ficus.life/趣味
目次▼
趣味の道具の収納スペース。キャンプする人の7割は年4日以下

趣味の道具の収納スペース。キャンプする人の7割は年4日以下

住まいの不満は、広さより収納のほうが11.7ポイント高い。一方、キャンプをする人の72%は年に1〜4日しかしていない。収納の話を、使う頻度と置き場所の側から、統計と研究で見直す。

TOMOAKI··趣味

収納の不満は、広さの不満より大きい

趣味を続けていると、道具は放っておいても増えていく。手芸の端切れ、カメラの周辺機器、キャンプ用品。気づけば部屋の一角が占領されて、くつろぐ場所が減っていく。趣味の道具の収納スペースが足りない、と感じている人は少なくない。この記事は、使う頻度や置き場所の側から収納を見直し、最後に収納のしかたを六つに分けて、向き不向きを並べる。

国土交通省の令和5年度住生活総合調査(2023年12月1日現在、72,421世帯を集計)は、住まいの個別の要素ごとに不満を尋ねている。「非常に不満」と「多少不満」を合わせた不満率は、収納の多さ・使い勝手が33.1%、広さや間取りが21.4%だった。収納の不満は、広さの不満より11.7ポイント高い。ただし、平成20年には44.3%(広さや間取りは30.9%)だったので、収納の不満は15年かけて下がり続けている。令和5年の項目別では、高齢者への配慮(43.4%)、断熱性(41.1%)、防犯性(34.8%)などが収納より上にあり、収納は7番目だった。

では、広さは足りているのか。総務省の令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日現在)によれば、1人当たりの居住室(専用住宅)は14.65畳で、1993年の10.35畳から4畳以上広くなった。一方、同じ専用住宅の1住宅当たりの居住室は1993年の30.96畳から2023年の32.49畳へ、5%しか増えていない(延べ面積は88.38㎡から90.86㎡)。1人当たりの畳数が増えたのは、住宅が広くなったというより、世帯の人数が減ったためだ、と読める。世帯人員別(主世帯全体)に見ると、1人世帯は1人当たり22.49畳、4人世帯は10.04畳、5人世帯は8.94畳(いずれも1世帯当たりの居住室の畳数を人数で割った派生値)になる。1人当たりで見れば広くなっているが、収納に不満を持つ世帯は3分の1ある。

そしてこの統計には、収納の面積を数えた表がない。住宅・土地統計調査の集計事項の一覧を「収納」「物置」「納戸」「倉庫」で検索したが、該当はなかった。収納の不満は大きいのに、収納がどれだけ足りないのかを測った公的な数字は、見当たらない。

ネットには「便利グッズ10選」や「収納を維持するルール」といった記事が並んでいる。有孔ボード、透明ケース、キャスター付きワゴン。眺めている分には面白いし、実際に便利な道具もあるのだろう。ただ、収納グッズを買い足すことそのものが、次の収納問題の種になる場合がある。道具を整理するための道具が増えるという、少し滑稽な循環だ。この循環には、名前がついている。

買い足しが買い足しを呼ぶ構造には、名前がある

人類学者グラント・マクラッケンが1988年の著書『Culture and Consumption』に収めた章(題は「ディドロ・ユニティとディドロ効果」)で、ある現象に「ディドロ効果」と名をつけた。下敷きは、哲学者ドニ・ディドロの随筆「わが古い部屋着との別れを惜しむ」(1769年)である。ディドロは、新しい上等な部屋着を手にしたあと、それに釣り合わせようとして、周りの調度が次々に入れ替わっていったと語る。壁の飾りも、椅子も、机も。「すべてが調子外れになった。もう調和も、統一も、美もない」。もっとも随筆は文芸作品で、記録ではない。

マクラッケンの整理では、人の持ち物はばらばらの集合ではなく、互いに釣り合いの取れた一組として維持されている。そこへ一点だけ水準の違うものが入ると、釣り合いが崩れ、崩れた釣り合いを戻そうとして、周辺のものが順に入れ替わっていく。収納グッズは、この構造にうまく当てはまる。透明ケースをひとつ導入すると、隣の不揃いな箱が急に気になりはじめる。棚を新調すると、上に載っているものの雑然さが目につく。片付けるために買ったはずのものが、片付けたい対象を増やしている。

ただ、ここは正直に書いておきたい。マクラッケンが提示したのは消費行動を読むための枠組みで、「収納グッズを買うと平均してこれだけ支出が増える」といった数字が背後にあるわけではない(章の本文は未読で、目録と二次的な記述による)。のちに尺度を作って検討した試みはある。2025年のシェン・ドアンは、トルコの成人416人にオンラインで尋ね、物質主義、ディドロ効果、衝動買いの関連を報告した。論文のなかで係数の記述が節ごとに食い違っていたので、数値は引かない。確立した効果量はない、というのが現状だ。

それでも名前があると便利なのは、自分がその循環の中にいるかどうかを、買う前に一度確かめられるからだ。いま欲しいものが、いま困っていることを解決するのか、それとも一つ前に買ったものと釣り合わせるためなのか。

道具の要る趣味でも、年に数日しかしない人が多いものがある

収納の問いを「空間の量」として立てる前に、その空間に入れる道具が、どれくらいの頻度で使われているのかを見ておきたい。令和3年社会生活基本調査(2021年10月)の生活行動編は、過去1年に趣味・スポーツをした人に、その年に何日したかを尋ねている。ここでは、道具や材料の置き場が要りそうな活動を私が選び、全年齢(10歳以上)の行動者のうち、年に1〜4日だった人の割合を、表の値から計算した(派生値)。分母は、頻度が不詳の人を含む行動者全体である。

  • キャンプ:72%(行動者率6.0%)
  • 登山・ハイキング:69%(同7.7%)
  • スキー・スノーボード:66%(同3.2%)
  • つり:55%(同7.8%)
  • 日曜大工:45%(同11.0%)
  • サイクリング:39%(同8.2%)
  • ゴルフ:30%(同6.9%)
  • 写真の撮影・プリント:24%(同21.9%)
  • 楽器の演奏:22%(同10.2%)
  • 園芸・庭いじり:18%(同26.0%)

キャンプをする人の7割以上が、年に1〜4日しかしていない。日曜大工は約1,240万人(行動者率11.0%の推計)がしているが、そのうち45%は年に1〜4日だった。一方、週1日以上(年40日以上)の割合は、楽器が35%、園芸が33%と高く、日曜大工は5%、つりも5%にとどまる。道具の要る趣味といっても、毎週手に取る道具と、年に数日だけ出す道具では、収納に求めるものが違うはずだ。

念のため、限界も書いておく。この表は趣味を道具の有無で分けたものではなく、「道具の要る趣味」の選び方は私の分類である。年に数日しか使わない道具に価値がない、という意味でもない。年に数回のキャンプのために持つテントと、毎日触る楽器は、そもそも違う種類の持ち物なのだろう、というだけだ。

そして、使い終わった道具の行き先も数字がある。環境省の令和6年度リユース市場規模調査は、2025年1月に中古品の購入経験者を対象としたWebモニター調査で、過去1年に不要になった品の行き先を尋ねた。「自宅・物置等で保管」の割合は、不要になった個数ベースで、スポーツ・レジャー用品が69.3%、楽器類が69.9%、カメラ・周辺機器が68.7%、自転車関連が72.9%だった。なお、この保管の割合は購入経験者への本調査の値で、無作為抽出ではない。携帯電話(82.1%)やパソコン(77.4%)など、趣味用品より保管の割合が高い品目もあり、趣味用品だけの傾向ではない。別の事前調査(Webモニター約5万人。中古品の購入経験は問わない)では、使わなくなった製品を過去1年に売ったり引き渡したりした経験がない人が70.0%(2012年は57.7%)で、不要品が出なかった人も含まれる。全国の家庭の姿だと言い切れる数字ではないが、使わなくなった趣味用品の多くは、家に残る傾向がうかがえる。

近づけるのと遠ざけるのは、同じ手間か

頻度によって置き場所を分ける、という考え方がある。よく使うものを手の届く所に置き、年に数日しか使わないものは奥や外へ。ただ、この原理を実際の部屋に適用しようとすると、片側だけが実行されやすい。手前に置くのは誰でもできる。面倒がないから続く。ところが、年に数日しか使わない物を遠ざける作業は、それが長く使われていないという事実を認める作業と、同じ形をしている。

実際の部屋では、近づける方だけが進み、遠ざける方が滞るのではないか、というのが私の推測である。環境省の調査で、使わなくなった趣味用品の多くが家に残っていたことは、この推測と矛盾しない。手前によく使うものが増え、奥に何があるかは分からなくなる。収納グッズが役に立つ場面の一部は、おそらくここにある。奥のものを手放す判断を先送りしたまま、手前の密度を上げようとすると、必要になるのは容器だ。

では、距離や手間は、行動を実際に変えるのか。実証があるのは、食べ物である。2011年にロージンらが、病院系の食堂のサラダバーで食材の位置を入れ替えた。手前の縁から、透明な板の下に腕を伸ばす約25cm奥の中央列に移すと、1人が取る量は、食材を平均して約9〜13%減った(二つの研究の値)。抄録が示す8〜16%という幅には、取り分け具をスプーンからトングに替えた条件も含まれる。測ったのは皿に取った量で、実際に食べた量ではない。2012年にマースらは、菓子の入った鉢を20cm、70cm、140cmの距離に置く実験(77人と54人)で、70cmと140cmでは20cmより食べる量が少なく、距離が変えたのは目立ちやすさの知覚ではなく努力の知覚だったと報告した。2019年のコクラン・レビュー(RCT24本、距離の介入18本。うち消費量の12研究15比較、計1,098人)は、距離を離すと消費が減るという結果(SMD -0.60)を出したが、エビデンスの確実性は低く、バイアスのリスクが高い研究ほど効果が大きかった。対象はすべて食べ物で、アルコールやタバコを調べた研究はなかった。

食べ物以外は、どうか。運動器具や楽器、本の置き場所が使用頻度を変えた定量的な実証も、「出すときより、戻すときの手間のほうが効く」という非対称を直接示した実験も、調べた範囲では見つからなかった。「見えているだけで影響する」という説にも、気をつけたほうがいい。頻度の話ではなく認知への影響を調べた研究だが、スマホが視界にあるだけで認知容量が下がる、という2017年の有名な研究は、事前登録された直接再現(2022年)で再現しなかった。

身体の側の手間なら、人間工学に数字がある。米国のNIOSH(国立労働安全衛生研究所)の改訂版持ち上げ式(1993年)では、手の床からの高さが約75cmのとき、許容される重さの補正が最大(1.0)になり、床の近くでは約0.78まで下がる。ここから外れるほど許容重量が下がる形の式で、肩の高さ(130〜150cm程度)は減点の側に入る。この式は持ち上げ作業のためのもので、収納の出し入れの楽さを測ったものではなく、著者自身が式は十分には検証されていないと抄録に書いている(式の係数は教材や技術資料による)。厚生労働省の腰痛予防対策のチェックリストも、作業対象にできるだけ身体を近づけることを挙げている。重い道具ほど、棚の高さと自分の体の距離の問題になる、とは言えそうだ。

行き方を具体的にすると接種は増えた。恐怖の水準は関係しなかった

収納の置き場所を考えるとき、手がかりになりそうな古典がある。態度は動いても、行動は動かない。これを示した古典的な実験が、1965年のレヴェンタールらの研究だ。イェール大学の4年生に、破傷風の危険を訴える小冊子を読ませ、予防接種を受けたかを追った。小冊子は、恐怖の強さ(高・低)と、行動の具体性(具体・非具体)で4種類。「無料で接種できる」という記述は、全ての版に入っていた。具体版にだけ入っていたのは、保健センターの場所の説明、接種できる時間の一覧、建物に丸をつけたキャンパス地図、そして「週の予定を見て、保健センターの前を通る時間を探し、立ち寄って受けるように」という依頼である。

結果を読むには、数字の分母を見ておく必要がある。分析の対象は、過去2年に接種を受けていなかった59人。4〜6週のあいだに接種したのは、9人だった。具体版の群は29人中8人(27.6%)、非具体版の群は30人中1人(3.3%)。恐怖の強さでは、高恐怖が30人中4人、低恐怖が29人中5人で、差はなかった。接種の基準率を見るための60人を同じ期間見たところ、接種した人は1人もいなかった。態度のほうは、恐怖が強い群で「注射は重要だ」という評価が高かった。

ここから「恐怖は態度を動かし、具体的な計画は行動を動かす」とまとめたくなる。だが、原論文はそれほど単純ではない。恐怖操作のない、具体的な推奨だけの対照群は、翌年に実施されたもので、30人中0人しか接種しなかった(著者自身、時期の違いが比較に混ざると断っている)。恐怖の水準は行動に関係しなかった。著者は、ある程度の喚起がなければ具体的な計画だけでは足りない、と読んだ。機序は決めていない。すぐ行動できる場面なら障壁の除去が考えられるが、数日後に行動する今回については、行動のリハーサル、行くと決めること、行き方についての単純な情報を候補に挙げている。対象は全員が保健センターの場所を知っている4年生で、著者は、計画は「すでに知っていることを目立たせるだけ」かもしれないとも書いた。

この古典は、紹介によって数字が揺れる。3%から28%とするものと、3.3%から33%とするものがあるが、原論文の値は3.3%と27.6%である。9人という少人数でもある。後年の大規模な研究と並べると、数字の大きさの見当がつく。2011年のミルクマンらは、勤務先の無料インフルエンザ接種で、全員に場所と時間を書いた通知を送り、さらに「接種する日と時刻を書き込ませる」群と比べた。対照群の接種率は33.1%で、日と時刻を書いた群は4.2ポイント高かった(日だけを書く群は1.5ポイントで有意ではない。抄録による)。操作は同じではない。ミルクマンらでは対照群も場所と時間を知らされていた。それでも、1965年の差は、少人数での大きめの値として扱うのが妥当だろう。

意図と行動のずれの全体像は、メタ分析にある。2006年のウェッブとシーランは、意図を変えた47の実験をまとめ、意図の変化(d=0.66、中〜大)が行動の変化(d=0.36、小〜中)を生むことを示した(抄録による)。同年のゴルウィツァーとシーランは、「いつ、どこで、どうするか」を決める実行意図が、目標達成にd=0.65で効くと報告している(94の検定)。収納に引き寄せて言えば、「趣味をやりたい」気持ちを強めることと、「やる回数」を増やすことは、別の操作で動くことがある。棚の位置が後者の側にあるのかは、確かめられていない。なお、レヴェンタールの計画は場所と時間の確認で、実行意図の形式(if–then)とは同じではない。収納を「計画」にたとえるのは、私の類推である。

増える速度は、趣味を選んだ時点でだいたい決まっている

手芸の端切れ、カメラの周辺機器、キャンプ用品。並べ直すと、どれも続けるほど物が増える種類の趣味だと気づく。そうでない趣味もある。走る、泳ぐ、歩く、歌う。道具が要らないか、要っても更新されるだけで積み上がらない。10年続けても、占有する空間があまり変わらないことが多い。

収納の問題は、片付けが下手だから起きているとは限らない。蓄積する種類の趣味を選んだ時点で、量の増加は織り込まれている。同じ人が同じ几帳面さで走る趣味を続けていたら、この問題は最初から立ち上がらなかったかもしれない。収納で解決しようとしている問題の一部は、趣味の選択によって決まっていて、収納側の努力では原理的に届かない。届かない部分に努力を注ぎ続けると、うまくいかない理由が自分の管理能力に見えてくる。

蓄積する趣味の中でも、物の性質は一様ではない。これは私の整理で、確立した区別ではない。端切れ、糸、絵の具、木材は、使えば減る。放っておけば増えるが、作れば確実に目減りする。一方、レンズ、三脚、ランタン、治具は、使っても減らない。収納の困りごととしては同じ「増えた」に見えるのに、解き方は違う。減るものは、使う頻度が上がれば自然に片付く。減らないものは、頻度をいくら上げても減らない。前者に対して収納を増やすのは時間稼ぎとして機能し、後者に対しては先送りになる。

ややこしいのは、ひとつの趣味の中に両方が混ざっていることだ。手芸なら、端切れと糸は減るが、ミシンは減らない。手芸の材料の蓄え(stash)を扱った質的研究(2008年、ストルプとウィンジ)もあり、蓄えを増やし続け、家族の目を避けて置き場所を工夫する様子が描かれている(抄録による)。そして棚を見ているときに目に入るのは、たいてい大きい方、つまり減らない方である。減るものは小さく、袋や箱にまとめられていて、量として意識されにくい。目立つ道具を手放すかどうかで悩んでいるあいだ、目立たない材料は静かに増え続けている。

手放しにくさは、持ち物の性質から来るのか

手放す判断が滞る理由として、よく挙がるのが「授かり効果」、つまり持っているだけで価値を高く感じる傾向だ。古典は1990年のカーネマンらの実験で、大学の教室でマグカップを配り、持ち主が売るならいくらか、持たない人が買うならいくらか、を尋ねた。研究6(サイモン・フレーザー大学、77人)では、売り手の価格の中央値が7.12ドル、買い手が2.87ドルで、マグカップか現金かを選ぶだけの人の評価は3.12ドルだった。成立した取引は、期待された12.5件に対して3件だった。選ぶだけの人の評価が買い手に近いことから、買う側の抵抗より、手放す側の抵抗が大きいと読める。

ただし、持ち物はその場で配られたマグカップである。長年持っている趣味の道具に、そのまま当てはめる根拠はない。この効果自体にも批判がある。2005年のプロットとザイラーは、練習や匿名性などを加えた手順では、売値と買値の差が有意に出ないと報告した(抄録による)。近年のメタ分析(2023年、ビャウェクら)は、26標本・3,024人で、持つことが評価を高める効果をg≈0.57(受理稿では0.55)と推定した。出版バイアスの補正の方法によって0.40〜0.54で、一つの方法(PET)ではゼロと区別できなかった。対象は持つ人と持たない人の評価(好意や値付け)の差で、売り手と買い手を対比した研究は除かれている。2020年のムルクヴァらは、5つの標本・17,720人で、知識や経験が多い人ほど損失回避は小さいが、どの水準の人にも損失回避は見られたと整理している(抄録による)。

「使っていない物を持ち続ける」ことを、授かり効果で直接説明した実証は、調べた範囲では確認できなかった。そこで、私の整理として一つ書いておく。端切れのような材料を手放すのは、将来の作品を取り消すのと形が似ている。使っていないレンズは、使っていないという事実がはっきりしているが、材料はまだ使っていないだけで、将来の作品の一部として存在している。しかも小さいので、一つ一つが決断に値せず、判断が保留されたまま積み上がる。「収納スペースが足りない」と感じるとき、実際に足りていないのは、判断を下す機会の方かもしれない。蓋のある不透明な容器は、その機会をさらに減らす方向に働くかもしれない。見えなくなれば、考えなくて済む。

散らかりと気分:根拠になっている標本

散らかりが気分や集中を悪くする、という話は広く流通している。根拠を一つずつ見ると、実験で散らかりを操作した研究は少なく、多くは相関である。

2010年のサックスビーとレペッティは、共働きの夫婦30組(60人)に自宅を案内する動画を撮らせ、その語りに出る語を数えた。散らかりや未完成を示す語が多い妻は、その後の平日3日間で、唾液コルチゾールの日内変動の傾きが平坦で、日中の抑うつ気分が増していた(抄録による。夫の結果は抄録にない)。ここで測られたのは、物の量ではなく、本人の語りに出る語の頻度である。2016年のロスターらは、約1,400人の回答で、所有物の散らかりと主観的な幸福感の低下の関連を報告したが、標本は片付け業者に相談する人が中心で、著者自身が一般人口を代表しないと書いている(出典の節に記したとおり、二次情報による)。2018年のフェラーリとロスターは、先延ばしの傾向が強い人ほど散らかりの問題が大きいことを示した(抄録による)。散らかりが先延ばしを生むというより、先延ばしが散らかりを生む、という解釈のほうが著者に近い。

「乱雑だと創造的になる」という話も、よく添えられる。2013年のヴォースらは、乱雑な部屋の学生のほうが、ピンポン玉の新しい使い道の質が高かったと報告した(48人。案の数に差はなく、質の評点と、高く評価された案の数に差が出た)。ところが、100人を使った再現(2019年のマンツィら)では、創造性に差が出なかった(総合zスコアが-0.03対0.00、p=.75)。概念的な再現で、条件は元の実験と同一ではない。視覚の散らかりと注意の古典として引かれるマクメインズとカストナーの研究(2011年)は、10人の被験者に4つの図形を短時間見せたfMRIの実験で、家の散らかりを扱ったものではない。

つまり、散らかりが悪いと言い切れる材料は、手元にはそろっていない。逆に、散らかりが無害だと言える材料も、そろっていない。確かなのは、収納に不満を持つ世帯が3分の1いるという事実(住生活総合調査)のほうだ。

収納グッズが減らしている摩擦の種類

ここまでの話を、冒頭の三つの収納グッズに当てはめてみる。以下は私の整理で、実証ではない。良し悪しを決めたいのではなく、それぞれが何の手間を減らしているのかを分けておきたい。

透明ケースが減らしているのは、探す手間である。中身が見えるので、どこに何があるかを思い出さなくて済む。ただし蓋がある。取り出すには開ける動作が要り、戻すには閉める動作が要る。見つけるまでの摩擦は下がるが、出し入れの摩擦はむしろ上がっている。有孔ボードは逆の性質を持つ。中身は常に見えていて、掛けるだけなので取り外しに動作が要らない。ただし、掛けられるものに限られる。薄くて引っかかる形をしていなければ載らないので、対象を選ぶ。キャスター付きワゴンが減らすのは、物と自分の距離ではなく、物の集合ごと動かす手間だ。作業の場所が固定されていない人には効くが、場所が決まっているなら、動かせることの意味は小さい。

同じ「収納グッズ」でも、減らしている摩擦の種類が違う。自分が困っているのが、探すことなのか、出し入れなのか、移動なのかを先に決めていないと、買ったのに楽にならないという結果になりやすい。冒頭の滑稽な循環の一部は、この取り違えから来ているのかもしれない。

外部の倉庫は、何に対して払っているのか

量として立てた問いの、いちばん素直な解法が外部の倉庫である。空間が足りないなら、空間を買えばいい。実際それで片付く。

とはいえ、使われている割合は大きくない。住生活総合調査(令和5年度)で、外部の貸し収納スペース(トランクルーム)を利用している世帯は、家族類型別に0.6〜1.2%だった(利用している住生活関連サービスがないと答えた世帯が55〜61.5%)。市場の規模を示した公的な統計は、調べた範囲では確認できなかった。民間では、トランクルーム事業者が2024年の市場規模を約850億円と2025年に発表しているが、事業者の宣伝を含む資料である。24年前になるが、国土交通省の平成14年(2002年)の調査では、利用者の回答の理由でいちばん多かったのが「住居(事務所スペース)が手狭になった」(倉庫業の利用者で50%、非倉庫業の利用者で69.6%)だった。

月額で払っているものが何なのかは、一度言語化しておく価値がある。倉庫が提供しているのは空間だが、その空間が引き受けているのは、「手放すかどうかを決めない」状態の維持である。決めれば要らなくなり、決めなければ払い続ける。これは倉庫を否定する話ではない。決めないでおくことに価値がある場面は普通にある。転居の途中、制作の合間、いつか再開するかもしれない趣味。判断を保留する権利を月額で買っている、と理解できていれば、筋の通った買い物になる。問題になるのは、空間の不足を解決したつもりでいる場合だ。その理解でいると、契約は自動的に更新され続け、解決したと思っている問題は、もう検討されない。

収納のしかたを、六つに分ける

ここまでの材料を並べ直す。ランキングではなく、それぞれが何に向き、何に向かないかの整理である。根拠の強さも、選択肢ごとに違う。

使う頻度で置き場所を分ける

週に使う道具は手の届く所に、年に数日の道具は奥や上に置く。趣味によって使う頻度が大きく違う統計(楽器と園芸は週1回以上が3割台、キャンプや登山は年1〜4日が7割前後)とは矛盾しない。分けると出し入れが楽になるかは、確かめられていない。難点は、遠ざける判断が滞りやすいこと、そして食べ物以外で距離が行動を変えた実証が、調べた範囲では見つからないことだ。高い所や床に近い所に置く道具は、重さと高さの関係(NIOSHの式)も見ておきたい。

出し入れの摩擦を減らす設備を足す

有孔ボードや引き出しのレール、キャスターなどで、取り出しと戻しの動作を減らす。出し入れの手間に直接向けた手段ではある。気をつけたいのは、設備の追加が釣り合いを崩して、周りを入れ替える動きを呼ぶ可能性だ(ディドロ効果は、ここでも枠組みにとどまる)。何の摩擦を減らす設備なのかを先に決めておけば連鎖は短くなるかもしれないが、確かめられてはいない(私の推測)。

持つ量に上限を決める

棚一段、箱ひとつ、といった容器の大きさを上限にする。上限を決める判断は一度で済むが、超えた分をどうするかという決断は毎回残る。「1つ買ったら1つ手放す」のように数で釣り合わせる方式は、買う物と手放す物の大きさや用途が揃わないと、空間の釣り合いが取れない。数は数えられるが、空間の余裕は測りにくいので、数えられるほうを基準にしやすい。

外部の倉庫を借りる

空間の不足そのものが片付く。判断を保留する権利を買う、という使い方もできる。契約が更新され続けると、問題が解決したと思い込み、手放す判断が検討されなくなる点が、弱みになる。住生活総合調査では、利用している世帯は1%前後にとどまる。

手放す出口を先につくる

売る、譲る、譲る先を決めておく。環境省の調査(購入経験者への本調査)では、不要になった趣味用品の約7割(個数ベース)が家に残っていた。売ったり引き渡したりした経験がない人は、事前調査で7割だった(不要品が出なかった人を含む)。出口の手間が、保留を生んでいるのかもしれないが、これは私の推測で、出口を用意したら保管が減ったという実験は確認できなかった。材料を手放す決断は、将来の作品を取り消す決断に似た重さを持つ。出口があっても、その重さは残る。

道具の少ない趣味、借りる趣味を選ぶ

収納の問題を、最初から立ち上げない選び方である。走る、歩く、歌う。借りて済む趣味もある。好きな趣味でなければ意味がないし、道具に触れること自体が楽しみの人にとっては、答えになっていない。蓄積する趣味を選んだことの代償と、それでも選ぶ理由は、収納とは別の問いになる。

六つのうち、どれが正しいとは言えない。空間の余裕も、趣味の続け方も、手放すことへの感じ方も、人によって違う。断捨離が効いているのは何なのかを調べた記事では、物を減らすこと自体が効いているとは限らない、という方向の話を書いた。物を持たない趣味は本当に身軽なのかを問うた記事もある。

確かめられたことと、確かめられていないこと

最後に、この記事が何に基づいているかを整理しておく。

確かめられたのは、統計の部分である。収納の不満が広さの不満より大きいこと、道具の要る趣味のうち、年に数日しかしない人が多いものがあること、使わなくなった趣味用品の多くが家に残る傾向があること。食べ物では、手の届きにくさが摂取を減らすという実験もある。ただし、食べ物以外の行動で距離や手間が頻度を変えたという定量的な実証、出すときより戻すときの手間のほうが効くという非対称、収納グッズが実際に片付けを助けるのかという検証は、調べた範囲で見つからなかった。ディドロ効果は枠組みで、効果の大きさは測られていない。散らかりと気分の関連は、標本が偏った相関が中心だった。

それでも書いたのは、収納の話がほとんど道具の紹介で占められていて、使う頻度や置き場所の距離といった地味な変数が、めったに前に出てこない。棚の位置の話には、売るものがないからだろう。収納を買い足す前に問えるのは、いま何をどれくらいの頻度で触っているか、ということくらいだ。それで棚が片付くわけではない。

出典

国土交通省「令和5年度住生活総合調査(確報集計)」(2023年12月1日現在、集計72,421世帯)。住宅の個別要素の不満率(図10)、家族類型(5類型)別の貸し収納スペースの利用(図75)。報告書(PDF)で確認
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日現在)。1住宅当たり延べ面積・1住宅当たりの居住室の畳数と延べ面積、1人当たり居住室の畳数(結果の概要 表6、専用住宅)、世帯人員別の居住室の畳数(第21表)。集計事項の一覧に収納・物置・納戸・倉庫の項目がないことは、全シートの検索による
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」(2021年10月)生活行動編(趣味・娯楽の種類別行動者率と頻度別の表〈第30-2表〉、スポーツ〈第15-2表〉)。統計表(Excel)で確認。年に1〜4日の割合などは、頻度別の行動者率から計算した派生値。「道具の要る趣味」は筆者が選んだ区分
環境省「リユース市場規模調査」令和6年度(2025年1月実施、Webモニター調査)。事前調査(n=50,337、中古品の購入経験は問わない。図表106・107)と、購入経験者への本調査(n=3,365。図表136・137)がある。報告書(PDF)で確認。無作為抽出ではない
国土交通省「トランクルームサービスの推進と消費者保護に関する調査」(平成14年〈2002年〉、2002年12月16日発表)。キュラーズ「トランクルーム市場規模調査」(2025年6月発表)は事業者の発表で、一次の確認はしていない
McCracken, G. (1988). Culture and Consumption: New Approaches to the Symbolic Character of Consumer Goods and Activities. Indiana University Press.(ディドロ効果の章。目録と二次的な記述による。章の本文は未読)
Diderot, D. (1769). "Regrets sur ma vieille robe de chambre ou Avis à ceux qui ont plus de goût que de fortune."(フランス語の本文で確認)
Şen Doğan, R. (2025). "The Effect of Materialism on Impulsive Buying: The Mediating Role of the Diderot Effect." Behavioral Sciences, 15(10), 1403.
Rozin, P., Scott, S., Dingley, M., Urbanek, J. K., Jiang, H., & Kaltenbach, M. (2011). "Nudge to nobesity I: Minor changes in accessibility decrease food intake." Judgment and Decision Making, 6(4), 323–332.
Maas, J., de Ridder, D. T. D., de Vet, E., & de Wit, J. B. F. (2012). "Do distant foods decrease intake? The effect of food accessibility on consumption." Psychology & Health, 27(sup2), 59–73.(抄録で確認)
Hollands, G. J., Carter, P., Anwer, S., King, S. E., Jebb, S. A., et al. (2019). "Altering the availability or proximity of food, alcohol, and tobacco products to change their selection and consumption." Cochrane Database of Systematic Reviews, 2019(9), CD012573.(抄録で確認)
Ruiz Pardo, A. C., & Minda, J. P. (2022). "Reexamining the 'brain drain' effect: A replication of Ward et al. (2017)." Acta Psychologica, 230, 103717.(抄録で確認)
Ward, A. F., Duke, K., Gneezy, A., & Bos, M. W. (2017). "Brain drain: The mere presence of one's own smartphone reduces available cognitive capacity." Journal of the Association for Consumer Research, 2(2), 140–154.
Waters, T. R., Putz-Anderson, V., Garg, A., & Fine, L. J. (1993). "Revised NIOSH equation for the design and evaluation of manual lifting tasks." Ergonomics, 36(7), 749–776.(抄録で確認。垂直位置の係数は教材・技術資料による二次情報)
厚生労働省「腰痛予防対策チェックリスト」。
Leventhal, H., Singer, R., & Jones, S. (1965). "Effects of fear and specificity of recommendation upon attitudes and behavior." Journal of Personality and Social Psychology, 2(1), 20–29.
Milkman, K. L., Beshears, J., Choi, J. J., Laibson, D., & Madrian, B. C. (2011). "Using implementation intentions prompts to enhance influenza vaccination rates." Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(26), 10415–10420.(抄録で確認)
Webb, T. L., & Sheeran, P. (2006). "Does changing behavioral intentions engender behavior change? A meta-analysis of the experimental evidence." Psychological Bulletin, 132(2), 249–268.(抄録で確認)
Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). "Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes." Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.(抄録で確認)
Kahneman, D., Knetsch, J. L., & Thaler, R. H. (1990). "Experimental tests of the endowment effect and the Coase theorem." Journal of Political Economy, 98(6), 1325–1348.
Plott, C. R., & Zeiler, K. (2005). "The willingness to pay–willingness to accept gap, the 'endowment effect,' subject misconceptions, and experimental procedures for eliciting valuations." American Economic Review, 95(3), 530–545.(抄録で確認)
Białek, M., Gao, Y., Yao, D., & Feldman, G. (2023). "Owning leads to valuing: Meta-analysis of the mere ownership effect." European Journal of Social Psychology, 53(1), 90–107.(受理稿で確認。受理稿の効果量はg≈0.55、出版版の抄録はg≈0.57)
Mrkva, K., Johnson, E. J., Gächter, S., & Herrmann, A. (2020). "Moderating loss aversion: Loss aversion has moderators, but reports of its death are greatly exaggerated." Journal of Consumer Psychology, 30(3), 407–428.(抄録で確認)
Stalp, M. C., & Winge, T. M. (2008). "My collection is bigger than yours: Tales from the handcrafter's stash." Home Cultures, 5(2), 197–218.(抄録レベルの確認)
Saxbe, D. E., & Repetti, R. L. (2010). "No place like home: Home tours correlate with daily patterns of mood and cortisol." Personality and Social Psychology Bulletin, 36(1), 71–81.(抄録で確認)
Roster, C. A., Ferrari, J. R., & Jurkat, M. P. (2016). "The dark side of home: Assessing possession 'clutter' on subjective well-being." Journal of Environmental Psychology, 46, 32–41.(抄録を開けず、発表資料と後続論文による二次情報)
Ferrari, J. R., & Roster, C. A. (2018). "Delaying disposing: Examining the relationship between procrastination and clutter across generations." Current Psychology, 37(2), 426–431.(抄録で確認)
Vohs, K. D., Redden, J. P., & Rahinel, R. (2013). "Physical order produces healthy choices, generosity, and conventionality, whereas disorder produces creativity." Psychological Science, 24(9), 1860–1867.
Manzi, A., Durmysheva, Y., Pinegar, S. K., Rogers, A., & Ramos, J. (2019). "Workspace disorder does not influence creativity and executive functions." Frontiers in Psychology, 9, 2662.
McMains, S., & Kastner, S. (2011). "Interactions of top-down and bottom-up mechanisms in human visual cortex." Journal of Neuroscience, 31(2), 587–597.

XはてなブックマークLINEFacebook