ficus.life/料理
目次▼
塩ひとつまみは、何グラムなのか

塩ひとつまみは、何グラムなのか

ひとつまみの実測は平均0.5グラム。濃口醤油16%は薄口の値だった。塩にまつわる数字を、実測、成分表、研究で確かめ直した。

TOMOAKI··料理

「塩ひとつまみ」というレシピの指示は、親切なようで、実は何も言っていない。指でつまむ量は、人によっても、その日の手の状態や塩の湿り具合によっても変わる。同じレシピで作ったはずなのに、今日はやけに塩辛い、ということが起きる原因の一つは、たぶんここにある。

では、「ひとつまみ」を数字に直すと、どのくらいなのか。数字に直したとして、その数字はどこまで信用できるのか。塩についてよく言われる数字を、原典に当たって確かめ直してみた。確かめられたものと、確かめられなかったものがある。この記事の以前の版には、確かめると誤りだった数字も混じっていた。それも含めて、順に書いていく。

ひとつまみを量った人たちがいる

女子栄養大学短期大学部の公式ページに、「塩少々、塩ひとつまみを、計ってみました」という実測の報告がある。短大の1年生35人と、調理学研究室の教員・スタッフ5人、合わせて40人が、精製塩を実際につまんで、重さを量った。査読を受けた論文ではなく、大学の公式ページの報告である。

結果は、少々(親指と人差し指でつまむ量)の平均が0.2グラム。最小は0.1グラム、最大は0.5グラムだった。ひとつまみ(親指・人差し指・中指でつまむ量)は、平均が0.5グラムで、最小0.2グラム、最大0.9グラム。つまり、同じ「ひとつまみ」でも、最小と最大では4倍以上の差があった。一人の人でも、少々を5回量ると、多くは0.1〜0.2グラムの幅でぶれ、最大で0.4グラムぶれた人もいた。

ドイツには、査読のある論文もある。ウィンクラーらが2012年に発表した「ひとつまみの塩は何グラムか」という論文(Ernährungs Umschau, 59巻6号)は、一般の消費者3群と、調理の専門職1群に、粒の細かさと流れやすさの違う3種類の塩でひとつまみを取ってもらった。抄録によれば、細かくて流れやすい岩塩のひとつまみは、すべての群で、粗い2種類より有意に軽かった。一般の消費者では、細かい塩で約0.3グラム、粗い塩で約0.4グラムだった。専門職の数値は、抄録からは分からない。全文は有料で、手が届かなかった。

少なくとも今回確認できた2つの実測は、どちらも、ひとつまみが1グラムよりずっと軽いことを示している。ただ、女子栄養大学の40人は、栄養を学ぶ学生が中心で、料理人と一般の人の差も扱っていない。ウィンクラーらの人数は、抄録からは分からない。料理人と一般人の差を数字で示した資料は、ウィンクラーらの全文を除いて、見当たらない。

小さじ1杯は、塩によって重さが違う

つまむ代わりに、計量スプーンを使えば解決するのか。ここにも落とし穴がある。同じ容量の小さじ1杯(5ミリリットル)でも、塩の種類で重さが違うのだ。

国立健康・栄養研究所が公表している、栄養摂取状況調査のための標準的な図版ツールに基づく重量目安表(2009年版)には、小さじ5ミリリットル、大さじ15ミリリットル、カップ200ミリリットルを基準にした調味料の重さが載っている。食塩は、小さじ1杯で6グラム、大さじ1杯で18グラム、カップ1杯で240グラム。カップ1杯が240グラムなら、1ミリリットルあたり1.2グラムの密度で、15ミリリットルは18グラムになり、大さじの値と合う(私の計算)。天然塩・並塩(粗塩)は、小さじ1杯が5グラム、大さじ1杯が15グラムだ。

この表には、一つ、気になる点もある。匙の値とカップの値が、同じ密度で割り切れない食品がある。精製塩はカップ180グラムなのに大さじ18グラム、並塩はカップ180グラムなのに大さじ15グラムだ。カップの密度から計算すると、大さじはどちらも13.5グラムになるはずである。匙とカップは別々に量られたのかもしれないが、表には書かれていない。そのため、本文では精製塩と並塩のカップの値は使わない。

外国の塩になると、差はさらに大きい。モートン社の公式ページの栄養表示では、食卓塩が小さじ4分の1杯で1.5グラム、つまり小さじ1杯で6.0グラム(私の計算)。同社のコーシャーソルト(粗粒)は、小さじ4分の1杯が1.2グラムで、小さじ1杯あたり4.8グラム(私の計算)。ダイヤモンドクリスタルのコーシャーソルトは、小さじ4分の1杯が0.7グラムとされ、小さじ1杯あたり2.8グラム(私の計算)になる。こちらは、メーカーの公式ページを取得できず、小売サイトに転記された表示で確認した二次情報だ。数字が正しければ、モートンの食卓塩の約47%、同じコーシャーソルトのモートンの約58%にすぎない。アメリカのレシピで「塩小さじ1」と書かれていたら、どの塩なのかで、実際の量は2倍以上違いうる。

この重さの違いの理由として、アメリカの料理雑誌(America's Test Kitchen)は、ダイヤモンドクリスタルの結晶は中空で不規則なフレーク状なので、同じ小さじに入る粒が少ない、と説明している。これも二次情報だ。計量スプーン自体の規格や許容差についても、家庭用の日本産業規格(JIS)は確認できなかった。

0.9パーセントは、体液と同じだからおいしいのか

点滴などで使われる生理食塩水は、0.9パーセントの塩化ナトリウム水溶液だ。人が「ちょうどいい」と感じる汁物の塩分濃度が、この数値に近い、という話はよく引かれる。体液と同じ濃度だから、体が自然においしいと感じるのだ、という説明もつく。この説明には、二つの点で疑問がある。

一つ目は、そもそも0.9パーセントが体液と同じではないことだ。リーらが2016年に発表した論文「0.9%生理食塩水は、正常でも生理的でもない」(Journal of Zhejiang University Science B, 17巻3号)によれば、0.9パーセントの生理食塩水は、ナトリウムもクロールも154ミリモル/リットルだ。ヒトの血清は、ナトリウムが135〜145、クロールが98〜107。つまり、生理食塩水は血清に比べて、ナトリウムが10パーセント近く、クロールが50パーセント高い。血漿のナトリウム140ミリモル/リットルを食塩に換算すると、約0.82パーセントになる(私の計算)。論文も、凝固点が血清に近く、赤血球を壊さないことは認めている。その意味では似ているが、成分の濃度として一致するわけではない。論文は、この生理食塩水が1890年代に「無害な液(indifferent fluid)」と呼ばれたことから始まり、根拠が足されないまま、のちに「正常」「生理的」と呼ばれるようになった、と経緯を書いている。

二つ目は、味の側のデータが、0.9パーセントを特別扱いしていないことだ。早渕仁美らが2020年に発表した、日本の19地域の584人を対象とする二重盲検の実験(Hypertension Research, 43巻6号)では、0.3、0.6、0.9パーセントの食塩水を、うま味成分(グルタミン酸ナトリウム)0.3パーセントの有無で、計6種類試した。媒体は蒸留水で、実際のスープではない。おいしさの評価(0〜100の目盛り)は、うま味ありの0.3パーセントが60.6、同0.6パーセントが57.4、同0.9パーセントが51.6。うま味なしでは、0.6パーセントが44.8、0.9パーセントが40.7、0.3パーセントが30.7だった。水に溶かしただけの食塩水では、0.9パーセントは最良ではなく、0.6パーセントのほうがおいしいと評価された。

この研究には、書いておくべき事情がある。共著者のうち3人が、味の素株式会社の社員だった。うま味成分の効果を示す研究で、うま味調味料の会社の研究者が加わっている、という事実だ。結果が誤りだと言うつもりはないが、読むときの条件の一つにはなる。もう一つ、蒸留水の食塩水は、スープとは違う。食塩水で0.6パーセントが好まれたからといって、汁物も0.6パーセントがよい、とはならない。

体液の濃度に合わせた説明がどこから来るのか、一つの例がある。堀尾強が2007年に日本醸造協会誌に書いた解説は、われわれは自身の血液(体液)の濃度である0.9パーセント程度をおいしく感じるようになっている、と書いている。ただ、この解説は、その主張を裏づける根拠を示していない。この説を直接検証した一次研究は、調べた範囲では見つからなかった。

ちょうどいい濃度は、動く

では、汁物の「ちょうどいい」塩分濃度は、実際にはどのくらいなのか。調べて分かったのは、その答えが一つではなく、味わう順番、ご飯の有無、年齢、習慣で動くことだった。

野村希代子らが2019年に日本家政学会誌(70巻2号)に発表した研究は、管理栄養士養成課程の女子大学生を対象に、みそ汁とすまし汁を0.4〜0.9パーセントの6段階で評価してもらった。薄いほうの0.4パーセントから順に味わっていくと、0.9パーセントから順に下っていくときより、0.6パーセントを最も好ましいとする人が有意に多かった。ご飯の効果もある。みそ汁だけを評価したときは0.6パーセントを最も好む人が多かった。白飯を組み合わせると、どちらを先に食べても、0.6パーセントを選ぶ人は減り、0.8パーセントを選ぶ人が増える傾向があった。著者らは、白飯と合わせると好まれる濃度が上がることが示唆された、と書いている。みそ汁の次に白飯を食べる順では、0.4〜0.6パーセントを許容できるとする人がはっきり減った。著者らはこれを、口に残った汁の味で白飯を食べることになるため(口中調味のしづらさ)と説明している。若い女性だけの結果なので、一般化には限界がある。市販のインスタントみそ汁は約1.3パーセント、すまし汁は0.9パーセントとされる、という記述も同じ論文にあった。

家庭のみそ汁の実測もある。堀尾(2007年)の報告では、健康な大学生96人と、その両親、きょうだいを合わせた362人を対象にした調査で、家庭のみそ汁の塩分濃度は、0.43パーセントから1.90パーセントまで広く分布していた。最も多かったのは0.9パーセント台(15.6パーセント)で、0.8〜1.09パーセントが全体の38.5パーセントを占めた。逆に言えば、6割以上の家庭は、この範囲の外にある。好みにも家族の類似があり、家庭のみそ汁の濃度と、父・母・娘の1.4パーセントのみそ汁の好みとのあいだに、正の相関があった。慣れた濃度を好むことが、ここから示唆される。

年齢でも変わる。早渕らの上の研究では、0.9パーセントの食塩水の塩味の評価が、19〜29歳で79.0、30〜59歳で71.2、60〜69歳で69.8、70歳を超える人で69.0と、30歳以上の世代は若い世代より、同じ濃度を弱く感じていた。畑江敬子の講演録は、高齢者は若年者より、食塩などの検知閾値や認知閾値が高い、という研究(三橋ら、2008年)を紹介している。ただしこの講演録の数値は表が画像で読めず、確認できなかった。講演録は、そのため、高齢の作り手が自分でちょうどよいと思った味が、若い世代には濃すぎることがある、と書いている。

その畑江の講演録は、通常、汁物に加えられる食塩濃度は0.8パーセント前後、と書いている。一つの目安にはなる。ただ、これまでの数字が示すとおり、目安というより、広い分布の真ん中あたり、と読むほうが実態に近い。

習慣で好みが変わる、という研究もある。ベルティーノらが1982年に発表した研究(American Journal of Clinical Nutrition, 36巻6号)では、若い成人が5か月、自主的に食事の塩を減らしたところ、クラッカーの塩味を強く感じるようになり、スープとクラッカーで「最もおいしい」と感じる塩の濃度が下がった。対照群には変化がなかった。ボーシャンらが1987年にJAMA(258巻22号)に発表した研究では、学生11人が13週間、すべての食事を研究施設で食べた。食事のナトリウムを約135から約70ミリモル/日に下げた期間、重さを量った塩入れをいつでも使えるようにしておいたが、減った分の20パーセント未満しか、塩入れで補わなかった。ごく少人数の実験だが、食卓塩で埋め合わせるだろうという直感は、外れた。

温度についても、よく聞く話がある。冷めると塩辛く感じる、冷めるときに味がしみ込む、というものだ。前者は、結果が揃っていない。ナクティガルらが2019年に発表した実験(Chemical Senses, 44巻1号)では、舌先に3秒、12度、34度、42度の食塩水を当てたところ、閾値より上の濃度の塩味は、温度の効果が有意ではなかった。閾値付近では、温めると刺激感(ひりひり感)が強まった。一方、古い実験(パンボーンら、1970年)の抄録では、0、22、37、55度の食塩水で、閾値付近の感度が22度と37度で、0度と55度より有意に高く、強さの評価でも、低い側の2つの温度がわずかに強いとされた。後者は、確かめた研究では確認されなかった。畑江と奥本の2012年の研究(日本調理科学会誌, 45巻2号)は、ジャガイモ、ダイコン、コンニャクを1パーセントの食塩水で煮てから0〜95度で最長90分保温したところ、保温温度が高いほど内部への食塩の拡散が大きく、冷めるときに味がしみ込むことは確認できなかった。著者らは、この言い伝えは、冷めるあいだも時間をかけて塩が中へ広がっていくことを指しているのではないか、と考察している。そう読めば、しみ込むのは冷めるからではなく、時間がたつからだ、ということになる。

パスタの湯の塩は、量ではなく濃度が決める

パスタをゆでる湯に、どのくらい塩を入れるか。「お湯1リットルに塩大さじ1」という指示を見かける。大さじ1杯の塩はだいたい18グラムだから、1リットルの湯に対して濃度は1.8パーセントになる。この数字と比べる基準が、日本食品標準成分表にある。文部科学省の成分表(八訂)では、マカロニ・スパゲッティの「ゆで」は、乾麺の20倍の1.5パーセント食塩水でゆでて湯切りをした試料で値が出されていて、重量変化率は220パーセントだ。ゆでた麺の食塩相当量は、100グラムあたり1.2グラム(乾の麺は0グラム)。本文も、ナトリウムの値が高くなるのは、ゆでるときに添加する食塩に由来し、添加量で増減する、と注記している。

ここから計算できることがある(以下、私の計算)。乾麺100グラムをゆでると220グラムになり、含まれる食塩は2.64グラム。湯は2リットルで、1.5パーセントなら食塩30グラムだから、湯に入れた塩のうち麺に残るのは約9パーセントにすぎない。麺の塩分(1.2パーセント)は、湯の塩分(1.5パーセント)の約0.8倍だ。うどんでは逆に、生の麺が2.5グラムだった食塩相当量が、ゆでると0.3グラムに下がる。うどんは生地の塩が湯に出ていく側で、パスタは湯の塩が麺に入る側だ。

湯の量や時間は関係するのか。ビアンキらが2019年に発表した研究(Food Chemistry, 271巻)は、セモリナのスパゲッティを、塩の量、水と麺の比、湯の量、時間、すすぎ、形状、全粒粉などを系統的に変えてゆで、ナトリウムの量を測った。抄録によれば、麺のナトリウムを変えたのは、湯の塩分濃度とすすぎだけだった。湯の濃度と麺のナトリウムは直線の関係で、濃度を2倍にすると、1食140グラムあたり基準比で243ミリグラム増える。すすぐと34パーセント減る。塩なしでゆでたときは、5ミリグラム未満だった。「塩の総量」ではなく「濃度」が効く、ということだ。無塩でほぼゼロで、濃度に比例するなら、2倍にしたときの増分243ミリグラムが、基準の量にほぼ当たると読める。基準の湯は約0.63パーセント(36グラムを5.68リットルに溶かした)で、麺の食塩は約0.62グラム(140グラムあたり)。麺の塩分は約0.44パーセントで、湯の約0.7倍になる(私の計算)。

これを、「1.8パーセント」にあてはめてみる。以下は、成分表の比と、ビアンキらの結果から読んだ比を延ばした、私の推定だ。1.8パーセントを直接測った資料は見つからなかった。成分表の湯は1.5パーセントで、麺は1.2パーセント、乾麺100グラム(ゆで上がり約220グラム)で食塩2.64グラム。湯が1.8パーセントなら、比0.8で麺は約1.44パーセント、食塩は約3.2グラムになる。比を0.7とみれば、1.5パーセントで約2.3グラム、1.8パーセントで約2.8グラムだ。どちらの比でも、1食あたりの差は約0.5グラムになる。ひとつまみ(平均0.5グラム)ほどの量である。

メーカーの調理指示は、確認できたものが少ない。バリラのパスタについて、イギリスの小売サイトに転記された案内では、100グラムのパスタに水1リットル、塩7グラム(約0.7パーセント)とされている。バリラの公式サイトでは確認できていない。日本の製粉会社の公式の指示は、見つけられなかった。

醤油と味噌は、塩に換算できるのか

塩そのものではなく、醤油や味噌で味をつける場合も、考え方は同じように使える。食塩の量を決めてから、醤油や味噌の量に換算する。ここで、以前の版の記述を訂正しておく。以前の版は、濃口醤油の塩分をおよそ16パーセント、味噌をおよそ12.5パーセントと見積もっていた。

文部科学省の食品成分データベース(日本食品標準成分表八訂増補2023年)で、食塩相当量(100グラムあたり)を確認した。こいくちしょうゆが14.5グラム、うすくちしょうゆが16.0グラム、たまりしょうゆが13.0グラム、さいしこみしょうゆが12.4グラム、しろしょうゆが14.2グラム。減塩のこいくちしょうゆは8.3グラムだ。つまり、16パーセントは、濃口ではなく、薄口の値だった。薄口醤油は、色が薄いのに、塩分は濃口より高い。容量あたりに直しても、重量目安表のカップの値(200ミリリットルで236グラム)から密度を1.18として、14.5に1.18を掛けると約17.1グラム/100ミリリットル(私の計算)で、16にはならない。

一方で、キッコーマンは2024年6月の報道発表で、通常のこいくちしょうゆの食塩分を17.5パーセントと書いている。成分表の14.5との差が、重さと容量の基準の違いなのか、分析法の違いなのかは、確認できなかった。同じ資料は、減塩しょうゆの基準を「しょうゆ100グラム中の食塩量が9グラム以下」と書いている。醤油の塩分は、出どころによって14.5〜17.5という幅を持つ数字だ、と考えておくのが安全だろう。

味噌はさらに幅がある。米みその甘みそが6.1グラム、淡色辛みそが12.4グラム、赤色辛みそが13.0グラム。麦みそが10.7グラム、豆みそが10.9グラム。以前の版の12.5パーセントは、淡色辛みそ(12.4)に近いが、「味噌」と一括りにすると、甘みその2倍以上の差が隠れる。

この数字で、0.8パーセントのみそ汁150グラム(食塩1.2グラム)を作るのに必要な量を計算すると(私の計算)、淡色辛みそで約9.7グラム、赤色辛みそで約9.2グラム、甘みそで約19.7グラムになる。同じ1.2グラムの塩分を濃口醤油で出すなら、約8.3グラム(大さじ約0.46杯)。濃口醤油の大さじ1杯(18グラム)は食塩約2.6グラム、小さじ1杯(6グラム)は約0.87グラム相当だ。成分表の値で割り戻すと、食塩1グラムあたり、濃口醤油はおよそ7倍、辛みそは8倍前後、甘みそは16倍ほどの重さになる(私の計算)。銘柄で前後するので、あくまで目安である。

スケールの数字も、ぶれている

塩を量ると決めたとき、次に問題になるのはスケールの精度だ。0.1グラム単位のスケールなら安心かというと、そうでもない。タニタの家庭用クッキングスケールKP-104(最大200グラム、最小表示0.1グラム)の取扱説明書には、計量精度として、0〜50グラムで±0.2グラム、50グラムを超えて200グラムまでで±0.3グラムと書かれている。表示の刻みは0.1グラムでも、誤差の幅はその2倍あることになる。

これを塩に当てはめると(私の計算)、1グラムの塩を量れば0.8〜1.2グラムで±20パーセント、ひとつまみ相当の0.5グラムを量れば±40パーセントのぶれがありうる。説明書は、家庭で使うためのもので、取引や証明には使わないよう注意している。

説明書には、もう一つ、見逃しやすい注意もある。0グラム表示のスケールに、粉などをゆっくり少しずつ載せると、表示が変化しない場合がある、という。少し多めに載せて、あとから減らしてください。または、載せはじめから1秒以内に最小表示以上を載せるように、速めに載せてください、とある。塩をぱらぱらと少しずつ足していく量り方は、スケールの側が拾わないことがあるのだ。

1グラム表示のスケールは、もっと粗い。タニタのKJ-222は、通常モードが1グラム表示で、0〜500グラムで±2グラムとされる(家電量販店の商品ページの仕様で、公式の説明書は取得できなかった二次情報)。±2グラムのスケールで「塩3グラム」を量ると、表示が3グラムでも、実際は1〜5グラムの範囲がありうる(私の計算)。家庭用キッチンスケールの精度を定める日本産業規格(JIS)は、確認できなかった。

日本人の食塩摂取量という数字

ここまで、味の側から濃度を見てきた。健康の側の数字にも触れておく。この記事は、健康の話ではなく、味の話として書いているが、同じ数字が並んで語られるので、整理しておく価値がある。

令和6年の国民健康・栄養調査(2025年12月公表)では、20歳以上の食塩摂取量の平均が9.6グラム(男性10.5グラム、女性8.9グラム)だった。男性は60代が11.1グラムで最も多い。1〜6歳の男児でも5.2グラムあった。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の目標量は、18歳以上で男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満だ。この数字の決め方は、少し意外に見えるかもしれない。報告書の表と式を見ると、目標量は「(5グラム+現在の摂取量)÷2」で算定されている。たとえば18〜29歳の男性は、(5.00+10.07)÷2=7.54で、7.5グラムになる。5グラムは、WHOの推奨に当たる値で、報告書は、5グラム未満を習慣的に満たす人は極めて稀であり、5グラムを目標量にするのは実施可能性の点で適切でない、という趣旨を示している。つまり、7.5グラムや6.5グラムは、生理学的に最適な値というより、理想と現状の中間として決められた値だ。

健康日本21(第三次)の目標は、平均7グラム。食事摂取基準の同じ章には、高血圧の予防のために6グラム未満が望ましい、という記述もある。7.5、6.5、7、6、5と、数字がいくつも並ぶ。どれが正しいのではなく、決め方が違う数字を並べている、と読んだほうが混乱しない。

数字と感覚のあいだ

数字か勘か、という問いを立てたくなる。塩の量は、材料の総重量を量り、目的の濃度をかければ出る。数字が教えてくれるのはそこまでで、そこから先の味見は、自分の舌に委ねるしかない。

調べ直して分かったのは、その「ちょうどいい濃度」が、一つの数字に決まっていない、ということだった。味わう順番、ご飯の有無、年齢、習慣。そのどれもが、ちょうどよさを動かす。数字は、舌を置き換えるものではなく、舌の癖を知るための物差しだ。物差しの目盛りが少しずれているなら、ずれを知ったうえで使えばよい。塩の記事なのに、いちばん大きな収穫が「目盛りのずれ」だった、というのは、少し皮肉な話である。

塩分濃度計算機 | 肉・汁物・パスタの「ちょうどいい塩加減」を数値で出す
重さに応じて、必要な塩の量を計算する。

出典

  • 女子栄養大学短期大学部「塩少々、塩ひとつまみを、計ってみました」(大学公式ページ、©2020、測定日の記載なし。査読論文ではない)。https://www.eiyo.ac.jp/eiyojcspecial/dispatch/dispatch01.html
  • Winkler G, Linke-Pawlicki S, Wengler K (2012). Wie viel wiegt eine Prise Salz? Ernährungs Umschau, 59(6), 319–323.(抄録による)
  • 国立健康・栄養研究所「栄養摂取状況調査のための標準的図版ツール(2009年版)に基づく重量目安表」。https://www.nibn.go.jp/eiken/chosa/pdf/jyuryomeyasuhyo2009_2013ver.pdf
  • Morton Salt の公式商品ページ(Table Salt、Coarse Kosher Salt の栄養表示)。(二次情報)Diamond Crystal Kosher Salt の栄養表示は、小売サイトに転記されたものによる。(二次情報)America's Test Kitchen, kosher salt の味覚テストの記事。
  • Li H, Sun SR, Yap JQ, Chen JH, Qian Q (2016). 0.9% saline is neither normal nor physiological. Journal of Zhejiang University Science B, 17(3), 181–187.
  • Hayabuchi H, et al. (2020). Validation of preferred salt concentration in soup based on a randomized blinded experiment in multiple regions in Japan. Hypertension Research, 43(6), 525–533.(共著者3名は味の素株式会社の社員)
  • 堀尾強 (2007). 味噌汁における塩分嗜好の家族類似性. 日本醸造協会誌, 102(10), 743–749.
  • 野村希代子ほか (2019). 飯との組み合わせが低塩分濃度の汁物の塩味の嗜好性に及ぼす影響. 日本家政学会誌, 70(2), 57–67.
  • 畑江敬子「味覚と呈味成分との関係—塩味効率と調理における塩味の感じ方—」(塩事業センター/ソルト・サイエンス研究財団の講演録、掲載年は確認できなかった)。https://www.saltscience.or.jp/images/2023/07/4-hatae.pdf [三橋ら(2008)の閾値の数値は表が画像で読めず未確認]
  • Bertino M, Beauchamp GK, Engelman K (1982). Long-term reduction in dietary sodium alters the taste of salt. American Journal of Clinical Nutrition, 36(6), 1134–1144.(抄録による)
  • Beauchamp GK, Bertino M, Engelman K (1987). Failure to compensate decreased dietary sodium with increased table salt usage. JAMA, 258(22), 3275–3278.(抄録による)
  • Pangborn RM, Chrisp RB, Bertolero LL (1970). Gustatory, salivary, and oral thermal responses to solutions of sodium chloride at four temperatures. Perception & Psychophysics, 8, 69–75.(抄録による)
  • Nachtigal D, Andrew K, Green BG (2019). Selective effects of temperature on the sensory irritation but not taste of NaCl and citric acid. Chemical Senses, 44(1), 61–68.(抄録による)
  • 畑江敬子・奥本牧子 (2012). 食品の保温温度が食塩の拡散に及ぼす影響. 日本調理科学会誌, 45(2), 133–140.(抄録による)
  • 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」および食品成分データベース(八訂増補2023年)。https://fooddb.mext.go.jp/
  • Bianchi LM, Phillips KM, McGinty RC, Ahuja JK, Pehrsson PR (2019). Cooking parameters affect the sodium content of prepared pasta. Food Chemistry, 271, 479–487.(抄録による)
  • キッコーマン「報道発表」(2024年6月19日)。https://www.kikkoman.com/jp/news/2024/img/news_240619.pdf
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月公表、ミネラル(多量ミネラル)の章)。https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf [PDFの仮名が文字化けしており、文字コードを戻して照合した。WHO(2012年)の推奨5g/日未満は、この報告書による]
  • 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」(2025年12月公表)。https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf [健康日本21(第三次)の目標7gも、この概要に掲載]
  • タニタ, クッキングスケール KP-104 取扱説明書。https://api-img.tanita.co.jp/files/user/support/manual/kp_series/KP-104.pdf /(二次情報)タニタ KJ-222 の仕様(家電量販店の商品ページ)。
  • (二次情報)バリラのパスタの調理案内(英国の小売サイトに転記されたもの)。
XはてなブックマークLINEFacebook