は、平日にできる趣味の一覧を出さない。出すのは、夜がどれだけ残っているかという数字と、疲れの説明がいくつか崩れたあとに残ったもの、そして夜の使い方をめぐる複数の入り口である。順番は、数字から。
夜に残る時間を、15分刻みの表から数える
社会生活基本調査には、時刻ごとの行動者率が15分刻みで載っている。「その15分間に、その行動をしていた人の割合」である。割合に15分を掛けて19時から24時まで足し合わせれば、「19時以降、全員平均で何分あるか」が出る。公表された数字ではなく、表の値から計算した派生値だが、同じやり方で1日全体を足すと公表の総平均と丸めの範囲で一致することは確かめてある。
対象は、25〜44歳の有業者の平日にした。統計でいう「3次活動」は、睡眠や食事(1次)、仕事・通勤・家事(2次)を除いた、自由に使える時間にあたる。
- 1日全体の3次活動は217分(3時間37分)。
- 19時以降に残る3次活動は116分。1日の自由時間のおよそ半分が、19時を過ぎてから現れる。
- 21時以降は76分、22時以降は46分まで減る。
- このうち「趣味・娯楽」に分類されるのは、19時以降で19分、21時以降で13分、22時以降で9分。
19時以降の116分の中身は、休養・くつろぎが58分、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌が26分、趣味・娯楽が19分で、残りの13分ほどが移動や学習、交際、スポーツなどに散っている。最も多くの人が趣味・娯楽をしている22時台でさえ、25〜44歳の有業者では、その時間に趣味をしている人は1割に届かない(22時〜22時半の15分区画で8〜9%)。
「平日の夜は時間がない」という感覚は、だから半分だけ当たっている。全員で均すと自由時間そのものは約2時間ある(この数字も、誰かの夜そのものではない)。ないのは、趣味と呼ばれる使い方に回る時間のほうだ。もうひとつ付け加えると、2時間は19時から数えた場合の話で、21時以降に残る分は全員の平均で76分まで減る。夕食や入浴がずれ込むほど、夜は細くなる。時間の問題は「あるかないか」よりも、「いつ始まるか」に近い。
なお、この調査は緊急事態宣言が全面解除された直後の2021年10月に、指定された2日間を記録したものだ。働き方も外出の事情も、その後に変わっている部分がある。数字は、2021年10月の平日の姿として読んでほしい。
「趣味」は、統計の線の引き方でも数字が動く
先ほどの30分は、調査票Aの「趣味・娯楽」の値だった。同じ調査には、行動をもっと細かく分けた調査票B(詳細行動分類)がある。そこでは、有業者の平日の「教養・趣味・娯楽」の総平均は41分になる。調査票が別で標本も違うので、分類の違いだけとは言えないが、30分と41分には4割近い開きがある。内訳を見ると、コンピュータの使用が21分、ゲームが11分含まれている。
その一方で、調査票Bの小分類のひとつ「趣味」は、有業者の平日の総平均がわずか2分、行動者率は1.0%だった。「創作」も1分(1.3%)にとどまる。調査票Bが「教養・趣味・娯楽」と呼ぶ時間の大半は、創作や手芸のような狭い意味の趣味ではなく、コンピュータの使用とゲームで占められている(41分のうち32分)。25〜34歳で見ると、「教養・趣味・娯楽」は62分で、うちゲームが24分、コンピュータが26分である。
分類にはもうひとつ癖がある。調査票Aでは、行動が重なったとき、記録されるのは「主な行動」ひとつだけだ。テレビを見ながらくつろいでいれば「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」に入り、ネットでニュースを読むのも同じ区分になる。そして、調査票Aには「インターネットの利用」という行動の区分がない。スマートフォンやパソコンの使用は、主行動に重ねて別に尋ねる設計で、独立した「ネットの時間」として足し上げられない。同じ25〜44歳の有業者で、21時台にスマホかパソコンを使っていた人は約4割。ただしこの数字には、仕事のPC作業も混ざっている。
調査票Aの上では、夜の画面の時間は「休養」や「テレビ等」の下に沈みやすい。一方、有業者全体の平日1日で、調査票Bの同時行動まで数えると、コンピュータの使用だけで52分になる(主行動だけなら21分)。数字が見せているのは、夜の姿そのものではなく、どの物差しで測ったかを通した姿である。
NHK放送文化研究所の国民生活時間調査(2020年と2025年の各10月)には、この物差しの違いを補う数字がある。こちらは、趣味を「ネットを使うもの」と「ネットを使わないもの」に分け、動画視聴も別に数えている。
全国(10歳以上)の平日で、趣味・娯楽・教養(ネットを除く)の全員平均は、2020年の24分から2025年の25分へ、ほとんど動いていない。動いたのはネットのほうで、インターネット動画は24分から42分、趣味・娯楽としてのネット(動画を除く)は44分から53分へ増えた。一方、自由行動の総量は、どちらの年も全員平均で4時間46分と変わらない。時間が増えたのではなく、中身が入れ替わった、あるいは「ながら」で重なって行われるようになった、という見え方になる。NHKの調査は同時にした行動も数えるので、重なりが増えた可能性が残る。
事務職・技術職に絞ると、さらに端的である。2025年の平日で、趣味・娯楽・教養(ネットを除く)をした人は13.8%、全員平均は16分。趣味・娯楽としてネットを使った人は55.4%で58分、ネット動画を見た人は31.4%で37分だった。時刻別に見ると、21〜22時台に趣味としてネットを使っている人は15〜17%、ネットを使わない趣味をしている人は21時台で4%弱、22時台で3%弱にとどまる。2020年と比べて、動画を見る人は22.0%から31.4%へ、趣味でネットを使う人は44.8%から55.4%へ増えている。
テレワークをした人の平日に、長かったもの
社会生活基本調査の概要には、仕事のあった平日について、テレワークをした人としなかった人を比べた表があり、通勤の短い日に何が長いかを見ることができる。テレワークをした人は、通勤・通学の時間が63分短い。ほかに、睡眠が18分、趣味・娯楽が16分、仕事が13分長かった(テレワークをした人としなかった人の差であって、同じ人の時間がどこへ移ったかを追ったものではない)。通勤の差63分と並べると、趣味・娯楽の差はその約4分の1で、睡眠の差は少し大きい。25〜34歳に絞ると、趣味・娯楽はしなかった人の32分に対して60分で28分長く、睡眠は41分長い。
ここで言えることは限られる。テレワークをした人は、仕事のあった平日の有業者の6.7%と少なく、テレワークを選べる職種の人と選べない人の違いも比較に混ざっている。通勤が短い人が趣味を始める、という因果は、この表からは引き出せない。ただ、差の出方は年齢によっても違う、とは言える。
疲れの説明は、いちど崩れている
では、時間があっても趣味に手が伸びないのはなぜか。真っ先に思い浮かぶ説明は「疲れているから」だろう。一日じゅう意志力を使い果たして、夜にはもう残っていない。心理学では「自我消耗(ego depletion)」と呼ばれてきた考え方である。
元になった実験は1998年のバウマイスターらの研究で、導入心理学の学生67人が参加している。味覚の実験という名目で、ラディッシュを食べた群、チョコレート菓子を食べた群、何も食べない群に分け、そのあと解けない図形課題にどれだけ粘るかを測った。粘った時間は、ラディッシュ群が平均8.35分、チョコレート群が18.90分、何も食べない群が20.86分。意志力を使って我慢した人ほど、次の課題で早く諦めた。数字だけを見ると、驚くほどきれいな差である。
この理論を支える材料として長く引かれてきたのが、2010年にヘイガーらが発表したメタ分析で、83研究・198の検定をまとめたものである。カーターらの紹介によれば、総効果は d=0.62(中程度から大きい)だった。ところが2014年、カーターとマカロウが、ヘイガーらと同じ198の検定のデータを、小規模研究バイアスの観点から検討し直した。少人数の実験は、偶然大きな差が出たときだけ発表されやすい。当たりくじだけを貼り出す掲示板を見て、「このくじは当たりやすい」と結論するようなものである。PETとPEESEという二つの補正法では、結果は-0.10から0.25の間になった。分析対象になった研究の1条件あたりの平均人数は約27人で、d=0.25を仮定して検出力80%を得るには、1条件で252人が要る。10倍近くの開きがあった。
決定打となったのは、事前登録された大規模な追試である。事前登録とは、試合の前にルールを公表するようなもので、結果を見てから分析方法を選ぶ余地をなくす手続きだ。2016年にヘイガーらが23の研究室(参加者計2,141人)で行った追試では、効果量は d=0.04(95%信頼区間 -0.07〜0.15)で、実質的にゼロだった。これに対しては、「あの追試の課題の組み合わせは、自我消耗の研究者が普段使う方法ではなかった」という批判が出た。
そこで2021年、この分野の支持者側の研究者が設計に加わった追試が、36の研究室、3,531人の規模で行われた。筆頭著者のヴォースと、2番手のシュマイケルは、自我消耗研究の側に立つ研究者である(バウマイスター本人は著者に入っておらず、謝辞に名前が出るだけだ)。課題は専門家がクラウドソーシングで出し合い、各研究室が審査した。結果は、事前登録の基準で除外した後の確認的な検定で d=0.06(-0.02〜0.14)、有意ではなかった。ベイズ分析でも、データは「効果なし」のもとで約4倍起こりやすい結果だった。除外基準を外した全標本の探索的な分析では d=0.08 で有意だったが、ベイズ分析では、効果ありと効果なしのどちらの仮説のもとでも、データはほぼ同程度に起こりうるものだった(抄録による)。
自我消耗が完全に否定されたわけではない。ただ、「意志力は使うたびに減る燃料タンクだ」という説明は、いまの学術的な水準では、かなり分の悪い位置にある。夜に趣味へ向かえない理由を「その日の意志力を使い切ったから」と説明するのは、説明としてきれいだが、根拠が薄い。疲れは、別の置き場所で考える必要が出てくる。
疲れを抜く道具と、元気を足す道具は、別の棚にある
代わりの手がかりになるのが、組織心理学者ゾンネンタークらが整理した「回復体験」の枠組みである。2007年にゾンネンタークとフリッツは、仕事からの回復に関わる経験を、心理的デタッチメント(仕事から心理的に離れる)、リラクゼーション、熟達(仕事と別の領域で新しいことを学ぶ・できるようになる)、コントロール(余暇の過ごし方を自分で決められる)の四つに分けて測る質問紙を作った。この論文は質問紙の開発と妥当化の研究であって、「どれが一番効くか」を決着させるものではない。
決着に近い材料を出したのが、2018年のベネットらのメタ分析で、299の効果量、54の標本、計26,592人を扱っている。表の値は、測定誤差を補正した相関(ρ)である。
- 疲労との関連:心理的デタッチメント -.39、リラクゼーション -.35、コントロール -.30、熟達 -.18。
- 活力(vigor)との関連:コントロール .31、熟達 .29、リラクゼーション .24、心理的デタッチメント .14。
読み取れるのは、疲れを抜くことと、元気を足すことが、別の経路で起きているらしいということだ。仕事から離れられている人ほど疲労は低いが、活力との関連は小さい(.14)。熟達は疲労との結びつきが弱く(-.18)、熟達とコントロールは活力との結びつきが相対的に大きい(.29、.31)。疲れを取る道具と、元気を足す道具は、同じ棚には並んでいない。「趣味」と呼ばれる活動は、このうち熟達やコントロールの側に置きたくなる。もっとも、趣味という活動そのものを測った数字ではないし、熟達の活力への数字は5標本、コントロールは4標本が元で、大きな断定には向かない。
さらに水を差す結果がある。2021年のスティードらのメタ分析(198標本)は、回復を「活動(何をしたか)」「体験(どう感じたか)」「回復した状態」の三つの捉え方に分けて比べ、効果の大きさも一貫性も捉え方によって大きく異なること、そして三者が互いにそれほど強くは関連しないことを報告している(抄録による)。何をしたかと、どう感じたかは、思ったよりつながっていない。「趣味」という名前の活動をしたことが、そのまま「回復した」ことを意味しない理由は、ここにもある。
夜の幸福と結びつきが強かったのは、テレビや入浴だった
活動の種類と、その夜の幸福を、日記で追いかけた古典的な研究がある。2001年にゾンネンタークが行った、教師100人を対象にした5日間の日誌調査である。余暇の時間を、仕事関連、家事・育児、低努力(テレビ、入浴など)、社会的、身体的の5種類に分け、就寝前の幸福との関連を調べた。活動1時間あたりの係数(非標準化)は次のとおり。
- 低努力の活動:0.171
- 身体的な活動:0.154
- 社会的な活動:0.069
- 家事・育児:0.049(有意でない)
- 仕事関連の活動:-0.107
この研究では、絵を描く、楽器を弾くといった創作的な活動は記録されたが分析から外されていて、趣味そのものとの比較にはなっていない。そのうえで、最も強く関連したのは、テレビや入浴のような低努力の過ごし方で、仕事関連の活動を家で続けることははっきり負の方向だった。さらに、前日の活動が翌日の就寝前の幸福に影響するという関連は見つからなかった。見つからなかったことは、ないことの証明にはならない。少なくともこの研究は、夜の回復が貯金のように積み上がることを示していない。
ここで話をまとめてしまうと、「低努力が最強」になってしまう。それも違う。2014年のテン・ブルンメルハイスとトゥルガコスの日誌研究(74人・5日間)では、その活動に普段から内発的な動機を持つ人ほど、余暇活動と翌朝の回復の結びつきが強かった(抄録による)。やりたくてやるかどうかが、時間の使い方の効き目を左右している可能性がある。
2015年のカイケンドールらのメタ分析(37の効果量・計11,834人)は、余暇への関与と主観的幸福の相関を r=.26と報告した。時間の長さより、頻度と多様性の指標のほうが幸福と強く関連していた。そして因果の向きについては、余暇への満足から幸福へ(β=.15)と、幸福から余暇への満足へ(β=.16)が、ほぼ同じ大きさだった(抄録による)。幸福な人が余暇を楽しむ、という逆向きの道筋も同じだけ太い。
年齢でも様子は変わる。2018年のチョらによる米国の60〜95歳460人の調査では、生活満足度の有意な予測因子として挙がったのは、クラブ・団体またはボランティア(P=.008)、家事・住まいの手入れ(P=.017)、旅行(P=.017)で、より頻度の高かった受動的な余暇(読書、電話、テレビ・ラジオ)はその中に入っていなかった(抄録による)。夜の幸福と関連しなかった家事(Cho では住まいの手入れ)が、高齢者の生活満足度では予測因子の側に入っている。測っている対象も期間も違う(就寝前の気分と、生活全体への満足)ので矛盾ではないが、「家事は回復にならない」とも「家事は回復になる」とも言い切れないことは確かだ。子どもを対象にした2009年のホルダーらの調査(8〜12歳の375人)でも、能動的な余暇は幸福と正の、テレビやビデオゲームのような受動的な余暇は負の関連を示している。ただし、どちらの調査も一時点の相関で、原因と結果の向きは決められない。
ここまでの研究を観察の形でまとめると、こうなる。仕事を持ち込んだ夜は幸福が低く、自分で選んだ活動ほど回復と結びつき、時間の長さよりも回数や種類が幸福と並んで動いていた。どれも向きまでは分からない。そして、どう過ごすかの答えは、活動の名前ひとつでは決まらず、趣味の一覧からは出てこない。
画面を開く夜に、何が測られているか
夜の時間の多くが画面に消えていることは、先ほどの数字から見えていた。では、その画面は夜に何をしているのか。研究を並べると、「画面が悪い」とも「画面は無害」とも言いにくい。
ネガティブなニュースを見るドゥームスクローリングについては、2021年にブキャナンらが無作為化実験を行っている。ツイッターのフィード(299人)やユーチューブの反応動画(603人)で、新型コロナ関連の悪いニュースを2〜4分見ただけで、何も見ない群に比べて、直後のポジティブな感情が下がった。動画の実験では、楽観性も下がった。ところが、同じ媒体で親切な行為の内容を見た群には、この低下が起きなかった。否定的な感情は統制群と差がなく、下がったのはポジティブな感情と楽観性だった。問題になるのはスクロールの動作ではなく、画面に映っている中身のほうだ。
フェイスブックを眺めるだけの「受動的な利用」についての実験もある。2015年にフェルデュインらが、大学生84人を10分間の能動的利用と受動的利用に分けた実験では、画面の録画から指示に従わなかった人などを除いた67人が分析された。利用の直後には、どちらの群も気分は変わらなかった。受動的に使った群だけが、その日の夜に気分が低下していた。悪化は見た直後ではなく、時間を置いて現れた。同じ眺める行為でも、個人差は大きい。2020年にベイエンスらが14〜15歳の63人を1週間追った調査では、受動的に眺めたあとの気分が、44%の人は変わらず、46%の人は良くなり、悪くなったのは10%の人だった。
仕事に絡んだスマホの使い方については、2014年にデルクスとバッカーが69人を5営業日にわたって日誌で追っている。抄録の範囲では、スマホ利用は仕事と家庭の干渉と正に関連し、集中的に使う人ほど、仕事から離れる体験とリラクゼーションが干渉を減らすうえで重要になっていた。待ち時間のスマホ利用を調べた2017年のリーガーらの研究は、スマホの利用が回復体験の一部の次元には有益で、別の次元には有害だったと抄録に書いている。コントロールの感覚を介して、認知課題の成績と正の関連もあった。「スマホは悪い」でも「スマホは休息になる」でもなく、回復の何の次元を見るかで向きが変わる。
寝る前の画面は、さらに複雑である。2015年にチャンらが行った入院管理下の実験(若年成人12人・各条件を就寝前約4時間×5夜)では、発光する電子書籍を読んだ夜は、紙の本の夜に比べて入眠が約10分遅れた(25.65分と15.75分)。メラトニンの夜間分泌の抑制は55%、体内時計も1.5時間以上遅れている。だが、これは12人の若者が数時間、暗い部屋で読み続けた条件の結果で、夜に10分スマホを見る生活とは別物である。2021年にデュラッチョらが18〜24歳の167人を7夜追った無作為化実験(抄録による)では、就寝前1時間にスマホを使わない群も、使う群(夜間モードのオン・オフ)も、全体では睡眠の指標に有意な差がなかった。探索的な層別では、平均睡眠が6.8時間を超える人に限って、使わない群の睡眠効率が良かったが、これは事後の分析にすぎない。
夜更かしの正体も、画面の光よりは少し人間くさい。2017年にエクセルマンスとファン・デン・ブルクが18〜25歳338人を調べたところ、「ベッドに入る時刻」と「眠ろうとする時刻」のあいだに、平均39分のずれがあった(抄録による)。布団のなかで過ごす時間のほうに、夜の取り分が隠れている。
「何もしない15分」が耐えがたい理由
画面に手が伸びるのは、疲れや意志の弱さではなく、「何もしない」ことへの耐性の低さから説明できるかもしれない。2014年にウィルソンらが『サイエンス』に発表した研究は、11の実験で、参加者を6〜15分、飾りのない部屋の椅子にひとりで座らせた。携帯電話や筆記具は預けてあり、することは考えることだけである。多くの参加者は、この時間を楽しめなかったと答えた。自宅で行った別の実験では、本や音楽、ウェブが許された群の楽しさが(9段階で)6.87、考えるだけの群が3.20だった(各条件15人)。
実験10では、自分に軽い電気ショックを与えられるボタンが用意された。実験の前に、このショックをもう一度受けずに済むならお金を払う、と答えていた参加者のうち、男性18人のうち12人(67%)、女性24人のうち6人(25%)が、15分のあいだに少なくとも一度は自分でボタンを押した。何もしないよりは、不快でも何かをしているほうがましだった。日常のスマホの使用頻度は、ひとりで考える時間をどれだけ楽しめるかと関連しなかった、という報告も添えられている。スマホをよく使う人ほどひとりの時間に耐えられない、という単純な図ではないらしい。
では、何もしないことに価値はあるのか。2012年のベアードらの実験は、これに微妙な答えを出している。145人の学生に、物の意外な使い道を挙げる創造性課題を行わせ、12分の間をおいて同じ課題に戻らせた。間の過ごし方は、要求の高い課題、要求の低い単調な課題、静かに座る休憩、休憩なしの4通りである。成績が伸びたのは、単調な課題をした群だけで、しかも以前に取り組んだ問題に限られた。静かに座って休んだ群は、休憩なしの群と差がなかった。「何もしない時間が創造性を育てる」とは、この実験からは言えない。自己報告の心のさまよいは、単調な課題の群のほうが、要求の高い課題の群より多かった。
退屈と創造性の関係を調べた2014年のマンとカドマンの実験(80人と90人の2つの実験)では、電話帳の番号を書き写させて退屈を作ると、そのあとに挙げる使い道の数は増えた。ただし、質の評価に差が出たのは2つめの実験だけである。退屈すれば創造的になる、という話は、数が増えるという意味では当たっていて、質が上がるかどうかまでは決まらない。
夜の短い時間に、どう入るか。六つの入り口
ここまでの材料をもとに、夜の過ごし方を並べ直してみる。ランキングではなく、それぞれが何に向き、何に向かないかの整理である。活動と体験は一対一に対応しない。以下では活動の名前を挙げたうえで、どの数字が活動の研究で、どれが体験の研究かを分けて添える。
仕事から離れる動作を先に置く
入浴や散歩のような、判断をほとんど要求しない動作から夜を始める。それらが離れる体験を連れてくることがある、という見込みでの入り方である。体験を尋ねた研究のまとめでは、疲労との関連が最も強いのは心理的デタッチメント(ρ=-.39)で、活動を記録した日誌研究の「仕事関連の活動を家で続けると幸福が低かった」(活動1時間あたりの係数-0.107)とも向きが合う。引っかかるのは、活力のほうにはあまり結びつかないこと。それに、この時間は統計の上で「休養」に溶けてしまい、何に使ったのか自分でも見えにくい。
低努力のまま過ごす
テレビを流す、ぼんやりする、お茶を飲む。活動を記録した日誌研究で、就寝前の幸福と最も強く結びついていたのは低努力の過ごし方だった(0.171)。何かを足さなくてよいという点で、いちばん手がかからない。難しいのは二つある。ひとつは、低努力の過ごし方がリラクゼーションや仕事から離れる体験を連れてくるとしても、体験の側の数字では、リラクゼーションと活力の関連はやや小さく(.24)、心理的デタッチメントと活力の関連は熟達やコントロールの半分ほど(.14)にとどまること。もうひとつは、ぼんやりするだけの時間が思いのほか耐えがたいことで、その隙間を画面が埋めはじめると、五つめの入り口の話になる。
短い熟達を足す
楽器、料理、語学など、手応えの残る活動を、短い単位で入れる。夜に使える時間が短く、成果や進捗を測りはじめた瞬間に、仕事と同じ評価の構造を家に持ち込みやすいのが難点になる。見返りの側では、体験を尋ねた研究で活力との関連が大きいのは熟達(.29)とコントロール(.31)で、ゾンネンタークらの2008年の日誌研究(166人、抄録による)では、夜の熟達体験が翌朝の肯定的な活性化(気分の高まり)を予測した。
人と過ごす
会う、話す、一緒に食べる。活動を記録した日誌研究で、社会的な活動の係数は0.069で、同じ1時間あたりでは低努力や身体的な活動より小さかった。同じ日誌研究には、別の見え方をする数字もある。その日にした活動の種類(仕事・家事も含めた5区分のうち何種類か)が多いほど、就寝前の幸福が高かった。その日ほかに人と過ごしていなければ、人と会うことで種類がひとつ増える。高齢者では、ボランティアや団体活動が満足度を予測していた。得られるものより先に、段取りが障害になる入り口である。相手の都合に左右されやすく、残る時間が短い夜には移動も重い。
画面を使うなら、中身を先に決める
21時台のスマホ・PCの使用者が約4割という現実を前に、画面を悪者にするのは現実的ではない。2〜4分のニュースで気分が下がった実験は、同じ媒体でも親切な話題なら起きなかった。見る中身によって結果が変わりうるなら、見る前に中身を決めておく、という入り方がある。もっとも、決めた中身を守る仕組みは自分で用意することになる。気分の悪化が見た直後ではなく夜遅くに出る実験もあり、見ている最中の感覚では確かめにくい。
平日にやらず、週末に寄せる
2010年のビンネヴィースらの研究(133人・4週間、抄録による)では、週末の熟達体験などが週初めの回復した状態を予測し、その回復した状態が、その週の仕事の成績を予測していた。平日の夜に残る時間が短いなら、まとまった時間のある週末に熟達を置くのは、この結果と食い違わない。週末の回復が平日の夜の疲れそのものを軽くするのかは、この研究からは分からない。翌日の就寝前の幸福への持ち越しは見られなかったという日誌研究もあり、測っているものが違う。
六つのうち、どれが正しいとは言えない。夜の長さも、疲れの種類も、何を回復と呼ぶかも、人によって変わる。どれが合うかは、疲れを抜きたいのか、元気を足したいのかによっても変わるだろう。
分類表の外で、夜を数える
平日の夜は、統計の上では「休養」と「テレビ等」に飲み込まれ、25〜44歳の有業者ではどの時刻をとっても、趣味をしている人は1割に届かない。疲れの説明として長く信じられてきた意志力の枯渇は、大規模な追試でほぼ消えた。回復の研究が示したのは、回復が活動の名前だけでは決まらず、離れられているか、選べているか、手応えがあるか、という体験の側でも差が出る、ということだった。
だとすれば、趣味の一覧を探すより先に、自分の夜が実際に何時から何分あるのかを数える、という手もある。統計の表に頼らず、昨日の19時から24時までを、15分刻みで思い出してみる。数えた結果、「趣味の時間がない」のか、「趣味と呼ばないものに使っている」のか、「そもそも夜が21時から始まっている」のかが、分かれて見えるかもしれない。どう使うかは、その先の話である。
出典
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間編」(調査票A:生活時間編 第1-1〜1-3表、時間帯編 第1-4表・第8-1表、生活行動編(結果の概要 表4-1)、結果の概要 表3-2・3-3。調査票B:詳細行動分類による生活時間(主行動と、主行動・同時行動。第1-1〜1-4表))。統計表(Excel)で確認。19時以降の時間は、時間帯別の行動者率の15分区画を足して計算した派生値
NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」2020年・2025年(各10月実施)。公式サイトのデータ(CSV)で確認
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