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眠っていた帯を、もう一度使うということ
箪笥の奥にしまい込んだままの帯を、パネルやブックカバーに仕立て直す。「対話」でも「儀式」でもなく、ただの布の再利用として書いておく。
箪笥の引き出しを整理していて、何年も締めていない帯が何本か出てきた。誰かのお下がりだったり、自分で買って一度か二度しか使わなかったりしたもので、絹の光沢だけは当時のまま残っている。捨てるには惜しいが、締める予定もない。こういうものをどうするか、という話を書いておく。
この手の記事は、たいてい「帯との対話」とか「眠れる美を解き放つ」といった言い回しで盛られる。書いていて気持ちがいいのはわかるが、実際にやっていることは布を切って別の形にするだけで、対話でも儀式でもない。言葉を大きくするほど、作業そのものの地味さから目がそれる気がする。
厚みが一番の壁になる
帯は普通の布よりかなり厚く、芯地が入っているものも多い。この厚みのせいで、家庭用のハサミでは切りにくいし、ミシンも普通の生地用の針では通らないことがある。裁ちばさみを使うと作業がだいぶ楽になる、というのは実際に手を動かして分かったことで、道具を変えるだけで結果が変わる数少ない場面だった。
接着剤で布を固定する場合も、厚みがあるぶん乾くまでに時間がかかる。アイロンで押さえながら冷ますと剥がれにくくなる、という程度のことで、特別な技術ではない。
形にするなら、だいたい三つの方向がある
- 木製パネルに布を張って壁に掛ける。柄の全体を入れようとすると帯のサイズと合わず余白が中途半端になるので、気に入った部分だけを切り取って配置する方が収まりがいい。
- 本のカバーにする。名古屋帯のような薄手のものが扱いやすく、裏地に別の色が使われている帯だと、表からは見えない部分がそのまま柄になる。
- テーブルランナーや、二人分のランチョンマットにする。切りっぱなしの端はほつれ止め液を塗っておくと、それ以上の処理をしなくても崩れにくい。
どれも特殊な技術は要らない。裁縫が苦手でも、接着剤とアイロンだけで形になるものが多い。
シミや汚れをどう扱うか
古い帯には、避けようのないシミが入っていることがある。隠す方法を探すよりは、切り取る位置をずらしてシミを避けるほうが結局早い。どうしても目立つ場所に残ってしまった場合、上から刺繍や布用ペンで小さな模様を足して馴染ませることもあるが、これは金継ぎのような美談として語るほどのことではなく、単に汚れを目立たなくする手段の一つでしかない。
手入れについては、帯は水に弱いものが多いので、丸洗いは避けたほうがいい。普段は乾いた布で埃を払う程度で足りる。
結局のところ、これは古い布を別の使い道に切り替える作業で、それ以上でもそれ以下でもない。眠っていた美を呼び覚ますというより、しまい込んでいたものをようやく処分する代わりに、形を変えて使い切った、というくらいの話だと思う。
