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格言「早寝早起き」を検証した論文に、徳の証拠はなかった

格言「早寝早起き」を検証した論文に、徳の証拠はなかった

65歳以上1,229人を調べた1998年の論文では、豊かだったのはフクロウ型で、ヒバリ型に得の兆候はなかった。体内時計の遺伝、夜型の頭の良さ、始業時間の実験、ソーシャル・ジェットラグを、原典をたどって確かめた。

TOMOAKI··仕事

格言を、実際に確かめた人がいた

早起きは三文の徳、という。ベンジャミン・フランクリンの「早寝早起きは人を健康に、豊かに、賢くする」という格言も、同じ系統の言い回しだ。朝が得意な人は規律があり、夜が得意な人は自己管理が甘い。そう言われ続けるうちに、この前提は、証明の必要なものというより、空気のようなものになった。

空気を疑うには、まず、誰かが実際に測ったのかを見ればいい。測った人はいた。1998年に、イギリスの研究者ゲイルとマーティンが、BMJ(英国医師会雑誌)に、「ヒバリとフクロウ、健康、富、知恵」という論文を出している。フランクリンの格言を、そのまま検証対象にした論文だ。

対象は、1973〜74年の全国調査に参加した65歳以上の1,229人。就寝が23時前で起床が8時前の人を「ヒバリ」、就寝が23時以降で起床が8時以降の人を「フクロウ」と呼んだ。ヒバリは356人(29%)、フクロウは318人(26%)。そのうえで、所得、自動車の所有、認知機能、健康状態を比べた。

結果は、格言の期待と逆向きだった。ヒバリのほうが豊かだという兆候はなく、平均所得が最も高かったのはフクロウで、自動車を持つ割合もフクロウのほうが高かった。認知機能と健康状態でも、ヒバリが優れるという証拠は出なかった。著者らの結論は、フランクリンの主張は支持されない、というものだ。23年の追跡では、ヒバリもフクロウも、それ以外の人より死亡リスクがやや低かったが、これは床にいる時間が短いことで説明された。床にいる時間が9時間の人を基準にすると、12時間以上の人の相対リスクは1.7、8時間の人は0.8だった。

この論文には、もちろん限りがある。対象は高齢者で、データは1970年代のもの、そして朝型か夜型かは質問票ではなく、就寝と起床の時刻という行動で分けている。これ一本で「夜型のほうが得をする」とは言えない。ただ、「朝型は成功する」という通説の側に、これと同じ水準で測った証拠を持ち出せる人は、あまり多くない。たとえば「経営者は早起き」という話の出どころとしてよく引かれるのは、アメリカの雑誌が行った、急成長企業のCEO 1,086人のうち64%が6時までに起きる、という自己申告の調査だ。これは報道による二次情報で、自己申告の起床時刻にすぎない。無作為に選ばれた集団でもなく、早起きが成功を生んだことを示すものではない。

では、体内時計の位置は、生まれつきなのか、意志で動かせるのか。夜型は頭がいいのか、悪いのか。そもそも「社会の時間割に合わせる」とは、誰にとって、どれくらいの負担なのか。この三つの問いを、遺伝、認知能力と成績、ソーシャル・ジェットラグの順にたどり、最後に、朝型が健康に良いのかを見る。数字は原典に当たり直して、書き換えたものが多い。

遺伝率の数字が、実際に語っていること

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画『燻る灯火のマグダラのマリア』。蝋燭の灯りだけを頼りに、夜、物思いにふける人物を描いている。

2019年、遺伝学者サミュエル・ジョーンズらは、イギリスの大規模データUK Biobankと、遺伝子検査サービス23andMeのデータを合わせて、朝型・夜型の傾向(クロノタイプ)に関わる遺伝子を探した。標本は合計697,828人(UK Biobank 449,734人、23andMe 248,098人)。Nature Communicationsに発表されたこの研究は、関連する遺伝子座を351か所見つけた、と書かれることが多い。

351という数字は正しい。それは「独立した遺伝子座で、関連の強さがある基準を満たしたもの」を数えた値だ。論文が並べ替え検定で求めた、より厳しい基準を使うと、数は258になる。見つかったのは「朝型を決める351の遺伝子」ではなく、「朝型・夜型と統計的に関連する351の領域」だった。

数の多さより目を引くのは、一つ一つの効果の小ささだ。朝型に関連する変異を292個集めた「朝型アレルスコア」で、スコアが上位5%の人と下位5%の人を比べても、一日のうちでいちばん動かない5時間の時刻の差は、約25分にすぎなかった。このスコアが拾えるのは遺伝の一部にとどまる。ゲノム全体のありふれた変異が説明するクロノタイプのばらつきも、13.7%だった。

双子研究の遺伝率は、これよりずっと大きい。以前の版は「およそ40〜60%」と書いていたが、確かめられた範囲の値は、もう少し狭い。オランダの双子家系の研究では、広義の遺伝率が44%と47%(世代別)。フィンランドの成人双子8,753組の研究では49.7%。イギリスの若年成人の双子では、優性の遺伝要因が52%。上限の60%に当たる一次の数字は、見つからなかった。質問票の種類によっても、遺伝率は動く。ある家系研究では、朝型・夜型質問票で0.37、ミュンヘン式の質問票で0.32、自分を朝型と夜型のどちらと思うかを一つ聞くだけの質問で0.28だった。

もう一つ、意外な内訳がある。フィンランドの研究が出した49.7%のうち、遺伝子の効果を足し算できる加算的な部分は11.7%で、大半の38.0%は、同じ遺伝子座の二つの対立遺伝子が互いに隠したり打ち消したりする、足し算にならない優性の効果だった。ゲノム全体の13.7%と、足し算の11.7%が近い値になるのは、偶然かもしれない。推定の方法が違うので、同じものと見なすことはできない。

遺伝率という言葉は、変えられないという意味に聞こえる。だが、定義は違う。ある集団の、ある環境の中で、形質のばらつきのうち、遺伝子の違いで説明できる割合のことだ。教室にたとえると分かりやすい。全員が同じ教室で同じ先生の同じ授業を受ければ、成績の差からは「教室の違い」が消えて、残る個人差の中で遺伝の寄与が大きく見える。環境をそろえるほど、遺伝率は高く出る。逆に、環境の差が大きい集団では、同じ形質の遺伝率が下がる。

遺伝率の数字には、環境が紛れ込むこともある。家族は同じ地区に住むので、地区の違いが、家族の似通いとして、遺伝の分に混ざりうる。ブラジルの農村と市街地を含むバエペンジの家系研究では、朝型度の質問票の得点が、農村で70.2、市街地で62.6と違っていた。居住区域を統計的にそろえると、遺伝率の推定値は0.48から0.38に下がった。遺伝率という一つの数字の中に、環境の差が混ざっていた可能性を示している。

では、体内時計の位相は、実際に動くのか。2013年に、ライトらがCurrent Biologyに発表した小さな実験がある。参加者は8人。まず約1週間、電灯のある普段の生活をして、そのあと約1週間、日光と焚き火の明かりだけで暮らすキャンプをした。結果、メラトニン(体内時計の指標になるホルモン)の分泌の開始、中点、終了のすべてが、約2時間早まった。睡眠時間は6.7時間から6.8時間で、ほぼ同じだった。睡眠の量は変わらないまま、位相だけが動いたことになる。遅いクロノタイプの人ほど大きく動き、普段の睡眠の中点が1時間遅いごとに、メラトニンの開始が0.83時間早まった。

キャンプの前後の光を数えると、面白い数字が出る。起きている間の平均照度は、普段の週が979ルクス、キャンプの週が4,487ルクスと4倍以上。ところが、日没から就寝までの明るさは、普段の週のほうが明るかった(21ルクス対8ルクス)。夜が遅くなる原因は、昼の光の不足だけでなく、夜の人工光の多さにもあると、著者らは見ている。同じグループの後続研究は、週末だけのキャンプでも、メラトニンの開始が約1.4時間早まったと報告している。1週間分の変化の約7割に当たる。行動の指標どうしで並べると、遺伝スコアの両端の差25分は、キャンプで睡眠の開始と起床が動いた約1.2時間の、3分の1ほどにあたる。集団の差と個人内の変化を比べているので、目安にとどまる。人数が少ない実験でもあり、断定はしない。

年齢でも位相は動く。大規模な質問票データの横断分析では、クロノタイプは10歳ごろから遅くなり、20歳前後でいちばん遅くなり、その後は一生を通じて早まっていくとされる。20歳の夜型と、50代の朝型が、同じ遺伝子を持っていることはありうる。

以前の版は、位相のずれを根性で巻き戻せると考えるのは、身長を根性で伸ばすのに近い、と書いていた。位相のほうは、1週間のキャンプで2時間動いた。動かしたのは根性ではなく光だが、光の浴び方は選べる。動かせないものの例には、向かない比喩だった。

極端な型の人は確かにいて、そこには単純な遺伝子が関わっている。睡眠と体温とメラトニンのリズムが約4時間前進する家族性前進性睡眠相症候群では、PER2という時計遺伝子の変異が、ある家系で報告された。遅い側にも、CRY1という遺伝子の変異で、体内時計の周期が24.5時間(対照は24.2時間)になる例がある。時計遺伝子の仲間のPER3にも、家系で睡眠相の前進と結びつく変異が見つかっている。その変異をジョーンズらが一般集団で調べると、睡眠のタイミングを前進させる効果は約8分だった。家系で報告された平均の4.2時間とは、桁が違う。稀で大きな変異と、ありふれた小さな変異は、別の話として読む必要がある。

夜型は賢い、という話の目盛り

遺伝の話の次は、頭の良さの話だ。よく引かれるのは、2011年のメタ分析(プレッケルら)の数字だ。夜型性と認知能力の相関が0.08、夜型性と学業成績が−0.14、朝型性と認知能力が−0.04、朝型性と学業成績が0.16。原典を確かめると、数字も符号も合っていた。

ただし、読み方に落とし穴がある。この四つの数字は、同じ人たちを夜型と朝型の両面から測ったものではない。夜型性は、夜型を独立に測れる専用の尺度を使った研究だけでまとめられ、朝型性は、朝型・夜型の一次元の尺度を混ぜた研究でまとめられた。研究の数も、夜型性と認知能力が7件で1,519人、朝型性と認知能力が11件で2,177人、朝型性と学業成績が13件で3,220人、夜型性と学業成績が6件で700人と、別々だった。

相関が0.08だと、説明できるばらつきは約0.6%にすぎない。夜型性と認知能力の結果は、「未発表の否定的な結果が7件あれば消える」程度の頑健さしかなく、著者自身が、慎重に解釈すべきだと書いている。しかも2021年に、研究を30件、11,160人まで増やした更新版のメタ分析が出た。そこでは、朝型性と知能の相関は全体でほぼゼロ(−0.008)だったが、標本の平均年齢が上がるほど値は下がり、若年成人期より後では有意な負の相関になった。夜型性と知能は0.056で、モデルによっては有意にならない。向きは年齢で変わり、全体の値はほぼゼロ。夜型は賢い、という話は、定説と呼べるほどの重みを持っていなかった。

それでも、個別の研究が無意味になるわけではない。ロバーツとキロネンは、米空軍の新兵420人を、基礎訓練の6週目に調べた。この時期は睡眠も食事も生活の時間割もそろっているので、位相のずれの影響を除きやすいことが、標本の売りだった。作業記憶などの認知検査は、全員が午前8時から12時の間に受けた。夜型にとって不利なはずの時間だが、夜型寄りの人のほうが作業記憶の得点が高く、相関は0.14だった。検査ごとに事情が違う点には注意がいる。職業適性検査(ASVAB)は新兵の記録から取った得点で、受けた時刻が統制されていない。不利な時間帯でも夜型が上回った、という言い方が当てはまるのは、午前に受けた検査に限られる。相関も0.14と、小さな値だ。

2014年のピファーらの研究は、シカゴ大学の経営大学院の修士学生を調べた。回答者201人のうち、夜型か朝型かの単一の質問に答えられたのは170人(夜型116人、朝型54人)。入学試験GMATの平均は702.6点で、夜型と朝型の差は回帰係数で約14点だった。数字の大きさを比べるなら、同じ分析での男女差は約23点で、そちらのほうが大きい。学部と大学院の成績、睡眠時間には、差がなかった。

逆の向きの結果もある。ノヴァックらの2018年の実験は、36人に意味の類推課題を解かせて、時間帯とクロノタイプの影響を調べた。自分に不向きな時間帯でも、朝型は同じ正確さで、より速く、より多くの認知資源(瞳孔の反応で測る)を使わずに解けた。夜型の不利を示す結果として読めるが、抄録によれば、全体としては朝型のほうが夜型を上回ったとも報告されている。夜型は賢い、という流れとは、逆向きの結果も含んでいる。

この領域で動かしにくいのは、「同調効果」という考え方だ。自分のリズムに合った時間帯のほうが、成績がよくなる、というもの。しかし2025年に出た65研究の系統的レビューによると、18〜45歳の64研究のうち、同調効果が見つかったのは29件、45%だった。高齢者では12件のうち10件で見つかっている。若い人の頭の働きは、思われているほど、時刻に左右されないのかもしれない。

まとめると、こうなる。夜型が賢いとも、朝型が賢いとも、効果の大きさから言うのはむずかしい。差があるとしても、小さく、研究や年齢によって向きが変わる。「朝型は頭がいい」という通説を、積極的に支える数字は、ここまでの研究では見つからなかった。小さな実験が一つ、全体では朝型が上回ったと報告しているだけだ。

朝型の成績が上がる理由は、頭の良さ以外にある

認知能力に差がないなら、学業成績の差は何から来るのか。朝型性と学業成績の相関は0.16、夜型性は−0.14。数字は小さい。朝型性のほうは13件、3,220人の結果で頑健だが、夜型性のほうは6件、700人と小さな集まりだ。向きはそろっている。

説明は大きく二つある。一つは、夜型の人は勤勉性が低く、成績が下がる、という見方。もう一つは、学校の時間割が朝型に合っていて、夜型は慢性的な睡眠不足の中で授業を受けている、という見方だ。ドイツの高校生272人を調べた2013年の研究は、前者を検討した。認知能力、勤勉性、動機づけを統計的に取り除いても、夜型性は成績を下げた(総合の成績に対する標準化係数が−0.20)。ただし、アンケートは午前10時から12時に集めたので、夜型が最も調子の出ない時間帯だった。著者自身が、同調効果を排除できないと書いている。勤勉性だけでは説明できないが、時間割の問題だけとも言い切れない。

数字の取り方でも、見え方は変わる。夜型性と成績の関連を31研究、27,309人でまとめたメタ分析(トネッティら、2015年)は、効果量を0.145と報告した。成績を自己申告した研究では0.171、客観的な指標を使った研究では0.093と、ほぼ半分になった。同じ物差しでそろえた比較ではないが、自己申告という物差しでは、朝型の成績優位が少し大きく見えていたのかもしれない。

時間割のほうを動かす実験もある。2016年から、シアトルの学区は、中等学校の始業を7時50分から8時45分へ、55分遅くした。2つの高校で、始業前と後の別々の生徒に、2週間、腕時計型の活動量計を着けさせて比べた研究が、2018年に出ている(人数は2016年94人、2017年84人)。対照の学校はない。始業を55分遅くしたのに、睡眠は中央値で34分しか増えなかった(6時間50分から7時間24分)。就寝は有意には遅くならず、起床だけが44分遅くなった。理科の授業の成績は、中央値で4.5%上がった。

この数字は、二重に読める。ひとつは、睡眠が足りなかった生徒が、時間割の変更で少し楽になった、という読み。もうひとつは、55分遅くしても推奨される8〜10時間に届かない、という読み。いつ眠くなるかを体内時計が決めているのだとすれば、就寝が動かなかったことは説明がつく。朝のほうは、社会が決めている。そして、成績は教師がつけた評価で、前後比較には限りがある。出席の改善も、一部の学校にとどまった。

ミネソタの5つの高校を追跡した研究は、始業を50分と65分遅らせた2校と、変えなかった3校を比べた。差の差を取ると、遅らせた学校の生徒は、学校のある夜に追加で41〜43分多く眠った。休日の夜の睡眠は、1年目で24分(有意ではない)、2年目で34分短くなった。平日に取りこぼしていた睡眠を、休日に取り戻す必要が、少し減ったのだろう。続報では、遅らせた学校で遅刻が3回、欠席が1回少なく、成績評価平均(GPA)が0.07〜0.17高い、という結果も出ている。欠席とGPAの差は、2年目になって初めて現れた。一方で、始業を遅らせても成績が上がらなかった研究もある(ミネアポリスの別の分析などで、経済学者のレビューによる紹介)。時間割を動かせば必ず解決する、という話ではない。

ソーシャル・ジェットラグは、毎朝の時差ボケではなかった

ここまで出てきた「時間割とのずれ」に名前をつけたのが、ソーシャル・ジェットラグだ。以前の版は、体内時計と社会の時間の間のズレ、と説明し、朝型の体内時計は9時始業の標準的なスケジュールとほぼ重なるが、夜型は毎朝、時差ボケに近い状態を強いられる、と書いた。原典に当たると、この説明は二つの点で正確ではなかった。

用語を名付けたのは、ミュンヘンのヴィットマンらが2006年に発表した論文だ。標本は501人のボランティアで、質問票の結果の相関を調べた。後の総説によれば、ここで言うソーシャル・ジェットラグは、平日と休日の睡眠の中点(眠った時間の真ん中)のずれの大きさを指す。名前の由来は、研究者たちが長期の睡眠日誌を見て、まるで金曜の夜に西へ数時間分飛び、月曜の朝に戻ってくるように見えたことだ。週の単位で起きる現象で、毎朝ではない。

もう一つの点は、朝型についての記述だ。ソーシャル・ジェットラグを提唱した研究者自身が、2019年の総説に、非常に早いクロノタイプを除くほとんどの人が、平日に睡眠負債を溜める、と書いている。大半の人の体内時計は、アラームなしに平日の朝に起きるには遅すぎる、という言い方もしている。同じ著者の2023年の記事は、ミュンヘン式質問票の利用者の80%超が、平日にアラーム時計を使っていると述べる。朝型の体内時計が9時始業と重なる、という記述は、非常に早い型を除けば、朝型の人にも当てはまらなかった。夜型だけが特別な苦行をしているのではなく、多くの人が朝に向かって自分を引っ張っている。夜型は、その程度が大きい側にいるだけだ。

日本の生活時間のデータを見ても、似た姿が出る。NHKの国民生活時間調査(2025年)を、公表されたCSVから集計すると、事務職・技術職の睡眠時間は、平日が6時間44分、日曜が8時間4分だった。1時間20分の差になる。これは睡眠時間の差で、睡眠の中点のずれそのものではない。昼寝や仮眠も含まれている。事務職・技術職の平日は、通勤のピークが7時30分から8時にあり、8時30分には53%の人が、もう仕事をしている。9時始業という言葉の通りには、日本の事務職は動いていない。ただし、平日と日曜は別の回答者の集計なので、同じ人の差ではなく、集団の平均の差だ。

日本人で個人のずれを測った研究もある。ウェブ調査の3,708人を解析した2019年の研究(Komadaら)は、のちの岡島らの論文で、40代の昼間労働者の35%がソーシャル・ジェットラグ1時間以上、と引用されている。ウェブ調査のパネルという、代表性のない標本での値だ。

この概念を提唱した側の自己批判も、数字と同じくらい示唆的だ。レネベルクらは2019年の総説で、ソーシャル・ジェットラグの元の定義は単純すぎるかもしれない、と書いている。睡眠の位相をずらすと、メラトニンやコルチゾールのリズムも約2日で約45分動く、という研究が蓄積しているので、「生物学的な時間と社会の時間のずれ」という図式は、そのままでは成り立たない可能性がある。測っているものは、時差ボケというより、交代勤務に近い現象なのだろう、とも言う。それでも著者らは、この指標が負荷の大きさのよい近似になりうるとも書いている。健康との関連は多くが横断研究で、因果は分からない。「夜型であること自体より、社会の時間的制約との衝突が、少なくとも一部は関連を説明する」というのは、著者らの考えで、実証された結論としては書かれていない。

効果の大きさも、小さい。肥満との関連を43研究、231,648人でまとめた2024年のメタ分析で、ソーシャル・ジェットラグとBMIの相関は0.12、説明できるばらつきは約1.4%だった。日本の勤労者4,505人を調べた研究では、眠気、抑うつ、仕事のパフォーマンスへの影響は、ソーシャル・ジェットラグより、睡眠負債のほうが大きかった。製造業の980人の研究では、ソーシャル・ジェットラグと生産性低下の関連が、勤務間インターバルと不眠を調整すると消えた。会社員8,155人の研究では、夜型の生産性損失は、睡眠障害を介した間接的なもので、睡眠の中点が1時間遅いごとにプレゼンティーズムの損失が0.27ポイント上がる程度(平均の損失は5.97%)だった。

朝型が得をして見えるのは、朝型という性質のおかげというより、社会の時間割にたまたま合っていたからだ。そういう説明がありうる。ここまでの数字は、この説明を強く支えるものではないが、退けるものでもない。時間割と体内時計のずれは確かに測れるが、大人のBMIや生産性との関連は小さい。学業成績では、始業を遅らせた学校で、生徒全体の睡眠と成績が小さく改善した研究がある。ただ、朝型と夜型の差が縮んだかどうかまでは調べられていない。朝型の優位そのものも小さいので、小さなずれで説明しきれるかどうかは、この数字からは決まらない。

朝型は、本当に健康なのか

最後に、時間割とは別に、早い時刻そのものの効果を示すように見える研究を見ておく。朝型の人は、うつになりにくい、という話だ。遺伝子を手がかりに因果を探るメンデルランダム化という方法で、2021年にDaghlasらがJAMA Psychiatryに発表した研究は、朝型の遺伝的傾向で睡眠の中点が1時間早いと、大うつ病のオッズ比が0.77(95%信頼区間0.63〜0.94)、つまり23%低い、と報告した。病院の請求コードで定義したうつでは0.64(0.39〜1.06)と、向きは同じだが信頼区間が広く、有意ではなかった。

この「1時間」にも注意がいる。さきほど見たとおり、この種の遺伝的な指標で動く範囲は、上位5%と下位5%の平均の差で、25分ほどだった。1時間早い、という換算は、観察された範囲の外へ引き伸ばした値になる。同じジョーンズらの解析は、朝型の遺伝的傾向が、精神的健康の改善と因果的に関連する一方、BMIや2型糖尿病のリスクには影響しないとも報告している。アメリカの看護師の追跡研究(女性32,470人)では、中間型を基準にして、朝型の新規うつのハザード比は0.88(0.81〜0.96)と、効果は小さい。

この方法が時間割の説を覆すかというと、私は、そうは読めないと考えている。朝型の遺伝子がうつを減らす経路が、「早い時刻そのものの効果」なのか、「朝型に有利な社会の時間割との一致」なのかを、この方法は区別できない。これは私の推論で、論文の主張ではない。時間割との一致が理由かもしれない、という言い方は、この種の証拠が増えても、「かもしれない」の範囲にとどまる。

介入の研究では、どうか。夜型の若者を3週間で、実際に動かした試験がある。2019年の無作為化比較試験で、夜型の22人(介入群12人、対照群10人、平均21歳)に、起床を2〜3時間早める、朝に屋外光を浴びる、夜の光を控える、食事の時刻を固定するなどの指示を、3週間続けてもらった。休日の睡眠の中点は、介入群で2.57時間早まった。抑うつ・不安・ストレスの尺度の総得点は19.8から11.2に下がり、うつは5.5から2.3、ストレスは9.5から5.7になった。不安は変わらなかった。対照群に有意な変化はなく、点推定ではむしろ入眠と起床が約1.2時間遅れていた。

この研究は22人と小さく、尺度は自己申告で、介入後の追跡は、本文で見つからなかった。レネベルクらは総説の中で、介入をやめると元の遅い位相に戻る、と書いている。早起きを数か月続けた人の収入や健康が良くなった、という長期の研究は、私が探した範囲では見つからなかった。

三文の勘定を、もう一度やり直す

三文の徳、という言い方には、早く起きれば何かが手に入る、という計算が含まれている。この記事で見てきた数字を並べて、勘定をやり直してみる。

クロノタイプ(質問票で測る朝型・夜型の傾向)のばらつきのうち、遺伝子の差で説明できる分は、双子研究で5割前後、ゲノム全体で14%ほど。これは集団のばらつきの割合で、一人ひとりの中の割合ではない。遺伝スコアの上位と下位を並べても25分の差で、キャンプで睡眠の時刻が動いた量の3分の1ほど(集団の差と個人内の変化の比較なので、目安だ)。夜型が賢いという話も、朝型が賢いという話も、効果は小さく、研究や年齢によって向きが変わる。朝型の成績の優位は、自己申告だと大きく、客観的な指標だと半分になる。時間割を55分動かしても、睡眠は34分しか増えない。ソーシャル・ジェットラグは、毎朝の時差ボケではなく、週単位の現象で、効果は小さい。そして、格言を直接調べた論文では、豊かだったのはフクロウのほうだった。

差し引きの反対側にも、数字はある。朝型の遺伝的傾向は、睡眠の中点が1時間早い換算でうつのオッズ比が23%低いことと関連していた(25分しか動かない指標を引き伸ばした換算だ)。それが早い時刻そのものの効果なのか、時間割との一致なのかは、区別できなかった。早起きと光の習慣をまとめて3週間変えさせた小さな試験では、夜型の若者の抑うつやストレスの得点が下がった。ただ、22人で、追跡は見つからず、総説には、やめれば元に戻るとある。体質としての朝型と、行動としての早起きは、別々の問いになる。前者には関連が見え、後者にはまだ、短い試験しかない。

どれも、早起きが損だ、という証拠ではない。早起きを習慣にして、気持ちよく暮らしている人は、現にいる。ただ、早起きの徳として語られているものの多くが、体質、年齢、仕事の時間割、そして「測り方」の組み合わせでできている可能性は、数字の側から見えている。

早起きが得に見える理由として、体質、年齢、時間割、測り方のどれがどれだけ効いているのかは、まだ分かれていない。夜型の人が「朝が弱い」と言うとき、その「弱い」は、何と比べた弱さなのだろう。自分の体内時計の位置を、数字で測り直したことは、あるだろうか。

出典

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  • Preckel, F., Lipnevich, A. A., Schneider, S., & Roberts, R. D. (2011). "Chronotype, Cognitive Abilities, and Academic Achievement: A Meta-Analytic Investigation." Learning and Individual Differences, 21(5), 483–492.(全文で確認)
  • Ujma, P. P., & Scherrer, V. (2021). "Circadian Preference and Intelligence – An Updated Meta-Analysis." Chronobiology International, 38(8), 1215–1229.(抄録で確認)
  • Roberts, R. D., & Kyllonen, P. C. (1999). "Morningness–Eveningness and Intelligence: Early to Bed, Early to Rise Will Likely Make You Anything but Wise!" Personality and Individual Differences, 27(6), 1123–1133.(全文で確認)
  • Piffer, D., Ponzi, D., Sapienza, P., Zingales, L., & Maestripieri, D. (2014). "Morningness–Eveningness and Intelligence among High-Achieving US Students: Night Owls Have Higher GMAT Scores than Early Morning Types in a Top-Ranked MBA Program." Intelligence, 47, 107–112.(全文で確認)
  • Nowack, K., & Van Der Meer, E. (2018). "The Synchrony Effect Revisited: Chronotype, Time of Day and Cognitive Performance in a Semantic Analogy Task." Chronobiology International, 35(12), 1647–1662.(抄録のみ確認。効果量は未確認)
  • Chauhan, S., et al. (2025). "Chronotype and Synchrony Effects in Human Cognitive Performance: A Systematic Review." Chronobiology International, 42(4), 463–499.(抄録で確認)
  • Preckel, F., et al. (2013). "Morningness–Eveningness and Educational Outcomes: The Lark Has an Advantage over the Owl at High School." British Journal of Educational Psychology, 83(1), 114–134.(全文で確認)
  • Tonetti, L., Natale, V., & Randler, C. (2015). "Association between Circadian Preference and Academic Achievement: A Systematic Review and Meta-Analysis." Chronobiology International, 32(6), 792–801.(抄録で確認)
  • Dunster, G. P., et al. (2018). "Sleepmore in Seattle: Later School Start Times Are Associated with More Sleep and Better Performance in High School Students." Science Advances, 4(12), eaau6200.(全文で確認。対照校のない前後比較)
  • Widome, R., et al. (2020). "Association of Delaying School Start Time with Sleep Duration, Timing, and Quality among Adolescents." JAMA Pediatrics, 174(7), 697–704.(抄録で確認)
  • James, S., Erickson, D. J., Lammert, S. M., & Widome, R. (2023). "School Start Time Delays and High School Educational Outcomes: Evidence from the START/LEARN Study." Journal of Adolescence, 95(4), 751–763.(抄録で確認)
  • IZA World of Labor の解説記事 "The educational effects of school start times"(Carrell、Wahlstrom、Hinrichs、Edwards らの研究を紹介).(二次情報。ミネアポリスでの効果が小さい、または有意でなかった分析は、このレビューによる紹介で、原典は未確認)
  • Wittmann, M., Dinich, J., Merrow, M., & Roenneberg, T. (2006). "Social Jetlag: Misalignment of Biological and Social Time." Chronobiology International, 23(1–2), 497–509.(抄録で確認。式の記載は本文で未確認)
  • Arab, A., Karimi, E., Garaulet, M., & Scheer, F. A. J. L. (2024). "Social Jetlag and Obesity: A Systematic Review and Meta-Analysis." Obesity Reviews, 25(3), e13664.(抄録で確認)
  • Okajima, I., Komada, Y., Ito, W., & Inoue, Y. (2021). "Sleep Debt and Social Jetlag Associated with Sleepiness, Mood, and Work Performance among Workers in Japan." International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(6), 2908.(本文の主要部分で確認)
  • Komada, Y., Okajima, I., Kitamura, S., & Inoue, Y. (2019). "A Survey on Social Jetlag in Japan: A Nationwide, Cross-Sectional Internet Survey." Sleep and Biological Rhythms, 17(4), 417–422.(書誌のみ確認。本文の数値は Okajima ら (2021) の引用による二次情報)
  • Kageyama, M., Tatsumi, A., Fujino, Y., & Watai, I. (2022). 「製造業における社会的時差ボケとプレゼンティーズムの関連」. 『産業衛生学雑誌』, 64(1), 12–21.(英文抄録で確認)
  • Shimura, A., Yokoi, K., Sugiura, K., Higashi, S., & Inoue, T. (2022). "On Workdays, Earlier Sleep for Morningness and Later Wakeup for Eveningness Are Associated with Better Work Productivity." Sleep Medicine, 92, 73–80.(抄録で確認)
  • Daghlas, I., Lane, J. M., Saxena, R., & Vetter, C. (2021). "Genetically Proxied Diurnal Preference, Sleep Timing, and Risk of Major Depressive Disorder." JAMA Psychiatry, 78(8), 903–910.(抄録で確認)
  • Vetter, C., et al. (2018). "Prospective Study of Chronotype and Incident Depression among Middle- and Older-Aged Women in the Nurses' Health Study II." Journal of Psychiatric Research, 103, 156–160.(抄録で確認)
  • Facer-Childs, E. R., Middleton, B., Skene, D. J., & Bagshaw, A. P. (2019). "Resetting the Late Timing of 'Night Owls' Has a Positive Impact on Mental Health and Performance." Sleep Medicine, 60, 236–247.(著者原稿の本文で確認)
  • NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」2025年.(公表されているCSVから集計。標本は曜日ごとに別の回答者)
  • 「経営者は早起き」の例に挙げた調査: アメリカの雑誌 Inc. による CEO 1,086人(Inc. 5000 の企業)の自己申告調査。CNBC の記事(2022年8月18日)による二次情報で、原典は未見。
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