仕事
2026

上司が判子を押すしかなくなったとき、権限はどこへ行くのか
1997年の組織の経済理論は、過負荷で判子を押すしかない上司から、実質的な権限が部下へ移ると予測した。その予測が置いていた前提は、生成AIの時代にも保たれるのか。レビューと説明責任と権力の研究を、証拠と推論を分けてたどる。

「8時間休息」と「8時間睡眠」のあいだ――通説の6つの手口
ノーベル賞受賞者の「少なくとも22倍」は、何と比べた倍率か。このサイトの以前の版は、それを「最大」と書いていた。通説を検証した8本の記事を並べ直し、数字を変えずに意味を変える6つの手口を見ていく。

ポモドーロの「証明」をたどると、小説の学習ガイドに着いた
考案者は、20〜45分の区切りは後に短い休憩を挟めば注意と精神活動を最大にしうると「証明されている」と書き、その参考文献に小説の学習ガイドを挙げた。中身は未確認だ。AIに任せて待ち、確かめる働き方で、25分は何を測るのか。

「1万時間」は平均だった——マスターまでの練習量は1対8に開く
ブエノスアイレスのチェス選手34人では、マスターに届くまでの練習量が3,016時間から23,608時間まで開いていた。1万時間の元の研究、その後のメタ分析、計画的な練習を唱えたエリクソンとの論争をたどり、練習量で説明できる範囲を確かめる。

ショートスリーパーという体質には、遺伝子の手がかりがある。ただ、数字の線は資料ごとに違い、一本に定まらない — 定義のない言葉の使い道
睡眠が短い体質については、たとえば一つの家族の二人から、関わる遺伝子の変異が報告されている。ただ、この二人について、短くても支障がないかを確かめた結果は、論文の本文には示されていない。一方、睡眠を削った実験では、眠気の自己評価がわずかにしか増えなくなっても成績は落ち続けた。本物のショートスリーパーを数字で区切る、合意された線は見当たらず、同じ病名の患者3,703人には1,030通りの症状の組み合わせがあった。

結婚すると男は仕事ができるようになるのか——彼らは結婚の1年前に、すでに8.5%多く稼いでいた
結婚して責任感が出た、という趣旨のことを取引先に言われた。自分では、何も変わっていないつもりだった。米国の男性4,287人を追った研究では、既婚男性の17.7%の賃金の上乗せは、伸び方の違いまで取り除くと0.5%まで縮んだ。その違いから計算すると、彼らは結婚の1年前に、すでに8.5%多く稼いでいた。それでも双子で比べると、差は消えない。
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「手段が目的になる」を、1937年の心理学は職人気質の源として、1940年の社会学は官僚制の硬直として描いた
「手段と目的を取り違えるな」とよく言われる。だが1937年の心理学は、手段がそれ自体の目的に変わる過程を職人気質や生涯の関心が育つ道筋として描き、1940年の社会学は官僚制の硬直として描いた。クラッカーを食べると強くなる、という絵本を聞かされた幼児は平均3.1枚、何も聞かなかった子は9.07枚食べた。
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人事制度の流行は効果が確かめられる前に広まる。広まったあとに批判が追いつく。
コーチングの成績・スキルへの効果量は、研究を1本抜くと0.60から0.19に下がる。コーチング、タレントマネジメント、OKR、1on1、エンゲージメントサーベイの土台を、できる範囲でさかのぼって読み、流行と検証の順番を調べた。
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「不可」を「まだ」に変えた学校は、成績が上がったのか
マインドセットが変わったと確認できた13の研究だけを集めると、成績への効果量は0.04で、ゼロと区別がつかなかった。リスクの高い生徒への効果は、研究者によって0.09から0.19まで割れている。どちらを採るかの前に、何を数えているのかを見る。
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17市場で、自分の使うブランドを「違う」と選んだ顧客は11%
17市場の調査で、利用者が自分のブランドを「違う」と選んだのは平均11%。英国の標準・特典付きの当座預金は、約9割が乗り換えれば得という試算なのに、当座預金全体の乗り換えは年3%。
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測れないものに価値がない、のではない
「測れないものは管理できない」はデミングの言葉として広まったが、本人は「高くつく神話」と書いていた。時給147ドルの目標と過剰請求、救急車で待たされた患者——数値目標がどこで目的とすり替わるのかをたどる。

プロテイン30分ルールの犯人には、完璧なアリバイがあった
プロテインを摂り遅れると筋トレが無駄になる、というルールの一次資料をたどると、70代・未経験者・わずか13人の実験に行き着く。効いているのは時計ではなく、別の数字だった。
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情熱は先に見つけるものか、後から育つものか
「情熱を先に見つければ、あとはずっと楽しく続けられる」――そう信じる人ほど、壁にぶつかった瞬間、興味を失いやすいという実験結果がある。この助言は「収入と安定を追え」と比べて、進路の性別の偏りを大きくしうるが、想像上の短期の反応だ。

ノーベル賞科学者の「22倍」は、何と比べた数字か
ノーベル賞受賞者はアマチュアの演者である確率が「少なくとも22倍」と言われる。倍率の出どころと、論文の表の数字の出し方を読み直し、「1万時間」の再現、スポーツ選手の研究、日本の高齢者5万人の追跡も、原典にたどった。

「旅より住む」が創造性に効く、という話を原典で読み直す
海外に住んだ期間は創造性課題の成績と関連した。旅行の期間は、実験1で有意に負(p=.049、解釈は保留)、実験2で無関係だった。2009年の5つの実験の人数と操作を読み直し、続報、日本の留学の統計までたどった。

画面の時間の説明力は最大0.4%、物差しはジャガイモと眼鏡
35万人超の分析で、画面の利用が説明する幸福度のばらつきは最大0.4%。英国では眼鏡のほうが強い関連を示した。4週間Facebookを止めた実験の改善は、相関の約4割だった。

米国調査で語られた中年の危機、過半は38〜50歳の外だった
米国の電話調査で集まった「中年の危機」190件のうち、過半は38〜50歳の枠の外の年齢で語られていた。40代半ばに危機が来ない筆者が、数字と論争を、一次情報を中心に確かめた。

格言「早寝早起き」を検証した論文に、徳の証拠はなかった
65歳以上1,229人を調べた1998年の論文では、豊かだったのはフクロウ型で、ヒバリ型に得の兆候はなかった。体内時計の遺伝、夜型の頭の良さ、始業時間の実験、ソーシャル・ジェットラグを、原典をたどって確かめた。

断捨離が効くのは、モノが減るからではないらしい
30家族の研究で、妻のコルチゾールの下がり方は、家を語る言葉と対応していた。その言葉は、家の広さや築年とはほとんど関係がなかった。一般の人が片付けた前後を、比べる相手を置いて測った論文は、探した範囲では見つからなかった。

誰の体も測らずに「8時間睡眠」を唱えていた
「8時間睡眠」の起点としてよく語られるのは、1817年の標語「8時間休息」だ。ベッドにいる時間を6時間に絞って2週間過ごす実験では、眠気の自己評価は頭打ちなのに、注意力は徹夜1晩分まで落ちていた。