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米国の工学・コンピュータ科学卒の賃金の上乗せは、23歳の39%から40歳の17.5%に縮んだ——専門・大企業・理系・大学名は、いつ当たるのか
専門か幅か、大企業か起業か、理系か文系か、大学名か。四つの基準が当たる条件を、研究の数字で確かめる。米国では工学・コンピュータ科学卒の賃金の上乗せが約39%から約17.5%に縮んだ。日本のデータは薄い。
進路を考えるとき、よく出てくる問いがある。専門を深めるか、幅を持つか。大企業に入るか、起業するか。理系にするか、文系にするか。偏差値の高い大学に行くべきか。どの問いも、答えは「人による」になりやすく、そこから先へは進みにくい。この記事は、その「人による」の中身を、条件として並べてみる。
これは、「進路の基準を疑う」シリーズ(全四本の予定)の三本目で、四つの問いを扱う。このシリーズでは、各基準を、「大事な場面」「大事でない場面」、そして、その二つを分ける条件、という三つの部分に分けて並べる。四つとも、未来の予測を、短い言葉に圧縮したものだ。「専門を持てば強い」「大企業なら安泰」「理系は手に職」「いい大学に行けば得をする」。これらが、どんな条件のときに当たり、どんな条件のときに外れるのかを、研究の数字で見ていく。先に数字を一つ挙げておく。米国の男性で、工学とコンピュータ科学を専攻した人の賃金の上乗せは、23歳から24歳の約39%から、40歳の約17.5%へ縮んだ。研究の多くは米国のもので、日本のデータは薄い。確認の水準は、出典の欄に書いた。
専門が有利か、幅が有利かは、変化の速さで向きが変わった
専門を深めるか、幅を持つか。この問いは、早期の専門化とスポーツや科学の成功の関係として、別の記事で詳しく扱った。ここでは、仕事の場面だけを見る。
Lazearが2002年のワーキングペーパー(正式な論文になる前の、公開された研究原稿)で報告した研究は、スタンフォード大学経営大学院の卒業生を調べた。回収率は約4割で、約5,000人の職歴と、在学中の履修科目を結びつけている。職歴の記録のうち、創業者として働いた記録の割合は、全体で6.6%。それまでの職務の役割が3未満の職では3%、16を超える職では29%だった。役割が一つ増えるごとに、起業の確率が約1ポイント上がる。幅広い経験を持つ人は、起業に向く、という予測だ。
著者は、別の説明も検討している。リスクを取る人が、役割を多く引き受けているだけ、という見方だ。同じ雇い主に長くとどまる人ほど起業しやすい、という結果から、この見方は退けられた。ただ、幅が、もともとの資質なのか、起業を見越して積んだ経験なのかは、データでは分けられていない。起業家になった人は、MBAでの履修科目も、より分散していたが、これは平均を比べた結果で、回帰分析での支持は弱い、と著者自身が書いている。測っているのは、起業家になるかどうかで、起業家になって得をするかどうかではない。
大企業の経営者を調べた研究もある。Custódio、Ferreira、Matosが2013年に報告したもので、米国の株価指数S&P1,500に入る企業の最高経営責任者(CEO)を、1993年から2007年まで追っている。履歴書から、一般的な経営のスキルの指数を作った。役職の数、業界の数、企業の数、CEOの経験などだ。標本は、CEO・企業・年の組み合わせで21,909件、CEOの数で4,451人。指数が高い、つまりゼネラリスト型のCEOは、年間の報酬が19%、額にして100万ドル近く高かった。専門型の人を外部から招いて、ゼネラリスト型に替えたときに、上がり方が最も大きく、会社の再編や買収のような複雑な課題で招かれた場合に、上乗せは大きかった。ただし、これは、極端に選ばれた層の話だ。報酬が高いことは成果が高いこととは別で、ゼネラリスト型であることと、会社の業績とのあいだには、有意な関係は見られなかったと、著者は書いている。高校生の進路に、そのまま当てはめる根拠にはならない。
この二つの研究だけを見れば、幅が有利に見える。しかし、条件を変えると、向きが変わる研究がある。ここで使われるのが、自然実験という方法だ。研究者が条件を操作するのではなく、世の中で偶然起きた出来事を、条件の違いとして使う。人をくじ引きで分けることはできなくても、出来事の前後や、出来事の影響の強弱を比べることで、原因に近づける。
Teodoridis、Bikard、Vakiliが2019年に報告した研究は、ソ連の崩壊を、そうした出来事として使った。崩壊のあとに、ソ連の数学の成果が国外に公開され、理論数学の下位分野ごとに、研究の変化の速さが変わった。専門を一つの下位分野に絞っていた研究者と、幅広く論文を書いていた研究者(分散の指数が上位10%の人)の成績を比べると、変化の遅い分野では、幅広い研究者の成績がよく、変化の速い分野では、専門を絞った研究者の成績がよかった。共同研究の相手としても、変化が速いときは専門家が、遅いときはゼネラリストが求められた。
専門か幅かの有利は、その分野の変化の速さで、向きが変わった。ただし、この結果は、理論数学という一つの領域の、論文の成績を測ったものだ。Lazearは起業の確率を、Custódioらは経営者の報酬を、Teodoridisらは論文の成績を測っていて、結果の種類が違う。三つを並べて「幅が有利」「専門が有利」と言うとき、その言葉は、研究ごとに別のものを指している。研究ごとに、「幅」の定義も違う。Lazearは職歴の役割の数で、Custódioらは、役職の数や業界の数などを合わせた指数で、Teodoridisらは、論文を出した下位分野の数で測っている。
それでも、一つ、研究が示したことがある。専門か幅かの基準は、変化の速さという、もう一つの前提に依存しうる。変化が速い領域では専門が、遅い領域では幅が有利、という結果が、少なくとも一つの研究に出ている。同じ会社の中でも、新しい製品を作る部署と、定型の事務を担う部署とでは、変化の速さが違うかもしれない。進路を選ぶ時点で、その持ち場の速さを、見通すことは難しい。
大企業か、起業か
大企業に入れば安泰、起業は賭け。この対比を、数字で見てみる。
まず、起業の側から。自営業と収入について、Hamiltonが2000年に発表した研究は、事業を10年続けた人の収入の中央値が、雇われて働く人より35%低い、と報告している。自営の人は、開始時の収入が低く、伸びも遅い。この差は、能力の低い人が自営に流れるという選別では説明されず、業種や収入の測り方を変えても残った。著者は、自営には非金銭的な便益、つまり自分で決める自由や、仕事そのものの満足が大きいのだろう、と解釈している。雇用者の付加給付(社会保険や福利厚生)が、収入に含まれていないので、報酬の差は、ここで見えている差より大きいかもしれない、とも書いている。この「自由」は、著者の解釈で、検証された結果ではない。
別の見方もある。検索で得た要約の範囲では、LevineとRubinsteinが、法人化した自営業などでは、収入が雇われて働く人より高い、と報告している。「自営は収入が低い」は、自営の中身(法人か個人か)で、向きが変わりうる。本文は読めていない。
ベンチャーキャピタル(新しい会社に出資する投資会社)から出資を受けた創業者は、収入の形が、さらに極端だ。HallとWoodwardが2010年に報告した研究によれば、そうした創業者が、会社の売却や上場の時点で受け取る現金は、平均では約580万ドル。ところが、約4分の3の創業者は、何も受け取らない。平均を押し上げているのは、10億ドルを超える、ごく少数の成功だ。ただし、これは、出資を受けた創業者の話で、スタートアップに勤める社員の話ではない。社員の賃金やキャリアについては、確認できた範囲では、材料を集められなかった。
では、大企業の側は、安泰なのか。日本の数字がある。労働政策研究・研修機構の統計(ユースフル労働統計2025)は、学校を卒業してから、60歳までフルタイムの正社員を続けた場合の生涯賃金を推計している。男性の大卒で、従業員1,000人以上の企業は約3億円、10人から99人の企業は約2.1億円で、差は約9,000万円だ。退職金は含まれない。同じ会社に定年まで勤め続けた場合に絞ると、男性の大卒で約3.2億円と約2.4億円(差は約8,000万円)、女性の大卒で約2.6億円と約2.0億円(差は約6,000万円)になる。転職する場合は、同じ規模の企業に転職すると仮定されている。
この推計には、重要な条件がある。これは、各年齢の現在の平均賃金を足し合わせた「断面の合算」で、同じ人を追ったものではない。大企業に入る人が、そもそも、どんな人かという選別は、統制されていない。「大企業に入れば得か」ではなく、「大企業で働いている人の平均は、こうだ」という数字だ。有名な料理店で働く料理人の平均給与が高くても、それは、その店に入れる腕を持つ人たちの平均だ。同じ人が、別の店に入っていたら、同じ給与だったのか、それとも、店の名前が給与を上げたのか。数字は、その問いには、答えない。
大企業が安泰かどうかを示す材料も、探した。東京商工リサーチの集計では、上場企業の早期・希望退職の募集は、2024年に57社で約10,000人、前年は41社で約3,200人だった。2021年は約15,900人。これは募集された人数で、実際に辞めた人の数ではない。上場企業は、大企業と同じ意味でもない。数字は、人員の入れ替えが、大企業でも起きていることを示すが、「安泰かどうか」には、これだけでは答えない。
この対比を、仮の二人の場面に置いてみる。仮の例で、実在の人の話ではない。一人は、手堅く大企業に入り、定年まで勤めた人。もう一人は、小さな会社を起こし、10年続けた人。収入の平均や中央値だけを比べれば、前者のほうが高い、という数字が、ここで見た統計には出てくる。ただ、前者の「手堅さ」は、その人が大企業に入れる人だったから得られた面もあり、後者の「低さ」は、自由と引き換えの面もある。収入だけで、二人の選択の良し悪しは、決められない。
大企業か起業か。「大企業なら安泰」は、平均では、賃金の高さの傾向と合う。ただし、選別が統制されていない。「起業は賭け」は、出資を受けた創業者については、数字が裏づけている。自営一般では、収入が低いという報告と、法人では高いという報告がある。社員については、材料が足りない。
理系か、文系か
理系は手に職、という言い方がある。この基準が、時間とともにどう動くのかを調べた研究がある。
DemingとNorayが、米国の大卒者のデータ(2009年から2016年の調査、23歳から50歳の米国生まれの男性)で調べた研究(ワーキングペーパー版)は、工学・コンピュータ科学を専攻した人の賃金を、他の専攻の人と比べた。年齢ごとの断面を並べた比較で、同じ人を追ったものではない。賃金の上乗せは、23歳から24歳の時点で約39%。それが、30歳で約26%、40歳で約17.5%と縮み、その後は横ばいになる。別の全米の大卒者調査では、25歳から26歳で約46%、30歳で27%、40歳で21%と、値は違うが、縮む形は同じだった。論文の抄録は、就職後10年ほどで、上乗せが大きく縮むと書いているが、本文の数字では、半分以下になるのは、約16年から17年後だ。
切符の値段にたとえてみる。入口で高く売れた切符が、年を取るにつれて、他の切符の値段に近づいていく。縮む理由の一つは、求められるスキルが、入れ替わることだと、著者らは考えている。もう一つは、人が技術職から出ていくことで、その動きは、四本目の記事で、順応の話として扱う。
一方、純粋科学(生物、化学、物理、数学)の専攻は、逆の形をしている。初期の賃金の上乗せは、ほぼゼロだが、30代半ばから増え、40歳で12%、50歳で16%になる。大学院に進む人が多く、35歳で52%に達する。工学のような応用科学は、卒業してすぐに、企業が必要とする技能と、結びつきやすい。純粋科学は、基礎的な知識を扱うので、卒業直後の需要は限られるが、大学院を経て専門の職に就くと、賃金が伸びる、という読み方ができる。同じ「理系」でも、初期に高いものと、後で高くなるものがある。
ここまでは米国の話だ。日本の理系は、どうか。安井健悟が2019年に発表した研究は、2014年のワーキングパーソン調査(首都圏50km圏に住む、59歳以下の大卒以上の人が対象)を使って、能力の代理変数と、高校時代の経験を統制したうえで、理系の賃金の上乗せを測っている。理系の上乗せは、男性で3.2%、女性で11.7%。統制をかける前と、ほとんど変わらなかった。大きいのは、大学院修了の上乗せで、男性で17.8%、女性で23.4%。著者は、理系の上乗せに見えたものの大きな部分は、大学院修了の上乗せだ、と整理している。学部の専攻別では、人文科学卒に対して、医学・薬学が、男性で52.6%高い。ただし、医師や薬剤師の資格の影響かもしれない、と著者は注記している。
この数字から、いくつか読める。まず、日本の首都圏の大卒者の調査では、理系の学部卒の賃金の上乗せは、男性で3%台と、大きくない。次に、差が大きいのは、大学院を修了するかどうかと、医学・薬学のような特定の専攻だ。「理系は手に職」という基準は、理系の中の違い、時間による変化、日本か米国かで、当たり方が変わる。
大学名は、収入を決めるのか
最後に、大学名。偏差値の高い大学に行けば、収入が高い。この予測を、見かけの差から切り離そうとした研究がある。
DaleとKruegerが、2011年のワーキングペーパーで報告したもので、米国の27の大学・カレッジに、1976年と1989年に入学した人たちを、社会保障局の賃金記録(1983年から2007年)に結びつけた。工夫は、本人が出願した学校の情報を、分析に加えることだ。出願先の平均SATと、出願した学校の数が、本人の能力と志望の高さを映している、と考える。
基本の分析では、進学先の学校の平均SATが100点高いと、収入が約7%高かった。これは、よく知られた通説に近い数字だ。ところが、出願先の平均SATと出願校数を、分析に加えると、この関係は、ゼロと区別できなくなった。授業料の高さについても、同じ形が出た。調べられた二つの世代で、傾向は似ていた。
この結果の読み方は、二通りある。一つは、大学のレベルは、収入に影響しない、という読み。もう一つは、出願先は、本人の能力と志望の高さを、すでに反映している、という読み。後者のほうが、データには合う。大学名は、本人の能力の目印の役割を果たしている。目印を変えても、中身が変わるわけではない。ただし、この読みには、前提がある。進学先の選択が、観察されない要因と関係しない、という前提で、著者自身が、これを書いている。
例外もある。黒人とヒスパニックの学生、そして、親の学歴が低い学生では、調整した後も、進学先のレベルによる収入の差が、大きいまま残った。ただし、これらの層の推定は、標準誤差が大きく、有意とは言えない推定も含まれる。
この結果への、反対の証拠もある。検索で得た要約の範囲では、Hoekstraが2009年に、州立旗艦大学の合格ラインの前後を比べて、白人男性の収入が約20%高いと報告している。Zimmermanが2014年に、フロリダの公立大学の合格ラインを使って、約22%と報告している。Chetty、Deming、Friedmanは、アイビーリーグなどの補欠者名簿を使って、上位1%の収入に達する確率が、約50%から60%高いと報告している。どれも、本文は読めていない。大学名の効果が「ほぼ消えた」というのは、一つの設計の結果で、別の設計では、効果が見える。
この研究は、選抜度の高い米国の27校に、受かった人だけを対象にしている。日本の大学のランクに、そのまま当てはめることはできない。日本で、受かった人どうしの比較を、同じ設計で行った研究は、確認できた範囲では、見つからなかった。日本のデータで、男性では、大学の質が収入を有意に高める、とした研究(Ono、2004年)があると紹介されているが、原典は確認していない。
数字を読むときの、三つの引っかかり
四つの基準を見てきて、数字を読むときに、繰り返し引っかかった点が三つある。
一つめは、平均と、自分の違いだ。ここで紹介した数字は、集団の平均か中央値だ。平均の差が、集団の中のばらつきに比べて小さいとき、同じ集団の中に、大きくうまくいった人も、そうでない人もいる。二つめは、選別だ。どの基準も、それを選ぶ人は、もともと特定の特徴を持っている。結果の違いが、基準のせいなのか、基準を選ぶ人の違いのせいなのかは、多くの研究で、完全には分けられない。大学名の研究では、設計によって、効果が見えたり、小さくなったりした。三つめは、時間だ。選んだ時点と、結果が出る時点のあいだには、10年、20年がある。その間に、領域の変化も、求められるスキルも、景気も変わる。研究が示す当たり外れは、過去の変化の中で起きたことだ。
日本で測られているもの、いないもの
日本の高校生に向けた記事として、日本で何が測られているのかも、整理しておく。
測られているものは、ある。企業規模ごとの生涯賃金の推計は、労働政策研究・研修機構の統計にある。専攻ごとの賃金の差は、安井の研究が、首都圏の大卒者で示している。測られていないか、確認できなかったものも、ある。大学名の効果を、受かった人どうしで比べた研究。スタートアップに勤める社員の賃金とキャリア。専門と幅の違いを、日本の大企業の中で測った研究。日本には、現場の労働者が、変化や異常への対応を通して身につける技能(知的熟練)についての、古くからの議論があると紹介されているが、原典の書籍は確認していない。
米国の研究を、そのまま日本に当てはめれば、条件の一つ一つが、また省略される。日本は、新卒の一括採用や、企業規模による賃金の差の大きさなど、制度が違う。この違いが、結果をどちらへ動かすのかは、研究の外にある。
四つを、同じ型で並べてみる
四つの基準を、「大事な場面、大事でない場面、分ける条件」の型で、並べてみる。
- 専門か、幅か: 領域の変化が速いときは専門が、遅いときは幅が有利、という研究が一つある。分ける条件は、領域の変化の速さ。
- 大企業か、起業か(大企業): 大企業の平均の生涯賃金は高いが、選別が統制されていない。分ける条件は、誰が入るのか。
- 大企業か、起業か(起業): 自営の収入は、中央値で低い。出資を受けた創業者の平均は、極端な成功が引き上げている。分ける条件は、何を得たいのか(収入か、自由か)。社員の材料は足りない。
- 理系か、文系か: 米国の工学・コンピュータ科学の賃金の上乗せは、キャリアのなかで縮み、純粋科学は後で伸びる。日本の首都圏の調査では、男性の理系の上乗せは3%台で、大きいのは大学院と医学・薬学。分ける条件は、専攻の中身、時期、大学院に進むか。
- 大学名: 米国の選抜度の高い学校の研究では、出願先を考慮すると、進学先の効果は、ゼロと区別できなくなった。別の設計の研究は、効果を報告している。分ける条件は、誰が行くのか、どの設計で測るのか。
四つに共通するのは、どの基準も、当たるかどうかが、基準の外にある、もう一つの前提に、左右されることだ。変化の速さ、入る人の選別、時間、本人の条件。基準は、その前提を、短くしたときに、落としている。
基準の言葉に、書かれなかった条件
「専門を持てば強い」「大企業なら安泰」「理系は手に職」「いい大学なら得をする」。四つとも、完全に外れているわけではない。当たる条件が、言葉の外に、置かれている。
この記事で見えたのは、置かれている条件の、少なくとも一部だ。変化の速さ。選別が統制されているか。時間とともに、上乗せが縮むのか、伸びるのか。どの設計で測った結果なのか。基準を言葉のまま使えば、これらの条件は、見えなくなる。
四つの基準を、重い順に並べることは、この記事ではしなかった。研究が示したのは、どの基準が重いかではなく、どの基準にも、言葉の外に条件がある、ということだった。見えている条件が、自分の場合に、どれだけ当たりそうか。その問いは、数字の外に残る。
出典
確認の水準は、全文(本文を読んだ。ワーキングペーパー版を含む)、抄録(抄録のみ)、二次(報道や解説、検索で得た要約を通した情報)で示す。
- Lazear EP. 2002. Entrepreneurship. NBER Working Paper 9109(全文。出版版は J Labor Econ 23(4):649–680, 2005)
- Custódio C, Ferreira MA, Matos P. 2013. Generalists versus specialists: lifetime work experience and chief executive officer pay. J Financ Econ 108(2):471–492(ワーキングペーパー全文)
- Teodoridis F, Bikard M, Vakili K. 2019. Creativity at the knowledge frontier: the impact of specialization in fast- and slow-paced domains. Adm Sci Q 64(4):894–927(ワーキングペーパー全文。出版版との数値差は未照合)
- Hamilton BH. 2000. Does entrepreneurship pay? An empirical analysis of the returns to self-employment. J Polit Econ 108(3):604–631(抄録)
- Hall RE, Woodward SE. 2010. The burden of the nondiversifiable risk of entrepreneurship. Am Econ Rev 100(3):1163–1194(抄録)
- 労働政策研究・研修機構. ユースフル労働統計2025. 21.1 生涯賃金(全文)
- 東京商工リサーチ. 上場企業の早期・希望退職募集の集計(2024年分は同社のページで確認。2021年分は報道を通した二次情報)
- Deming DJ, Noray K. 2018/2019. STEM careers and the changing skill requirements of work. NBER Working Paper 25065(全文。出版版 Q J Econ との数値の照合は未了)
- 安井健悟. 2019. 大学と大学院の専攻の賃金プレミアム. 内閣府経済社会総合研究所『経済分析』199号(全文)
- Dale SB, Krueger AB. 2011. Estimating the return to college selectivity over the career using administrative earnings data. NBER Working Paper 17159(全文。出版版は J Hum Resour 49(2):323–358, 2014)
- Hoekstra M. 2009. The effect of attending the flagship state university on earnings. Rev Econ Stat。Zimmerman SD. 2014. The returns to college admission for academically marginal students. J Labor Econ。Chetty R, Deming DJ, Friedman JN. Diversifying society's leaders? NBER Working Paper 31492。Ono H. 2004. College quality and earnings in the Japanese labor market. Ind Relat 43:595–617。Levine R, Rubinstein Y. Smart and illicit: who becomes an entrepreneur and do they earn more? Q J Econ 132(2):963–1018(いずれも検索で得た要約。本文は未確認)
