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職業教育の就業の優位は、11か国の平均で49歳前後に逆転した——ただし追試は割れた。「順応」を分けるものは何か

職業教育の就業の優位は、11か国の平均で49歳前後に逆転した——ただし追試は割れた。「順応」を分けるものは何か

順応力は質問票で測れるが、結びついていたのは満足や自己評価だった。職業教育の就業の優位は11か国の平均で49歳前後に逆転したが、追試は割れた。日本のデータは薄い。

TOMOAKI··仕事

基準が変わっても順応できる人は、何が違うのか。年収、安定、専門、文理といった進路の基準は、「世の中がこのまま続く」という予測を、短い言葉に圧縮したものだ。予測は外れうる。外れたあとに、うまく切り替えられる人と、切り替えられない人がいるなら、その違いが分かれば、基準そのものを疑うより、役に立ちそうに見える。

この記事は、「進路の基準を疑う」シリーズの四本目で、その違いを、研究で探す。先に、三つの数字を挙げておく。職業教育を受けた人の就業の優位は、11か国の調査で、平均49歳前後に逆転した。AIが苦手な課題で、AIを使ったコンサルタントの正解の割合は、使わなかった人より約19ポイント低かった。AIの支援で、新人や低いスキルの担当者の生産性は約30%上がり、経験者はほとんど変わらなかった。結論を先に書くと、順応を分けるものは、まだ分かっていない。測れるのは、順応に近い「気持ちや姿勢」のほうで、賃金や転職の成功を、順応が引き上げたという確かな証拠は、確認できた範囲では、示されていなかった。代わりに、順応の周りで、何が測られていて、何が割れているのかを、見ていく。扱う研究の多くは、欧米のもので、日本のデータは薄い。確認の水準は、出典の欄に書いた。

その前に、「順応」という言葉が、少なくとも三つの意味で使われているように見えることを、私の整理として、書いておく。文献に、この三分類があるわけではない。一つは、職業そのものを変える、という意味。会社員から自営に、技術職から管理職に、というように、仕事の種類を移ること。二つめは、同じ職業のまま、中身を更新する、という意味。新しい道具や、新しい手順を、取り入れること。三つめは、気持ちの切り替え。変化を前に、動揺せず、前向きに受け止める、という内側の構え。

この三つは、重なるが、同じではない。研究も、三つのどれを測っているかで、見えるものが違う。質問票は、三つめを測りやすい。賃金や雇用の記録は、一つめを測りやすい。二つめは、測りにくい。以下では、研究が、どの意味の順応を測っているのかを、見分けながら読んでいく。

「順応」は測れる。ただし、測っているのは気持ちのほうだ

職業の変化にうまく対応する力は、「キャリア・アダプタビリティ」と呼ばれ、質問票で測る方法が作られている。三つの意味でいえば、三つめの、気持ちや姿勢の順応に近い。キャリア・アダプタビリティの理論を提唱したSavickasは、これを、四つの次元に分けた。自分の将来を気にかける「関心」、自分の進路を自分で決める「統制」、新しい可能性に開かれた「好奇心」、うまくやれると信じる「自信」。質問票は、この四つの次元の項目を、点数にする。

この点数が、何を予測するのかを、76の研究をまとめて調べた研究がある。Rudolphらが2017年に報告したもので、順応の次元で説明される分散は、職務の遂行で21%、仕事へのエンゲージメントで26%だった。分散の21%というのは、人によって仕事の成績が違う、そのばらつきのうち、順応の点数で説明できる部分が、2割ほどある、という意味だ。これは、決して小さくはない。

ただし、著者ら自身が、限界を書いている。集められた研究の大半は、ある一時点で、順応の点数と成績を同時に尋ねた研究で、どちらが先で、どちらが原因なのかは、評価できない。しかも、多くは、同じ人が、自己報告で、両方に答えている。仕事がうまくいっている人は、自分の順応力も高いと答えやすい。この「同じ人が両方に答える」ことによる偏りが、関係を実際より強く見せている可能性がある。

Zacherが2014年に、オーストラリアの従業員1,723人を調べた研究も、同じ形をしている。順応の点数は、主観的なキャリアの満足と、自己評価のキャリアの成績を、性格の特性や自己評価の高さより上乗せして予測した。ただ、これも、満足や成績は、本人の評価で、賃金や転職といった、外から見える結果ではない。縦断的に、つまり同じ人を何年も追って測ったものでもない。

反対向きの手がかりも、ないわけではない。Koenらが2010年に、失業者248人を二つの時点で調べた研究は、意思決定の力や自信が、再就職の質を予測した、と報告している。2012年の研究は、訓練を受けた群(32人)が、受けなかった群(24人)より、半年後の就業の質を高く答えた、としている。ただし、どちらも、要旨までしか確認できておらず、本人の報告で、人数も少なく、賃金のような外から見える結果ではない。

ここから言えるのは、順応は測れる、そして、主観的な満足や自己評価と結びついている、というところまでだ。「順応力が高い人は、実際に、賃金が上がり、転職に成功した」という確かな証拠は、今回の調査では見つからなかった。この空白が、この記事の中心だ。

空白を埋めるには、どういう研究が要るのかを、考えておく。同じ人たちを、何年にもわたって追い、最初の時点で順応の点数を測り、その後の賃金や転職の結果を記録する。順応の点数が高かった人が、後に、実際に、賃金を上げたのか、転職に成功したのか。しかも、順応の点数が高くなる前に、すでに有利だった人を、統計的に取り除く必要がある。この設計は、手間がかかるうえ、変化が起きるまで、待たなければならない。そのため、一時点の質問票の研究が、積み重なってきた。研究の偏りは、測りやすさの偏りでもある。

人のいない古い教室。手前から奥へ長い木の机と腰掛けが並び、壁に絵が掛かっている。

職業に特化した教育は、若いうちは強く、年を取ると逆転した

順応力の代わりに、順応が試される場面を、直接見た研究がある。職業教育と、一般教育の、長期の比較だ。この研究が測ったのは、学歴別の就業の確率で、職業を移った人の動きではない。三つの意味でいえば、一つめ(職業を移る)の結果に、間接的に近い。

Hanushek、Schwerdt、Woessmann、Zhangが2017年に発表した研究は、国際成人リテラシー調査(IALS)の、11か国のデータを使っている。職業に直結する教育(職業教育)を受けた人と、一般的な教育(一般教育)を受けた人の、就業の確率を、年齢ごとに比べた。結果は、はっきりした形をしていた。若いうち、16歳に換算すると、一般教育を受けた人のほうが、職業教育を受けた人より、就業の確率が6.9ポイント低い。ところが、その差は、10年ごとに2.1ポイントずつ縮み、平均で49歳前後で、逆転した。

ドイツの、より新しい年のデータでも、同じ形が確かめられている。一般教育を受けた人は、若いうちは、就業の確率が13.6ポイント低かったが、43歳で逆転し、65歳では、11.5ポイント高くなっていた。徒弟制度の強い国(デンマーク、ドイツ、スイス)では、41歳から65歳までの25年間にわたって、この差が統計的にも確かだった。

著者らは、この結果を、技能の陳腐化から読んでいる。職業教育で身につけた具体的な技能は、年とともに、一部ずつ使えなくなる。一般的な教育は、入口では不利だが、変化への対応には、有利に働く。どの職業の技能が陳腐化するのかを、あらかじめ言い当てることはできないが、10年ごとに、一部が失われていく、という見方だ。これは、著者らの読みで、研究が直接測ったものではない。

この見方を、工具箱にたとえてみる。職業教育は、ある作業のために作られた、専用の工具を、いくつも渡される教育だ。その作業をするかぎり、これほど手際のよいものはない。一般教育は、どの作業にも、そこそこ使える、汎用の道具を渡される教育だ。入口では、専用の工具を持つ人のほうが、早く仕事を始められる。作業の種類が変わると、専用の工具の一部が、使えなくなる。汎用の道具は、新しい作業にも、持ち込める。ただし、この比喩は、読みやすくするためのもので、研究が示した仕組みではない。専用の工具を、新しい作業に合わせて、改造できる人もいるだろうし、汎用の道具では、どうにもならない作業もある。

注意点が、いくつかある。この研究は、男性の就業だけを見ている。逆転する年齢の推定は、著者自身が「かなり不正確」と書いている。国際比較のデータは1990年代半ばの調査で、その後、職業教育も、産業も、変わっている。賃金では、逆転は就業より早く、ドイツのデータでは、30歳前後で起きている。生涯の賃金の現在価値を試算した結果は、国によって分かれた。ドイツでは一般教育が24%、デンマークでは6%高く、経済の伸びの遅いスイスでだけ、職業教育が8%高い。「職業教育が、損か得か」には、一つの答えが出ていない。

この逆転を、どう説明するのか。著者らは、マッチングした標本や、オーストリアの工場閉鎖のデータなどで、職業教育を選ぶ人と、一般教育を選ぶ人の、選ばれ方の違い(選択バイアス)を検討し、逆転は、選ばれ方の違いだけでは説明できない、と結論している。学校が焦点を当てる技能の違い、つまり、技能の陳腐化の速さの違いによる、というのが著者らの読みだ。

逆転は、再現したのか

この結果には、追試がある。結果は、割れた。同じ川の深さを、三か所で測ったら、場所によって違う数字が出た、という状況に近い。

Forster、Bol、van de Werfhorstが2016年に、2012年の国際成人力調査(PIAAC)を使って調べた研究は、職業資格を持つ人が、労働市場の入口で就業の確率が高く、後半に、その優位が逆転することを、確認している。ここは、Hanushekらと一致する。一方で、職業教育の制度の「職業への特化の度合い」が、国によって違うことが、逆転の起き方を系統的に変えるという仮説は、支持されなかった。Hanushekらが、徒弟制の強い国で、逆転が顕著だったと報告したこととは、合わない。

BrunelloとRoccoが2017年に、英国の、1958年に生まれた人たちを追ったデータで調べた研究は、職業教育と一般教育のトレードオフが見えるのは、実質賃金だけで、しかも、職業教育の中でも、水準の低い層に限られる、と報告している。1970年に生まれた人たちでも、同じだった。つまり、トレードオフがあるとしても、職業教育を受けた人の長期的な効用が、低いとは限らない。

GolsteynとStenbergが2017年に、スウェーデンの登録データで、2年制の高校課程を調べた研究は、収入のパターンの記述が、両方の仮説を支持する、と述べている。短期では、職業教育が有利で、長期では、一般教育が有利になる。成績や家族の特徴を揃えても、同じだった。

三つを並べると、こうなる。若いうちの職業教育の有利さと、年を取ってからの一般教育の有利さは、複数の研究に、何らかの形で出ている。ただ、逆転が、どの指標で(就業か、賃金か)、どの人たちで(職業教育の中のどの層か)、どの国で、起きるのかは、研究によって違う。「職業教育は、年を取ると不利になる」という言い方は、一つの研究が示した、条件つきの結果で、確立した事実ではない。

新しい道具を取り入れると、誰が得をするのか

二つめの意味、同じ職業のまま中身を更新する場面を、見てみる。近年、最も測られているのは、生成AIという新しい道具を取り入れる場面だ。

Brynjolfssonらが報告した、米国のコールセンターでの研究は、5,179人の担当者を対象にした。AIの支援を使うと、生産性は平均でおよそ15%上がった(公刊された版の数値)。ただし、その効果は、人によって大きく違った。入社して間もない人や、スキルの低い人では約30%上がり、経験を積んだ人では、ほとんど変わらなかった。新しい道具は、経験の浅い人に、より大きな上乗せをもたらした。

Dell'Acquaらが、ボストンコンサルティンググループの758人のコンサルタントで行った実験は、別の面を示している。AIが得意とする範囲の課題では、AIを使った人は、12.2%多くの課題をこなし、25.1%速く終えた。ところが、AIが苦手な範囲に置かれた、経営判断の一つの課題では、正解を出した割合が、AIを使わない群の84.5%に対し、AIを使った二つの群で60%と70.6%で、およそ19ポイント低かった。この実験は、AIを使った群と使わなかった群を比べたもので、「見分ける力」を直接測ったわけではない。それでも、結果は、課題が道具の得意な範囲の内側にあるか、外側にあるかで、反転した。

この二つの研究から、順応について、二つのことが言える。一つは、新しい道具の利益は、全員に同じ大きさでは配られない、ということ。もう一つは、結果を分けたのが、課題が道具の得意な範囲に入っていたかどうか、だったということだ。ただし、どちらの研究も、特定の職場と、特定の課題での結果で、そこから、キャリア全体の順応について言えることは少ない。また、道具の側が変われば、得意な範囲も、動く。

移れる距離は、タスクの近さで決まる

順応の中身を、別の角度から見る研究もある。一つめの意味、職業を移るとき、人は、どこへ移るのか。

GathmannとSchönbergが2010年に発表した研究は、職業を、その職業で行うタスク(作業の内容)で測り、職業間の距離を定義した。人は、タスクが似た職業へ移る傾向があり、経験を積むほど、移る先との距離は縮む。ネジを回す仕事から、穴を開ける仕事へなら、持ち込める工具が多く、溶接の仕事へなら、置いていく工具が増える、というイメージだ。そして、特定のタスクに結びついた技能が、賃金の伸びの、最大で約5割を説明する、という結果だった(出版版は最大52%、ワーキングペーパー版は少なくとも40%と、版によって数値が違う)。

この結果は、順応について、一つの見方を与える。職業の名前は変わっても、タスクの中身が近ければ、移る負担は小さい。タスクが遠い職業に移るときは、それまでの技能の、使える部分が少ない。順応とは、気持ちや姿勢の問題である前に、これまでの技能が、次の仕事のタスクと、どれだけ重なるのかの問題でもある、という見方だ。ただし、これは、この研究の含意を、私が読み替えたもので、研究自身が、順応を論じているわけではない。

応用科学を出て技術職に就いた人は、50歳で約4割になった

では、実際に、職業は、どれくらい移っているのか。一つの数字がある。

DemingとNorayの研究(ワーキングペーパー版)は、米国の大卒者の調査(23歳から50歳の男性の常勤が中心)を、年齢別に並べて、専攻と職業の関係を調べている。同じ人を追った調査ではなく、年齢ごとの断面の比較だ。工学・コンピュータ科学の賃金の上乗せが、年齢とともに縮むことは、三本目の記事で扱った。ここでは、職業の移動のほうを見る。応用科学(工学・コンピュータ科学など)を専攻した人で、技術職に就いている人は、23歳から24歳の63%から、35歳で48%、50歳で約40%まで減る。減った分は、管理職への移動で説明される、と論文は書いている。ただし、理系以外の専攻の人も、管理職の割合が10%から26%に増え、年齢が上がると、職の構成が似てくる。管理職への移動は、理系に特有ではない。応用科学の人の管理職の割合は、6.5%から27.5%に増える。

この研究が示すのは、同じ専攻を出た人が、同じ職業に、50歳までとどまるわけではない、という事実だ。人は、技術職から出ていく。その動きの多くは、管理職への移動という、一つの方向に集まっている。ここで見えているのは、順応の一つの姿かもしれないし、年齢とともに誰にでも起きる、職の構成の変化かもしれない。ただ、この移動が、うまくいった人の記録なのか、押し出された人の記録なのかは、この研究だけでは、分からない。

職業の移動は、昔から増えてきた、という報告もある。KambourovとManovskiiが2008年に、米国の1968年から1997年のデータで調べた研究は、職業と産業を移る人の割合が、大きく増えたと報告している。20歳から60歳まで、同じ職業にとどまる人の割合は、日本でも、米国でも、直接の数字を、確認できた範囲では、見つけられなかった。

「スキルの半減期」の、出どころ

順応を語る場面では、「スキルの半減期は、数年になった」という言い方を、よく目にする。この数字の出どころを、探してみた。

出どころは、見つかった。ただ、どれも、確かな測定ではなかった。世界経済フォーラムの「仕事の未来」報告書(2025年版)には、雇用主が、2030年までに、労働者の中核的なスキルの39%が変わると予想している、とある。2023年版では44%、2020年版では57%だった。これは、雇用主への調査での、予想だ。スキルの変化を、実際に測った値ではない。この記述は、検索結果の抜粋で確認したもので、報告書のページ自体は、開けなかった。

IBMの「2.5年」は、IBM自身の研修のページに、スキルの半減期は約5年、より技術的なスキルは、2.5年、とある。出典は「研究」とだけ書かれていて、研究の名前も、方法も、書かれていない。2.5年は、技術的なスキルの値だ。

ここから分かるのは、数字が間違っているということではない。雇用主の予想や、方法の分からない推定が、「スキルの半減期」という言葉で、広く流通している、ということだ。変化が速い、という感覚は、多くの人が共有している。その感覚を支える、測定された数字は、思ったほど、見つからなかった。

確かな数字として、一つ挙げられるのは、Autorらが2024年に報告した研究だ。米国の現在の雇用の過半数が、1940年以降に生まれた職種の名前の中にある、と述べている。職の名前は、時間とともに、入れ替わる。ただ、この数字が、今後の入れ替わりの速さを、教えてくれるわけではない。

日本のデータで、何が見えるのか

ここまで、ほとんどが、欧米のデータだった。日本の高校生に向けた記事として、日本で何が測れるのかも、確かめておく。

日本で、20歳から60歳まで、同じ職業にとどまる人の割合は、確認できた範囲では、見つからなかった。近い数字はある。労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働政策研究報告書No.210(2021年)は、転職を経験した人(2,597人)で、前職と同じ職業に就いた割合が、大分類で約47%、中分類で約32%だった、と示している。専門学校を出た人では、約44%が、同じ職業の中分類の中で転職していた。これは、初職からの継続率ではなく、転職した人だけの数字だ。同じ機構の2018年の資料は、2014年の就業者Web職業動向調査(27,074人)で、職業間の移動を扱っているが、年代ごとの、職業の一致率を示したものではない。職業別の転職率は、就業構造基本調査にもとづく統計があるが、有業者が、1年のあいだに転職した割合で、初職からの継続を示したものではない。

職業教育の領域も、日本では、実証の結論が、見つからなかった。専門高校、高等専門学校、専門学校を出た人の、賃金や転職の長期の追跡は、確認できた範囲では、ない。高卒で就職した人の、3年以内の離職率は、令和2年卒で37.0%と、厚生労働省の全国の値として報じられているが、これは学科別の数字ではなく、順応の指標でもない。

つまり、日本の高校生が知りたいはずの「自分の進路の場合は、どうなのか」に、日本のデータで、確かに答えられる材料は、いまのところ少ない。欧米の研究が示すことが、日本にそのまま当てはまるのかも、分からない。日本は、新卒の一括採用や、解雇規制の強さなど、制度が違う。Gendaらの、学歴の低い男性の、就職時の不況の影響が、日本では長引いた、という報告は、制度の違いが、結果を変えることの一例だ。

ここまでの材料

ここまでの材料を、短くまとめておく。

順応は、質問票で測れる。測れたものは、主観的な満足や自己評価と結びついていて、賃金や転職の成功を、順応が引き上げたという確かな証拠は、確認できた範囲では、示されていなかった。職業教育と一般教育の比較では、若いうちの職業教育の優位と、年を取ってからの一般教育の優位が出るが、逆転の起き方は、指標、人、国で違う。職業を移るとき、人はタスクが近い職業へ移る。同じ専攻を出た人でも、50歳までに職業は動く。変化の速さを示す数字は、測定ではなく、予想や、方法の分からない推定が多い。

シリーズでは、各基準を、「大事な場面」「大事でない場面」、その二つを分ける条件、の三つに分けて整理してきた。順応を、この三つに分ければ、こうなる。順応が大事なのは、基準が実際に変わり、これまでの技能が、次の仕事で使えなくなる場面だ。大事でないのは、技能の置き換えが起きない場面だ。分ける条件として、根拠があるのは、移る先のタスクと、これまでの技能の重なり、くらいだ。それも、順応を直接論じた研究ではなく、職業を移った人の動きから、私が読み替えたものだ。

空いたままの欄に、何が入るか

基準が変わっても順応できる人は、何が違うのか。この問いに、研究は、まだ、答えを持っていない。測れたのは、順応に近い、気持ちや姿勢の点数、若いうちの就業の優位、職業を移るときの距離といった、順応の周りにあるものだった。順応そのものが、人生の長い期間で、何を引き上げたのかは、測られていない。

「順応力が大事だ」も、これまで見てきた基準と、同じ問いにかけられる。この予測は、どれだけ当たってきたのか。当たってきたのかを確かめる材料が、いまは、まだ薄い。変化のあとに、移れるようになってほしい、とは思う。ただ、そうなるための手段を、示せる水準の証拠は、いまのところ弱い。分かっているのは、移る先とのタスクの重なりが、移りやすさに関わりそうだ、というところまでだ。自分の持っている技能は、次の仕事の、どのタスクと重なるのか。この問いだけが、材料から、はっきり立ち上がる。

出典

確認の水準は、全文(本文を読んだ)、要旨(抄録や検索で得た要約のみ)で示す。

  • Rudolph CW, Lavigne KN, Katz IM, Zacher H. 2017. Linking dimensions of career adaptability to adaptation results: a meta-analysis. J Vocat Behav 102:151–173(全文)
  • Zacher H. 2014. Career adaptability predicts subjective career success above and beyond personality traits and core self-evaluations. J Vocat Behav 84:21–30(要旨)
  • Hanushek EA, Schwerdt G, Woessmann L, Zhang L. 2017. General education, vocational education, and labor-market outcomes over the lifecycle. J Hum Resour 52(1):48–87(ワーキングペーパー全文。公刊版の数値は未照合)
  • Forster AG, Bol T, van de Werfhorst HG. 2016. Vocational education and employment over the life cycle. Sociol Sci 3:473–494(要旨)
  • Brunello G, Rocco L. 2017. The labor market effects of academic and vocational education over the life cycle: evidence based on a British cohort. J Hum Cap 11(1):106–166(要旨)
  • Golsteyn BHH, Stenberg A. 2017. Earnings over the life course: general versus vocational education. J Hum Cap 11(2):167–212(要旨)
  • Brynjolfsson E, Li D, Raymond LR. 2025. Generative AI at work. Q J Econ(要旨。ワーキングペーパー版は NBER 31161)
  • Dell'Acqua F, et al. 2026. Navigating the jagged technological frontier: field experimental evidence of the effects of AI on knowledge worker productivity and quality. Organ Sci(公刊要旨)
  • Genda Y, Kondo A, Ohta S. 2010. Long-term effects of a recession at labor market entry in Japan and the United States. J Hum Resour 45(1):157–196(抄録)
  • 労働政策研究・研修機構. 2021. 労働政策研究報告書No.210 第4章(転職経験者2,597人)。同. 2018. 職業間移動に関する資料(就業者Web職業動向調査2014、27,074人)。総務省統計局. 就業構造基本調査(職業別の転職率)。厚生労働省. 新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒。報道を通した確認)
  • Gathmann C, Schönberg U. 2010. How general is human capital? A task-based approach. J Labor Econ 28(1):1–49(抄録)
  • Deming DJ, Noray K. 2018/2019. STEM careers and the changing skill requirements of work. NBER Working Paper 25065(ワーキングペーパー全文。出版版との数値の照合は未了)
  • Kambourov G, Manovskii I. 2008. Rising occupational and industry mobility in the United States: 1968–97. Int Econ Rev 49(1):41–79(要旨)
  • Autor D, Chin C, Salomons A, Seegmiller B. 2024. New frontiers: the origins and content of new work, 1940–2018. Q J Econ(要旨)
  • World Economic Forum. Future of Jobs Report 2025(検索結果の抜粋で確認。ページは未取得。2023年版44%、2020年版57%)。IBM. スキル変革に関する研修ページ(「半減期は約5年、技術的スキルは2.5年」。出典は「研究」とだけ記載)
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