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プランター選びを考える ~素材の違いと、購入前に見ておきたいポイント~

プランター選びを考える ~素材の違いと、購入前に見ておきたいポイント~

窓から木立が見える病室では入院日数が平均0.74日短かった、という1980年代の病院研究がある。プランターの素材や色も、根の環境だけでなく人の心理に効いている――科学的な視点から選び方を整理し、ブランドごとの傾向も見る。

TOMOAKI·

「最近、仕事の合間にふとベランダを眺める時間が増えた」「部屋に緑が欲しいけれど、どんな鉢を選べばいいか分からない」

植物は単なる装飾ではなく、生活の中で呼吸を整えてくれる存在になり得る。ただ、いざ植物を迎えようとしたとき、意外と後回しにされがちなのが「プランター(鉢)」の存在だ。

とりあえず安いプラスチック製で済ませている人も多いだろう。実は、プランター選びは植物の寿命を左右する、地味に大きな要素でもある。この記事では、科学的な視点に基づいた素材の選び方や、通販でよく目にする主要ブランドの傾向の違いについて整理してみる。

器は、ただの容器ではない

視覚環境が気分や回復に影響するという指摘は、環境心理学の分野で古くからある。よく引かれるのは1980年代のある病院の研究だ。同じ間取りの病室のうち、窓から見えるのが木立か煉瓦壁かだけが違う46人分のカルテを比較したところ、木の見える部屋の患者は入院日数が短く(平均7.96日対8.70日)、看護記録に残るネガティブな所見も少なく(1人あたり1.13件対3.96件)、強い鎮痛剤の使用回数も少なかったという。窓の外の眺めと、部屋の隅にあるプランターの質感はもちろん同じ話ではない。ただ、視界に入り続けるものが気分や体調にまで影響しうるという知見自体は、この分野で繰り返し確認されている。簡素なプラスチック鉢と、質感のある陶器やデザインの良い製品――その差は、案外空間の印象を変える。プランターは植物の容器である以前に、部屋の隅で静かに効いてくる「インテリアの一部」でもある。

もっとも、見た目だけの話でもない。植物が枯れてしまう原因は、水やりよりも「器の環境」にあることが少なくない。根の呼吸を妨げない通気性、余分な水分を排出する排水性――これらは、人間にとっての住環境と同じように働く。植物の成長速度は光、水、そして根圏環境の組み合わせで決まる。特に都会のマンションなど風通しに制限がある環境では、プランターの通気性と排水性が成長のボトルネックになりやすい。プランターは、植物にとっての「家」でもあるということだ。

植物の成長速度は、光、水、そして根圏環境(プランターの機能)の組み合わせで決まる。

素材が引き受けているもの

プランター選びの第一歩は、素材が持つ質感と機能性を理解することだろう。軽く、移動が楽で、安価でデザインも豊富なプラスチック(ポリプロピレン)製は扱いやすい反面、紫外線による劣化――色褪せやひび割れ――は避けられず、通気性の悪さから夏場に土の温度が上がりやすい。最近はリサイクルプラスチックを使った製品も増えてきている。

陶器やテラコッタ(素焼き)製は、微細な穴が開いているぶん通気性・排水性に優れ、植物が健康に育ちやすく、経年変化そのものを楽しめる。ただし重く、落とせば割れ、冬場は水分を含んだ鉢が凍って割れる「凍て割れ」のリスクも抱えている。木製は自然な断熱効果があり、夏は涼しく冬は暖かく根を守ってくれるが、腐食しやすいため数年ごとのメンテナンスや買い替えが前提になる。ブリキや金属製はレトロな雰囲気に合いやすく軽量だが、熱を吸収しやすいため直射日光下では根が高温にさらされるリスクがあり、錆の進行も避けられない。どの素材も、メリットの裏側にきっちり対応するデメリットがある――都合のいい万能素材は存在しない、というだけの話だ。

ブランドの性格を見る

通販でプランターを探すと、よく目にする顔ぶれがある。庭全体の景観づくりを手掛けてきたタカショーは、プロ向けの造園資材も扱うだけあって耐久性に定評があり、立ったまま作業ができる高床式菜園「ベジトラグ」シリーズは、限られたベランダスペースでも扱いやすい。プラスチック製品を得意とするリッチェルは、日本のマンション事情に合わせた設計が細かく、水はけや掃除のしやすさへの配慮が行き届いている。「ボタニー」シリーズは、プラスチックでありながら石材や陶器に近い質感を再現している点が特徴だ。IKEAは、プランターを「空間をレイヤー化する道具」として捉えている印象が強く、低価格ながら縦の空間を活かすハンギングの提案が多い。「BITTERGURKA」シリーズはその代表格になる。ニトリは、その時々の流行を比較的手軽な価格で試せる選択肢で、トレンドの反映が早い。多肉植物を並べるだけで見栄えのするブリキ製プランターは、価格を考えると気軽に試しやすい。どれが優れているというより、求める素材感や置き場所によって向き不向きが分かれる、という程度に捉えておくのがよさそうだ。

通販で後悔しないために

通販での購入チェックポイント

「届いてみたらイメージと違った」。通販特有の失敗を減らすには、いくつか確認しておきたい点がある。まず、外見のサイズ(cm)だけでなく、土が何リットル入るかという「容量」を把握しておくこと。根の張るスペースは植物の育ちに直結する。室内で育てる場合は、排水穴の有無と、受け皿(ソーサー)が別売りかどうかも見ておきたい。デザインの統一感を気にするなら、なおさらセットで確認しておく価値がある。厚みのある陶器鉢や木製鉢は、外寸よりもかなり中が狭いことがあるので、今ある鉢を「鉢カバー」として使うつもりなら「内寸」の表記を探すべきだ。レビューを読むときは、星5の声より、星2〜3に書かれた「1年後」の実情のほうが参考になることが多い。「すぐ色あせた」「錆びた」といった不満は、購入直後のレビューには載りにくいからだ。陶器製や大型プラスチックは輸送中の事故が起こりやすいので、配送時の破損保証があるショップを選んでおくと安心できる。

色という、もう一つの機能

色の選択は、単なる好みの問題だけでもないらしい。黒や濃茶のようなダークカラーは太陽光を吸収しやすく、春先の地温上昇を助けてくれる一方、真夏の直射日光下では土壌温度が45度を超えることがあり、根に負担をかけるため日除けが必要になる。白やベージュのライトカラーは光を反射して夏の温度上昇を抑えやすく、空間を広く見せてくれる代わりに、藻の付着や泥汚れが目立ちやすく、こまめな清掃を要求してくる。見た目の印象を決めるはずの色が、そのまま鉢の中の温度管理の話に直結しているのは、少し面白い。

長持ちさせる、地味な手当て

ブリキ製は購入直後に透明の防水・防錆スプレーを吹いておくと、錆の進行を数年単位で遅らせられる。木製は直接土を入れず、安価なプラスチックの内鉢を仕込む「二重鉢」にする方法がある。木が常に湿っている状態を避けられ、腐食を抑えやすい。プラスチック製は、表面に付いた水垢や土汚れをメラミンスポンジで軽くこすれば大抵は落ちる。どれも数分でできる手当てだが、やるかやらないかで鉢の寿命は数年単位で変わってくる。

癒しの正体は、たぶん「手を動かすこと」

プランターが心を落ち着かせるとしたら、それは眺めているだけの効果というより、実際に手を動かすことの効果に近いのかもしれない。2011年のオランダの研究では、被験者にストレスのかかる課題をこなしてもらったあと、屋外で30分間の土いじり(ガーデニング)をしたグループと、室内で読書をしたグループの唾液中コルチゾール濃度を比較している。結果は、どちらのグループもコルチゾールは下がったものの、下がり方はガーデニングをしたグループのほうが有意に大きく、落ち込んでいた気分もガーデニング後にはほぼ元通りに回復した一方、読書後の気分はむしろ悪化していたという。プランターを「眺める」時間そのものより、土に触れ水をやる数分間のほうが、ストレスホルモンには効いているのかもしれない。都会のコンクリートに囲まれた生活の中で、プランターは自然への小さな窓口になる。朝、鉢の中の小さな変化――新しい芽、乾いた土――を確認する数分間が、思いのほか気分を整えてくれることがある。

それでも残る迷い

初心者はどの素材から始めるべきか、とよく聞かれる。一般には、リッチェルのような高機能プラスチックは管理が比較的楽で、育てる感覚を掴みやすいと言われる。慣れてきてから陶器を試すという順序も、一つの考え方としてはある。安いプランターと高いプランターの違いは、主に耐久性と質感だ。安いものは数年で劣化しやすい一方、質の高い素材は長く使えることが多く、単価だけでは比較しにくい面がある。ハンギングプランターが落ちてこないか、という不安もよく聞く。製品ごとにフックの耐荷重は設定されているが、実際に重要なのは吊るす場所の強度のほうで、カーテンレールのような下地のない場所は避け、下地のある天井や壁に取り付けるのが基本になる。

正解のない鉢選び

プランター選びは、これから共に過ごす植物をどこに迎え入れるか、という選択でもある。素材にもブランドにも、それぞれの得意分野があり、どれが正解ということはない。置く場所や手入れにかけられる手間を考えながら、自分に合う一鉢を探してみるとよさそうだ。

出典

Ulrich, R. S. (1984). "View Through a Window May Influence Recovery from Surgery." Science, 224(4647), 420–421.
Van den Berg, A. E., & Custers, M. H. G. (2011). "Gardening Promotes Neuroendocrine and Affective Restoration from Stress." Journal of Health Psychology, 16(1), 3–11.(学術誌本体は有料公開のため、著者所属機関のリポジトリに掲載された公式アブストラクトで内容を確認)