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一人で温泉に行くということ
一人客への視線を気にする必要はほとんどない、というのが実際に泊まってみた実感だった。広縁付きの部屋、11時チェックアウト、荷物を減らすコツまで、宿選びの基準を具体的に書く。
一人で温泉宿に泊まることに踏み出せない理由は、たいてい「周囲の視線」と「手持ち無沙汰」の二つに集約される気がする。実際に行ってみると、宿のスタッフにとって一人客は特に珍しい存在ではないし、グループ客の会話に付き合う必要もない分、スケジュールを自分の都合だけで決められる。昼まで寝ていてもいいし、気に入った湯に何度入ってもいい。
宿を選ぶときに考えること
豪華さより、何を求めているかで宿を選ぶ方が結果的に満足しやすい。強酸性の湯や硫黄の香りが強い温泉は刺激が強く、気分を切り替えたいときに向いている。ぬる湯や美肌の湯とされる泉質は、肌への当たりが柔らかく、ゆっくり過ごしたいときに合う。歴史や現代アートが混じり合う温泉街は、単純に歩いていて飽きない。
部屋については、窓際に椅子とテーブルがある「広縁」があると、外を眺めながらぼんやりする時間が作りやすい。他人の視線や会話を気にしたくないなら、部屋食や個室の食事処がある宿を選ぶといい。11時チェックアウトの宿なら、朝の時間を慌ただしくせずに使える。
荷物は少ない方がいい
「万が一のために」と持ち込んだ余分な着替えやガジェットは、日常を旅先まで引きずってくる。足りなければ現地で何とかなることが多いし、宿の浴衣やアメニティに頼ることも一つの選択だ。ノートと筆記具、読みたかった本くらいがあれば十分で、荷物が軽いと不思議と気持ちも軽くなる。
湯船で考えること、考えないこと
湯に浸かっていると、仕事や人間関係のことが不意に浮かんでくることがある。無理に消そうとせず、雲のように眺めて、また流れていくのを待つくらいの距離感がちょうどいい。一人での夕食も、スマホを見ずに、盛り付けや温度、香りに意識を向けてみると、思いのほか時間が持つ。
旅は宿の玄関を出た瞬間に終わるわけではない。旅先で書いたメモを一週間ほど経ってから読み返すと、旅の熱が冷めた後の落ち着いた視点で、自分が何を考えていたかが見えてくることがある。
