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プランター選びを考える ~素材の違いと、購入前に見ておきたいポイント~
窓の外の木立で入院が0.74日短かったという研究は、鉢植えの根拠にならなかった。米国の苗木の黒い鉢は夏に48.9℃超、鉢底石は水の残りを減らす傾向がある。素材とブランドの評判を、公式の資料で確かめ直した。
「部屋に緑が欲しいけれど、どんな鉢を選べばいいのか分からない」。植物を迎えようとして、意外と後回しになりがちなのが、鉢(プランター)の存在だ。植物の選び方は山ほど説明があるのに、器については「好みで」の一言で終わることが多い。
この記事の以前の版は、窓から木立が見える病室の研究を引いて、鉢の素材や色は「人の心理にも効いている」と書き、通販でよく見るブランドの傾向を並べていた。今回は、その主張を、原典と公式の資料に当て直した。病室の研究は、書かれていたとおりの数字だった。けれども、「だから鉢植えにも効く」とは、研究自身が言っていない。ブランドの評判については、公式の資料に書かれていることだけが確かめられ、残りは確かめられなかった。
窓の外の木立は、鉢植えの根拠になるのか
よく引かれる研究は、ロジャー・ウルリッチが1984年にScience誌に発表した、短い論文だ。米国ペンシルベニア州郊外の病院で、胆嚢の手術を受けた患者を、窓から小さな落葉樹の木立が見える病室と、茶色のレンガ壁が見える病室で比べた。性別、年齢、喫煙、肥満、手術年などを揃えて、23組・46人を対にした。結果は、木の見える群の入院日数が7.96日、壁の見える群が8.70日だった。看護記録の否定的な所見は、患者1人あたり1.13件と3.96件。術後2〜5日目の鎮痛剤は、木の見える群で、中程度・強いものが少なく、弱いものが多かった。以前の版の数字は、これらと一致していた。
ただし、差は0.74日で、論文自身が弱みを書いている。ナースステーションは、どちらの階でも壁側の病室にやや近かった。担当医師を揃えられたのは、23組のうち7組だけだった。データは、1972年から1981年のあいだの病院記録をさかのぼって集めたものだ。対象は、木に葉がある5月1日から10月20日の手術に限られている。そして、著者は、比べた景色が特徴のないレンガ壁という単調なものだったと断ったうえで、結論をすべての景色や患者に広げられない、と書いている。長期入院で退屈が問題になる患者には、にぎやかな街路のほうが、自然の景色より効くかもしれない、とまで書いている。
この研究が調べたのは、窓から見える木立で、鉢植えではない。鉢植えを病室に置いた実験は、別にある。パークとマットソンの2009年の研究(Journal of Alternative and Complementary Medicine、抄録による)では、痔核切除の患者90人のうち、植物のある病室の患者は、収縮期血圧と、痛み・不安・疲労の評価が低く、部屋への満足度が高かった。入院日数と鎮痛剤も測っているが、抄録には、この2つに有意差があったとは書かれていない。同じ著者らの2008年の研究(HortTechnology)は、別の手術の患者を対象にした、別の論文で、取り違えやすい。こちらは本文を確認できず、報道の紹介でしか内容を読めなかった。植物の有無を伏せることはできない設計なので、期待が結果に混ざる余地は、あると考えられる(これは私の推論だ)。
観葉植物を植え替える作業の研究もある。リーらの2015年の研究(Journal of Physiological Anthropology、抄録による)は、若い男性24人を対象に、観葉植物の植え替え作業と、コンピュータ作業を比べた。植え替えのあとは、心地よく、落ち着き、自然だと感じ、拡張期血圧が有意に低かった。ただし、24人の若い男性だけで、比べたのは「植物を眺める」ではなく「植え替える作業」で、相手はコンピュータ作業だ。鉢を置くだけの効果とは別物である。
空気をきれいにする、という通説にも触れておく。カミングスとウェアリングの2020年のレビュー(Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology、抄録による)は、12本のチャンバー実験の196件の結果を、空気清浄機の指標であるCADRに換算した。鉢1つあたりの中央値は、毎時0.023立方メートル。一般的な建物の換気(約1回/時)と同じ除去速度を得るには、床面積1平方メートルあたり10〜1000鉢が必要になる、と見積もられた。元の実験の多くは、密閉した小さなチャンバーで行われたものだ。鉢植えは、空気清浄機の代わりにはならない。
「視界に入り続けるものが気分や体調にまで影響しうるという知見自体は、この分野で繰り返し確認されている」という言い方がある。確かめられたのは、木立の窓から見える景色が、一つの病院の一つの時期に、入院日数にわずかな差を作ったらしい、ということだ。鉢の素材や質感が気分を変える、ということは、私が探した範囲では、直接調べた研究に行き当たらなかった。植物を病室に置いた実験は、血圧や痛みの評価を見たが、鉢の素材は比べていない。
黒い鉢と白い鉢の、土の温度
鉢の色は、好みの問題だけではないらしい。ケンタッキー大学エクステンションのイングラムらが2017年に出した資料(HO-119)は、日なたの鉢で育てた植物の根の温度が、鉢のどこかで、毎日5〜10時間、40℃を超えると書く。夏の西側の壁ぎわは、通常48.9℃(120°F)を超え、54.4℃(130°F)を超えた記録もある。根の細胞膜が直接傷む臨界温度は、30分の暴露で45〜54.4℃だった。そして、日なたでは、白、緑、黄、銀、水色の鉢の中の土は、黒い鉢より5〜10℃(9〜18°F)低くなりうる、とある。
対象は、米国の苗木生産で使われる容器で、ベランダの鉢そのものではない。日陰では、色の差は小さくなるか、なくなる。素材の影響は、色や表面の滑らかさより一般に小さい、ともある。大きい容器ほど、中心の最高温度は低く、遅い時刻に出る。
同じ文書に、見逃したくない一文もある。明るい色の容器は、紫外線で黒い容器より早く劣化して脆くなる可能性がある、というものだ。黒い鉢は熱いが、紫外線による劣化は遅いのかもしれない。白い鉢は涼しいが、劣化が早まる可能性がある。色の選び方に、片方だけが得をする答えは、この資料からは出ない。以前の版は、黒や濃茶の鉢は真夏の直射日光下で土壌温度が45度を超えることがある、と書いていた。45度という数字は、この資料の記述と矛盾しないが、出どころは確認できなかった。
素焼きは通気性か、蒸発か
以前の版は、陶器やテラコッタは微細な穴が開いているぶん通気性・排水性に優れ、植物が健康に育ちやすい、と書いた。通気性が、素焼き鉢の売り文句の一つなのは確かだ。だが、素焼き鉢が涼しい理由を測った古い実験は、別の説明をしている。ブントとクルヴィークが1970年にPlant and Soilに発表した研究(抄録による)は、温室でトマトの苗を、素焼き鉢とプラスチック鉢で育てた。冬はプラスチック鉢のほうが有意によく育ち、夏はその逆だった。土の温度は素焼き鉢のほうが低く、差は冬の夜で約1℃、夏の強い日射の下で約4℃だった。素焼き鉢の壁を瀝青(ビチューメン)で塗って蒸発を止めると、夜の土温はプラスチック鉢と有意差がなくなった。つまり、少なくとも夜の涼しさは、壁からの水の蒸発のためだ。昼は、蒸発しないように塗った素焼き鉢のほうが、塗らない鉢より土温が低く、乾いた素焼きの壁が熱を伝えにくいため、と説明されている。冬は土温が適温を下回りがちなので、その涼しさが裏目に出る。「素焼きが良い」は、季節で逆になる。
素焼きとプラスチックの鉢で、土の水分や水やりの回数を直接比べた査読論文は、私は見つけられなかった。「素焼きは乾きやすい」は、園芸サイトの定番だが、確認できたのは経験談か、出典のない数字だけだった。間接的な根拠として、ナンブチリらの2015年の研究(HortTechnology、抄録による)がある。ケンタッキー、ミシガン、ミシシッピ、テキサスで、1ガロンの容器4種(ケラチン、木材パルプ、布、ココヤシ繊維)と、黒いプラスチックを比べた。プラスチックの土は平均約36℃で、木材パルプ、布、ココヤシより約6℃高かった。側壁からの水の損失は布が最大で、著者らは、この損失が土の温度を下げる大きな要因だと結論している。多孔質の容器は水を多く使い、水やりの回数が増えうる、とも書いている。素焼きそのものの実験ではない。ただ、壁から水が抜ける鉢は涼しいが、乾く、という仕組みは、そこから読める。
コロラド州立大学のPlantTalkは、適切な排水が最も重要な考慮事項だとして、テラコッタを多孔質の例に挙げ、釉薬をかけた鉢は壁から失う水が少ない、と書いている。
素焼きの鉢は、冬の外に出してよいのか
陶器や素焼きの鉢は、冬に凍って割れるリスクがある、と以前の版は書いた。これは確かだが、数字で書かれたものは多くない。チュラロンコン大学の修士論文(ホアンタノム、2004年、抄録による)は、テラコッタの焼成温度を約900〜1000℃、元の配合(粘土87パーセント、砂5パーセント、シャモット8パーセント)の吸水率を約14パーセントとしている。砂を細かくして、ソーダ石灰ガラスを4.8パーセント加え、950℃で焼くと、吸水率は9.6パーセントに下がり、毛細管の孔の体積は約76パーセント減った。この改良品は、凍結融解の試験(DIN 52252)を25サイクル通った。吸水率と孔の体積が大きいほど、耐凍性は低い、という位置づけだ。孔の水が凍ると体積が約9パーセント増えるのは、水の一般的な性質である。
素焼き鉢の吸水率を示した日本の規格や、業界資料は見つけられなかった。「深い寒さより、0℃をはさむ凍結と融解の繰り返しのほうが割れる」という園芸サイトの記述も、二次情報にとどまる。
木製の鉢は、いつまで持つのか
以前の版は、木製は腐食しやすく、数年ごとのメンテナンスが前提だと書いた。タカショーの公式ページ自身が、ウッドバレルプランターについて、底面を樹脂製ベースにすることで、従来の木製プランターの課題であった腐食を防ぐ、と書いているので、メーカーも腐りやすさを認めている。
防腐処理の中身は、時代で変わってきた。北海道立林産試験場の「林産試だより」(2009年4月号)によれば、日本で加圧注入処理木材が本格的に使われ始めたのは明治5年で、新橋―横浜間の鉄道の枕木だった。CCA(クロム・銅・ヒ素化合物系)は1963年に使われ始め、1970年代半ば以降、保存処理木材の生産量で最も大きな割合を占めたが、1993年の施行令でヒ素の排水基準が0.1 mg/Lに強化され(木材防腐処理工場への暫定基準は1997年1月末まで)、1997年を境に生産量が急に減った。2004年のJIS改正で木材保存剤の規格(JIS K1570)から、2006年のJAS改正で製材の規格から、CCA処理木材は削除された。ACQ(銅・第四級アンモニウム化合物系)は、日本では1989年に本格的な使用が始まり、その後、銅アゾール系(CUAZ)も使われている。
食用植物を育てる木枠については、実測がある。オレゴン州立大学エクステンションの資料(EM 9879、2026年4月改訂)は、2021年に、地面と接する用途の銅アゾール(CA-C)処理のダグラスファーと、無処理のダグラスファーで、菜園の枠を2つずつ作り、4シーズンのデータを取った。処理材の枠では、枠から1インチ(約2.5センチ)以内だけで、土の銅が有意に増えた(無処理の枠より約20〜68 ppm)。枠から3〜4インチ離れた位置と枠の中央では、増えなかった。野菜とハーブの銅濃度も、増えなかった。6年後、無処理の枠は、内側の下半分で、断面の半分以上が褐色腐朽していた。処理材の枠は、ほぼ損傷がなかった。対象は銅アゾールで、ACQやCCAではない。地域もオレゴン州の一つの地域に限られる。
日本の資料では、防腐処理した木枠から食用植物への溶出を測ったものは、探した範囲で見つからなかった。
鉢底石を入れるか、入れないか
鉢の中の話に戻る。鉢底石をめぐっては、園芸書は「入れる」、大学のエクステンションは「入れると逆効果」と書いてきた。ワシントン州立大学のチョーカー=スコットの文書が、後者の代表とされるが、私が見つけた版は開けなかった。ミズーリ大学のトリンクラインの2023年の記事は、鉢底の砂利で水はけが良くなるという考えを神話だとして、水を吸い上げない層があると、飽和した帯が上に押し上げられる(宙に浮いた水の層)と説明している。
2025年に、これに実測が加わった。ロウ(Avery Rowe)のPLOS ONEの論文は、容量1,290ミリリットルの鉢に、用土3種と、砂利、レカ、グリット、砂の層を厚さ30ミリと60ミリで入れ、水を満たして排水させて、残った水を量った。抄録の結論は、ローム以外の有機系用土では、ほぼすべての排水層が、対照より鉢全体の保水量を減らし、全体として、排水層は保水量を減らす傾向があり、増やすことはほとんどなかった、というものだ。60ミリの粗い砂は、試したどの用土でも保水量を減らした。この実験は植物を植えておらず、著者は1人で、小さな鉢での一つの実験だ。60ミリの層は、高さで見て、175ミリの鉢の約3分の1にあたる(私の計算)。そのぶん用土が減ることも、頭に置いておく必要がある。
逆向きの注意もある。リッチェルの底面給水プランター「うるオン」の公式ページは、目皿の脚部分には土を入れ、鉢底石やゴロ石を使うと水が供給されにくくなる、と書いている。底面から水を吸い上げる鉢では、鉢底石が逆に邪魔になる。鉢底石の良し悪しは、鉢の仕組みで逆になる。理由の説明はメーカーの記述になく、毛管の通り道を切るのだろう、というのは私の推論だ。
鉢の大きさは、土の量で見る
通販では、外見のサイズ(センチ)だけでなく、土が何リットル入るかを見るとよい、と以前の版は書いた。メーカーの公式ページを見ると、土の容量の表記は商品でばらつく。リッチェルのハナール丸プランターは、32型(直径32センチ、高さ25センチ)が10リットル、38型が18リットル。ワイドプランターは、55型が20リットル、65型が25リットル。「うるオン」65型は、土28リットルに、水17リットルの貯水部がつく。ニトリのプラ鉢35センチは、土容量の目安が19リットルで、ウォータースペースを含む。号数と土の量の対応表(5号で1リットル、など)は、消費者向けの解説記事に載っているだけで、規格としては確認できなかった。
土の量が、植物の育ちにどう効くかは、別の研究が答えている。ポールテルらの2012年のメタ分析(Functional Plant Biology、65本の研究)は、鉢の大きさが2倍になるごとに、乾物重が平均43パーセント増えた、と報告した。2リットルの鉢の植物は、0.2リットルの鉢の植物より、3倍以上大きくなりうる。これは研究用の鉢の話で、家庭のプランターの収量を直接扱ったものではない。
ブランドの評判を、公式の資料で確かめる
以前の版は、主要ブランドの「性格」を並べた。その多くは、評判や印象の言い方で、根拠を示していなかった。今回は、公式の資料に書いてあることだけを確かめた。
タカショーのベジトラグについて、公式ページは、「ガーデニング先進国イギリスで生まれた」V字形の高床式菜園と説明している。V字形の理由は、すき間で土に空気を届かせて根の通気をよくすること、従来のプランターより土が少なくて済むこと、椅子に座ったままでも使いやすい高さ(縁は地上から約80センチ)にできること、とされる。日本向けの設計については、「欧米に比べて狭い日本の住宅事情にいかに合わせられるかが課題だった」として、壁に沿わせるウォールハガーなどが生まれた、という自社の説明がある。「耐久性に定評がある」とする公式の資料は見当たらず、公式ページにも耐久年数や耐候性の記載はなかった。RHS(英国王立園芸協会)の推奨商品に「日系企業初」で認定されたという、メーカーの発表もある。
リッチェルの公式ページには、ハナールは材質がポリプロピレンで、生産地は日本とある。「うるオン」プランターは、リサイクル材を使っているため色合いが商品ごとに異なる、という注意書きがある。耐候性や耐久年数、紫外線劣化についての記載は、見た商品ページにはなかった。「日本のマンション事情に合わせた設計」も、リッチェルの公式資料には見当たらなかった。
IKEAのBITTERGURKAシリーズは、英国の公式ページに、本体が亜鉛めっき鋼に粉体塗装、脚が竹、「Only recommended for indoor use(屋内での使用のみ推奨)」とある。排水穴の有無は書かれていない。日本の公式サイトでは、同じ品番の商品ページが、商品一覧に転送された。日本で今も扱っているかは、確認できなかった。ニトリは、プラ鉢の注意書きに、落としたり衝撃を与えたりすると割れるおそれがあること、環境条件により色落ちする場合があることを載せている。ガーデンプランター(ファイバーセメント)には、長期間水に浸かる環境での使用を避けること、環境によりクラックや色あせが発生する場合があることが書かれている。ニトリのプランターの多くは、商品名に「島忠ホームズ商品」とある。公式にあるのは、耐久性の評価より、割れや色落ちへの注意書きのほうだった。
「ボタニー」シリーズについては、今回、公式の資料を確認していない。評判や印象で書くことは、やめておく。
劣化の速さは、誰も書いていない
プラスチック(ポリプロピレン)の鉢は、紫外線で色褪せ、ひび割れる。以前の版が書いたこの点は、定性的には妥当だが、鉢そのものの屋外寿命を示した、メーカーや業界団体の資料は見つからなかった。リッチェルとニトリの商品ページにも、耐候年数の記載はない。バイロイト大学のマイデスらの2022年の研究(Microplastics and Nanoplastics)は、擬似太陽光の下で、ポリプロピレンの安定剤が劣化を遅らせたのは約350時間だけで、そのあと劣化が急に進み、3,200時間は屋外の約2年に相当する、と見積もった。ただし、これはマイクロプラスチックの粒子の研究で、厚い成形品の鉢の寿命には直接換算できない(バイロイト大学の研究センターのニュースによる二次情報)。
ブリキや金属の鉢の錆を測った資料も、調べきれなかった。ブリキ製は透明の防水・防錆スプレーで錆を数年単位で遅らせられる、木製は二重鉢にすると腐食を抑えやすい、という以前の版の手入れの話は、実測の根拠を示せていない。
環境負荷は、鉢だけでは決まらない
リサイクルプラスチックの鉢も増えている。環境負荷はどうなのか。コーサーらの2014年の研究(HortScience、米国園芸学会のプレスリリースを転載したニュース記事による二次情報)は、10センチの鉢のペチュニア1株を単位に、出荷までのライフサイクル評価を行った。プラスチック鉢は、生産全体のCO₂換算排出の約16パーセントで、最大の発生源は、苗の段階の補光と灌水の電力で、47パーセントを超えた。著者らは、鉢の製造と廃棄の段階のデータを加えれば、バイオ容器はプラスチック鉢と同等かそれ以上に持続可能になりうる、と書いている。
この評価は、苗を作って出荷するまでの生産者側のもので、鉢を買う側の選び方の話とは主体が違う。リサイクルプラスチックの鉢や、素焼き鉢のライフサイクル評価は、見つからなかった。鉢1個あたりのCO₂排出量を示す信頼できる資料もなかった。生産者の側では、鉢の材質より、苗の段階の電力のほうが大きい、という方向のデータはあるが、一つの調査にとどまる。
手を動かすことのほうが、効いているのか
以前の版は、プランターが心を落ち着かせるとしたら、眺めているだけの効果というより、手を動かす効果に近いのかもしれない、と書いて、2011年のオランダの研究を挙げていた。ファン・デン・ベルフとカスタースのこの研究(Journal of Health Psychology)は、アムステルダムの市民農園の区画保有者30人に、ストレス課題を与えたあと、30分の屋外の庭仕事(14人)か、屋内の読書(16人)かに、無作為に割り付けた。唾液のコルチゾールは、庭仕事の群で6.69から5.24に、読書の群で7.16から6.37に下がり、群と時間の交互作用は有意だった(p<.05)。ただし、終了時点の二群の値の差は「傾向」どまりだった(p=.08)。気分(ポジティブ感情)は、庭仕事の群で9.2パーセント上がり、読書の群で4.3パーセント下がった(読書群の低下は有意でなく、p=.53)。終了時点の気分は、庭仕事の群のほうが有意に高かった(p<.05)。
以前の版は、読書後の気分は「むしろ悪化」と書いたが、読書群の気分の低下は有意ではなかった。コルチゾールの下がり方が庭仕事の群で大きかった点は、旧版のとおりだ。そして、著者自身が書いている限界がある。読書は受け身で自然とも無関係なので、自然の効果と体を動かす効果を分けられない。読書の群は、自分の区画の小屋の中で読まされたので、庭仕事ができないことが、かえって不快だった可能性がある。市民農園の利用者に限った結果でもある。
この実験が調べたのは、30分の庭仕事で、鉢を選ぶ時間ではない。鉢の素材が庭仕事の気分への効果を変えるかは、調べられていない。
通販の表記項目は、公式ページに書かれているか
以前の版は、通販の失敗を減らす項目として、土の容量、排水穴の有無、受け皿が別売りかどうか、内寸を挙げた。このうち、土の容量は、前に挙げたとおり、メーカーの公式ページが表記している。ただし書き方はメーカーごとに違い、ニトリのプラ鉢のように、ウォータースペースを含む目安として書くものもある。排水穴、受け皿、内寸の表記は、今回確かめていない。「星2〜3の1年後のレビューが参考になる」という助言は、経験則であって、調べられたものではない。
一方、土そのものの表示は、鉢の外の話になる。農林水産省の土壌改良資材品質表示基準(昭和59年告示)は、政令で指定された12種類(泥炭、バークたい肥、パーライト、バーミキュライトなど)に、名称、種類、原料、用途、施用方法などの表示を求めている。市販の「培養土」そのものに、統一の表示義務があるかどうかは、確認できなかった。肥料を混ぜた培養土に、肥料の品質の確保等に関する法律がどう適用されるかも未確認だ。
確かめられなかった「正解」
以前の版は、結びに、「素材にもブランドにも、それぞれの得意分野があり、どれが正解ということはない」と書いた。確かめ直して、この言い方は、半分は正しく、半分は逃げだった。素材には、実際にトレードオフがある。黒い鉢は熱く、白い鉢は紫外線で早く劣化する可能性がある。素焼きは夏に涼しく、冬に不利で、凍結にも弱い。オレゴンの実測では、無処理のダグラスファーの枠は、6年後、内側の下半分で断面の半分以上が腐朽していた。鉢底石は、ローム系の用土では影響のない場合も多かったが、有機系の用土では保水量を減らす傾向があり、減ることが良いかは、植物を植えた実験が必要だ。一方、ブランドの「向き不向き」は、耐久性について、タカショー、リッチェル、ニトリのどの公式資料にも裏づけが見つからず、日本向けの設計も、タカショーの自社説明があるだけで、リッチェルの公式資料には見当たらなかった。
病室の窓の研究に戻ると、木立が見える部屋で入院日数が0.74日短かった、という数字の背後には、ナースステーションの位置や、医師の揃え方という、小さな条件のずれがあった。鉢の選び方にも、同じような小さなずれが、いくつも隠れているのだろう。どの鉢が正しいのかは、私にはわからなかった。わかったのは、確かめられることと、確かめられないことの境目の位置だった。
出典
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