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「効率化」という言葉を使わずに、冷蔵庫の中身とどう付き合うか
1903年の料理書は、すでに厨房の管理を書いていた。「効率化」の語彙が暮らしを軽くするのか窮屈にするのかを、家事の統計と古い資料で確かめ直した。
料理を「マネジメント」の語彙で語る記事を、時々見かける。冷蔵庫を「物流拠点」と呼び、献立を「サプライチェーン」と呼び、下ごしらえを「バッチ処理」と呼ぶ。以前、自分でもそういう書き方をしたことがある。書いている間は面白かった。比喩を思いつくたびに、料理という地味な家事が、急に高度なスキルのように見えてくる。
ただ、しばらく経って読み返すと、違和感が残った。冷蔵庫の在庫を管理する話は、本当にKPIやCI/CDという言葉を借りないと語れないものだったのか。むしろ、ビジネス用語を使うことで、実際にやっていることの地味さを覆い隠していただけではないか、という疑いが消えない。
この記事は、その疑いを、数字と古い資料で確かめ直したものだ。結論を先に言うと、言い換えが暮らしを軽くするという確かな証拠は、見つからなかった。窮屈にするという私の感覚を支える証拠も、強くはなかった。
なぜ管理の比喩に頼りたくなるのか
「料理を効率化する」という言い方には、ある種の後ろめたさへの言い訳が混じっている気がする。自炊は面倒だ、でも面倒だと思うこと自体が悪いことのような空気がある。そこで「これは家事ではなく、マネジメントのトレーニングだ」と言い換えると、面倒さの手前に意味が生まれたような気になる。
だが、冷蔵庫の奥でしなびた野菜を見つけたとき、それを「技術負債」と呼んでも、腐らせてしまった事実は変わらない。呼び方を変えることで実際に助かっているのは、野菜ではなく、自分の気分の方だったのかもしれない。
台所に管理の言葉を持ち込んだのは、私が最初ではない
料理に経営の語彙を持ち込むことを、新しい流行のように感じていた。調べてみると、その感覚が一番先に崩れた。
オーギュスト・エスコフィエが1903年に出した『料理の手引き』(Le Guide culinaire)には、厨房の組織を意味する「brigade」の語と、下準備を意味する「mise en place」の語が出てくる。60人の厨房の班で、400人から500人の客に、1時間から1時間半で料理を出すための、仕事の割り振りと進行の方法まで書き込まれている(全文のOCRで確認した)。書記、総合表、各部門の表、午後5時の号令まである。少なくとも1903年のこの一冊では、料理人が料理を管理の問題として扱うことが、当たり前に書かれている。なお、brigade が軍隊の組織に由来するという説明はよく見かけるが、エスコフィエ自身の言葉では確認できず、後世の解釈として繰り返されているものだった。
家庭の台所にも、同じ語彙が入ってきている。クリスティン・フレデリックが1913年に出した『ニュー・ハウスキーピング』(The New Housekeeping: Efficiency Studies in Home Management)は、家庭を工場のように測り、改善する本だ。皿洗いの手順を見直して、陶磁器や銀器や鍋などを合わせた80点の洗い物が45分から30分になった実測が載っている。家庭用の記録箱(Home Record Cabinet)という書類整理の図版もある。そして同じ本の中で、フレデリック自身が、効率の目的は、牢獄のような決まりきった日課ではなく、余暇だと書いている。能率の語彙を持ち込んだ本人が、能率の自己目的化を戒めていた。
日本でも似た動きがあった。1919年から翌年にかけての文部省主催の生活改善展覧会をきっかけに、生活改善同盟会が結成された。設立の趣旨は、家庭や社会生活における一切の無駄を省き、合理的に活動の能率を増進する、というものだ。1920年の「時」の展覧会には、222,845人が訪れ、女性の化粧や結髪にかかる時間が統計図で示された(佐々木朋子の論文による)。
管理の言葉で家事を語ることが、一世紀前の台所にすでにあった以上、それを自分が思いついた新しい工夫のように感じていたのは、ずいぶん気の早い話だった。
省力化は、家事の時間を減らしたのか
能率の語彙が約束したのは、家事の時間が減ることだった。実際に減ったのか。
1974年にジョアン・ヴァネクが『サイエンティフィック・アメリカン』に発表した論文は、アメリカの主婦の家事時間が、家事の道具が普及しても、ほとんど減っていなかったと報告した。この論文は、「便利な道具は家事を減らさなかった」という定説の根拠として、長く引かれてきた。ところが、2016年にガーシュニーとハームズが『ソーシャル・フォーシズ』に発表した研究が、その結論を元のデータから検証し直した。ヴァネクは1920年代から30年代の米国農務省の日記について、公表された表を分析していた。ガーシュニーらは国立公文書館に残る元の日記と、後年の時間利用調査のデータを使い、米国の農村の女性について、調理や掃除といった中核の家事の時間は減り続けたと結論した。育児と買い物の時間が増えて、その減りを部分的に打ち消していたのだという(抄録による)。
「省力化は家事を減らさなかった」という話は、ガーシュニーらによれば、元のデータから反証された。ただし、変化の一因に挙げられているのは省力化の技術の普及で、言葉の話ではない。道具が中核の家事を減らしたらしいことと、能率の語彙が何かをしたかどうかは、別の話である。
言い換えは、思考を動かすのか
では、この記事が気にしてきた問いに戻る。管理の言葉で言い換えると、暮らしの感じ方は変わるのか。
比喩が思考を動かす、という実験で最もよく知られているのは、ポール・ティボドーとレラ・ボロディツキーが2011年に発表した研究だ。架空の都市の犯罪について書かれた文章を読ませる。犯罪が「ウイルス」にたとえられた文章を読んだ人は、予防や改革を重んじる提案を選びやすかった。「獣」にたとえられた文章を読んだ人は、取り締まりを重んじる提案を選びやすかった。獣の側の取り締まりの選択は、実験1で74パーセント、ウイルスの側は56パーセントだった(実験2では71パーセント対54パーセント)。ただ、比喩の語を文脈から切り離して見せた実験3では、64パーセント対65パーセントと、差が消えた。比喩の力は、語そのものではなく、その語が持ち込む知識の枠組みにあったということになる。しかも、オランダ語版を含む追試(Steen らの2014年)では、比喩による枠づけの効果は見られなかった。ティボドーとボロディツキーは2015年に、犯罪をめぐる世論の変化を確かめたうえで、比喩はなお推論に影響すると反論していて(抄録による)、決着はついていない。
時間を金額に換算する語りはどうか。DeVoe と House が2012年に、自分の収入を時給に換算させると、快い音楽を聴く時間の楽しさが下がる、という実験を報告した。ところが、Connors らが2016年に、事前登録で検出力を高めた追試を2回行い、元のパターンを再現できなかった(抄録による)。「時間は金だ」の語りが余暇を蝕む、という話は、語りとしては魅力的だが、証拠としては心もとない。
数字を見せる側の研究もある。ジョーダン・エトキンが2016年に発表した研究では、歩数を数える歩数計を着けた人は、歩くことの楽しさが下がった(4.82対5.33)。ただし、塗り絵を使った実験1は、単独では有意に届かず(p=.062)、読書を最初から「仕事」と枠づけた場合には、計測の悪影響は出ていない。また、この研究には、公刊された独立の追試が見つかっていない。
最大化と満足化の研究も、関連する。バリー・シュワルツらが2002年に、7つの標本(合計1,747人)で、「最善を探し続ける人」ほど幸福度が低く、後悔が強い、と報告した。幸福を測った6つの標本をまとめると、最大化と幸福の相関はマイナス0.25で、最大化と後悔の相関は0.52だった。標本ごとに見ると、幸福との相関はマイナス0.10からマイナス0.34まで揺れる。Diab らの新しい尺度では、人生満足とは相関しなかった。Roets らの研究では、中国では最大化と幸福が無関係だった。「最適化を目指すと不幸になる」という話は、尺度と文化によって、成り立ったり成り立たなかったりする。
要するに、「効率化の語彙が暮らしを窮屈にする」という私の感覚を、強く支える証拠は、今のところない。しかし、否定する証拠も強くはない。感覚は感覚のまま残る。
実際に効く工夫は、たいてい地味だ
比喩を外して、実際にやっていて助かっている工夫だけを書き出してみると、驚くほど地味なものばかりが残った。
葉物野菜のような傷みやすいものは、目線の高さの取り出しやすい場所に置く。これだけで、存在を忘れて腐らせる頻度がかなり減った。
休みの日に、野菜を切っておく・肉に下味をつけておくといった下ごしらえを少しだけやっておくと、平日の負荷が下がる。目新しい発見ではないが、効果は体感できる。
疲れて何も考えたくない日のために、「これだけは必ず作れる」という一品を、あらかじめ決めておく。冷凍ご飯と納豆でも、レトルトでもいい。選ぶという行為そのものを省略できるだけで、案外助かる。
週の終わりに、残っている食材をまとめて片付ける日を作る。名前をつけるなら「在庫一掃スープ」くらいで十分で、それ以上仰々しくする必要はない。
並べてみると、これは目新しい「戦略」ではなく、昔から言われてきた家事の工夫とほとんど変わらない。サプライチェーンという言葉を持ち込まなくても、誰かがすでに同じことを、もっと簡単な言葉で言っていたはずだ。
この四つの工夫は、私の体験であって、実証ではない。それぞれが、統計や研究とどう重なるのかを、確かめておく。
傷みやすいものを、先に使う
環境省の推計では、2024年度の食品ロスは461万トンで、そのうち家庭系が224万トンだった。家庭系の内訳は、まだ食べられるのに未開封のまま捨てた直接廃棄が96万トン(43パーセント)、食べ残しが93万トン(41パーセント)、皮を厚くむきすぎるなどの過剰除去が35万トン(16パーセント)である。皿の上に残る量より、冷蔵庫に入ったまま食べずに終わる量のほうが多い。
消費者庁の令和6年度の意識調査(15歳以上5,000人、インターネット調査)によれば、未開封の食材を捨てた理由は、「消費期限が切れた」が29.3パーセント、「保存を忘れて傷んだ」が29.0パーセントで、ほぼ並ぶ。捨てがちな食品は野菜類が36.9パーセントで最多、肉類は5.2パーセント、卵は2.9パーセントだった。野菜類に次ぐのは、日配品の10.5パーセント、総菜類の8.9パーセント、果物類の8.2パーセント、魚介類の7.3パーセントである。食べ残しを捨てた理由の最多も、「保存を忘れて傷んだ」の24.2パーセントで、「保存方法が不適切で傷んだ」が18.9パーセント、「作りすぎ」が15.1パーセントと続く。冷蔵庫の中身や期限を日頃から確認する人は、33.2パーセントにとどまる。英国のWRAPの2022年版の報告書でも、購入した生鮮野菜の約40パーセント、生鮮果物の43パーセントが廃棄になっていた(皮などの食べられない部分を含む重さである)。乳製品や卵や主食は5〜8パーセントだ。傷みやすいものほど多く捨てられている、という点までは、数字が示している。先に使えば減るかどうかは、この数字からは言えない。理由の内訳は、使い切れなかったものが39パーセント、作りすぎが25パーセント、好みや食べられないという判断が22パーセントで、英国の家庭の食品・飲料の廃棄は年600万トン(1人あたり88キログラム)、うち食べられる部分が440万トン(73パーセント)だった。この廃棄理由は食品日記にもとづくもので、WRAP自身が、日記は過少申告になりうるので年ごとの比較には向かないと書いている。
日本の家庭系の食品ロスは、2012年度の312万トンから、2024年度の224万トンまで減った。2000年度の433万トンに対する削減率は48.3パーセントで、2030年度までに半減(216万トン)という目標に近づいている。減ったとはいえ、冷蔵庫の中で期限を迎えるものはなくなっていない。消費者庁の調査では、食べられる食品を捨てることが「頻繁にある(週に数回)」人が2.3パーセント、「時々ある(月に数回)」が17.1パーセント、「あまりない」が55.4パーセントだった。賞味期限と消費期限の違いを「よく」または「ある程度」理解している人は、合わせて75.2パーセントである。一方、買うときは、回答者全体の46.3パーセントが、消費の予定に関係なくなるべく期限の長い商品を選び、予定が近いなら期限の短い商品を選ぶ人は26.6パーセントだった。知っていることと、冷蔵庫の中で起きることは、同じではない。
では、「目線の高さに置く」ことが効くのか。見える場所に置くと使われる、と直接示した査読つきの実験は、今回の調査では確認できなかった。近い研究として、「週に1回、残り食材だけで1食つくる」ことを求めた無作為化試験では、自己申告で、対照群より27〜33パーセント少なくなった。一方で、食材を目立たせる道具(かご、クリップ、ホワイトボード)には、追加の効果がなかった(抄録による。自己申告である)。効いたのは、見えるようにしたことではなく、使い切る日を作ったことだったようだ。私の「目線の高さ」は、体験としては確かでも、研究の側からは、まだ裏づけがない。
休みの日の下ごしらえと、作り置き
下ごしらえは、作り置きと隣り合わせだ。保存の安全について、厚生労働省は、冷蔵庫に入れるのは7割程度に、庫内は10℃以下に、加熱は中心部75℃で1分以上、温めなおしは75℃以上、と案内している。7割の理由は、案内には書かれていない。
カレーやシチューの作り置きで気をつけたいのは、ウェルシュ菌である。農林水産省の説明によれば、この菌の芽胞は通常の加熱では死なないので、まず増やさないことが重要とされ、浅い容器に小分けして素早く冷やすよう案内されている。そのうえで、使う前には十分に再加熱することも勧められている。農林水産省の消費者向けのページ(日本冷凍食品協会の解説を引いたもの)は、家庭で凍らせた食品を2〜3週間以内に使い切るよう案内している。理由は、緩慢な凍結で組織が傷み、品質の低下が早く進むためとされている。民間の解説には「下味冷凍は1か月」と書くものが多い。「作り置きは何日」という公的な保存日数は、今回の調査では見当たらなかった。厚生労働省のリーフレットは、日数の代わりに、時間が経ちすぎたものや、少しでも怪しいと思ったものは思い切って捨てる、と書いている。
「これだけは作れる」一品を決めておく
日本政策金融公庫が2022年1月に行った、2,000人への調査では、食に関する家事のうち、最も簡便化したい工程は「献立の考案」で29.4パーセントだった。調理の19.8パーセントを上回る。作ることより、決めることのほうが重い。
この「決める」重さを、社会学者のアリソン・ダミンジャーが2019年に分析している。35組のカップル、70人へのインタビューから、家事の認知労働を、必要になりそうなことを予期する、選択肢を洗い出す、決める、その後を見届ける、の4つに分けた。決める部分は男女でほぼ同等で、女性に偏っていたのは、予期と見届けだった(抄録による)。「何を作るか」という一言の中に、気づくこと、候補を出すこと、決めること、見届けることが入っている。「これだけは作れる」一品は、そのうち「決める」を、前もって済ませておく工夫にあたる。
総務省の令和3年の社会生活基本調査で、「食事の管理」(料理、食器洗い等)にかける1日の平均時間は、男性が14分、女性が1時間18分だった(週全体の平均)。家事の中で最も男女差が大きく、男女とも家事時間に占める割合が最大である(男性32.6パーセント、女性46.2パーセント)。総務省統計局の「統計Today」によれば、6歳未満の子がいる夫婦では、妻の家事時間(家事のみ)は共働きで2時間37分、夫が有業で妻が無業の世帯で3時間44分だった。前の段落のダミンジャーの結果に照らしても、食事の管理にかかる時間の偏りが、どの部分から生じているのかは、この統計からは分からない。
週末に在庫を一掃する
週末に在庫を一掃する日は、冷蔵庫の中を一度すべて見る日でもある。その庫内について、確かめておく。厚生労働省は、庫内を10℃以下に保つよう案内している。実際の庫内は、案内ほど一様ではない。ポーランドの家庭の冷蔵庫77台を24時間記録した研究(2023年、抄録による)では、平均の作動温度が5℃を超えていたものが49.35パーセント、10℃を超えていたものが3.9パーセントあった。欧州5か国の高リスク世帯の冷蔵庫を約2週間記録した研究(2019年、抄録による)では、収納の仕方などによる平均の庫内温度の差は見られず、消費者の習慣との関連が見られた。この研究では、53台のうち3台でリステリアが検出されている。
冷蔵庫の中身の置き方と温度については、まず省エネルギーセンターの実測がある。物を詰め込んだ場合と半分にした場合の差は、年43.84キロワット時、約1,180円だった。これは半分との比較で、7割収納との比較ではない。庫内の温度も、場所によって違う。国内5家庭の小規模な実測では、扉側で10℃を超える例があった(標本が小さい)。野菜室に入れれば長持ちする、とも限らない。米国農務省のハンドブック66では、低温障害の限界の温度が、キュウリとナスで7℃、バナナで11.5〜13℃、サツマイモで13℃とされている。夏野菜は、冷やしすぎると傷む。
知っているだけで、食品ロスは減るのか
食品ロスを減らす介入の研究を見ると、「知らせる」だけでは動かないことがわかる。デンマークの1,062人への調査(Stancu ら、2016年、抄録による)は、食品廃棄の主な要因が、知覚された行動統制と、買い物や残り物の再利用についての習慣だったと報告する。計画の習慣は、間接的に寄与していた。道徳的な規範は、意図の側では有意な寄与をしなかった。
環境・家計への影響を書いたリーフレットを2種類配布した研究(Recycling、2018年、抄録による)では、路上で回収された回避可能な食品廃棄の量と構成に、有意な変化がなかった。消費段階の介入を迅速にレビューした Reynolds らの2019年の論文(抄録による)は、皿のサイズを変えると外食の環境で最大57パーセント減、学校の栄養指針の変更で野菜の残菜が最大28パーセント減、情報キャンペーンは小さな標本で最大28パーセント減と整理している。16件の介入前後の比較研究を調べた2024年の系統レビューは、長期の証拠が乏しいと結論している。減らすことは可能でも、続くかどうかは、まだよくわかっていない。
献立計画や買い物リストの効果を、単独で検証した無作為化試験は、今回の調査では見つからなかった。「計画すれば減る」は、もっともらしい。なお、Stancu らの調査では、計画の習慣が間接的に寄与していた。
比喩が余計にしていたもの
ビジネス用語で語り直すことの弊害も、書いていて見えてきた。「認知リソースの最小化」と言ってしまうと、献立に悩む時間そのものが、無駄な負債のように扱われてしまう。でも、今日は何を食べようかと考える時間には、単純な楽しみも含まれていたはずだ。それを常に「削減すべきコスト」として扱う書き方は、静かに窮屈だった。
ただ、先ほどの公庫の調査では、献立の考案を最も簡便化したいと答えた人が、29.4パーセントいた。考えることをいちばん減らしたい人が、3割近くいる。「削減すべきコスト」という書き方が窮屈なのは、あくまで、そうでない側にいる私の感覚だ。
効率化の語彙は、生活のあらゆる場面に「最適化すべき対象」というラベルを貼ってしまうことがある、と私は感じている。その視線に慣れすぎると、何も考えずにぼんやり冷蔵庫を眺める時間まで、何かの無駄であるかのように感じられてくる。それは本当に望んでいたことだったのだろうか。
冷蔵庫の中身とどう付き合うかという話は、傷みやすいものを先に使う、少し先回りして準備しておく、疲れた日のための逃げ道を用意しておく、というだけの話だ。それをわざわざ大仰な言葉で覆う必要は、なかったのかもしれない。ただ、台所の管理が一世紀前から言葉にされてきたことは確かでも、それが家事の時間を減らしたか、言葉が暮らしの感じ方を変えるかについては、確かなことは多くない。確かなのは、冷蔵庫の奥でしなびた野菜が、今日も一つ見つかるかもしれない、ということくらいである。
出典
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