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形の違うマウスだけでは、首肩の障害は減ったと言えなかった——机まわりの工夫を、試験の有無で仕分ける

形の違うマウスだけでは、首肩の障害は減ったと言えなかった——机まわりの工夫を、試験の有無で仕分ける

寝る前にやることを書いた群は、済んだことを書いた群より研究室で約9分早く眠った。形の違うマウス単独は、首肩の障害が大きくは減らなかった。机まわりの工夫を、試験の有無で仕分ける。

TOMOAKI··建築

机を整える話は、体験記として書かれることが多い。椅子の高さを直したら肩が楽になった、寝る前に机を片付けたら朝が違った、という具合だ。読んでいて楽しいし、本人がそう感じたことは疑わない。ただ、「そう感じた」ことと、「それが効いた」ことのあいだには、いつも少し距離がある。

その距離を、数字で測ってみる。たとえば、寝る前の五分に、これからやることを書いた人は、済んだことを書いた人より、約9分早く眠りに入った。57人の若い成人を、研究室で調べた実験の結果だ。一方で、通常とは形の違うマウスだけを使った人たちは、首や肩の障害が大きくは減らなかった。同じ机まわりの工夫でも、結果の読み取れ方は、これほど違う。前者は一本の実験で、後者は複数の試験をまとめた結果だ、という違いも、あとで見ていく。

この記事は、机まわりの工夫を、検証されているものと、まだ誰も測っていないものに仕分けていく。順に見るのは、椅子・モニター・マウス、姿勢、スタンディングデスク、机の上の散らかり、終わっていない用事、そして寝る前の五分だ。どの研究を全文で読み、どれを抄録でしか確認できていないかは、出典の欄に書いた。おすすめの道具は出てこない。

首や肩の話は、思ったより証拠が薄い

最初に、いちばん実用的に見える領域から入る。長く座って作業をすると首や肩がこる。だから椅子やモニターの高さを直す、アームサポートを付ける、人間工学に基づいたマウスに替える。この種の介入が、実際に首や肩の障害を減らすのかを、無作為化試験(参加者をくじ引きで介入群と対照群に分けて比べる試験)でまとめたものがある。

Hoeらが2018年にまとめたコクランのレビューは、事務職を対象にした15本の無作為化試験、2,165人を扱っている。首や肩の障害のある人が25パーセント未満の職場での、予防の試験だ。まず気になるのは、証拠の質だ。15本のうち、バイアス(結果を実際より良く見せてしまう、設計上の偏り)のリスクが低いと評価されたのは1本だけで、残りの14本は高いと評価されている。結果が出ていても、その結果の足元が固くない。

その足元で、何が言えたのか。アームサポートと、通常とは形の違うマウスを併用した群では、首や肩の障害の発生が、対照に比べておよそ半分になった。相対リスクは0.52。相対リスクは、介入群で障害が起きる確率を、対照群の確率で割った値で、1なら差がない。仮に対照群で10人に起きる条件なら、0.52は5人ほど、という意味になる。信頼区間は0.27から0.99、証拠の確かさは中等度とされている。信頼区間は、推定値のぶれの幅のことで、上端が1のすぐ手前にある。「半分になった」は点としての推定値で、区間の下端は0.27、上端は0.99にある。上端が1に近い、ぎりぎりの差の中の話でもある。

では、片方だけならどうか。形の違うマウスを通常のマウスと比べた2本の試験では、首や肩の障害の相対リスクが0.62で、信頼区間は0.19から2.00、右の上肢では0.91で、0.48から1.72だった。通常のマウスのままのアームサポートは、通常のマウスだけの群と比べて0.91で、0.12から6.98。どれも、区間が1をまたいでいる。大きくは減らなかった、というのがレビューの書き方で、確かさは中等度とされている。併用でだけ首や肩に差が出て、単独では出ない。併用でも、右の上肢の障害には差がなかった(0.73で、0.32から1.66)。レビュー全体の結論は、アームサポートや形の違うマウスが首や肩の障害を減らすかどうかについて、証拠は一貫していない、というものだ。

形の違うマウスが手首を楽にする、という話も、よく聞く。手首の姿勢や筋活動を測った実験室での研究は、私が探した範囲でも、いくつかある。ただ、それは日々の痛みを減らしたかどうかとは、別の問いだ。痛みや障害を結果にした試験は、上の2本が、私が確認できた範囲のすべてだった。

モニターの高さで、首の痛みを比べた試験は見つからなかった

では、モニターの高さは。上端を目の高さに合わせると首が楽になる、という説明は、人間工学の資料でよく見る。筋の通った説明だと思う。ところが、モニターの高さだけを無作為に割り振って、首の痛みを比べた試験は、私が探した範囲では見つからなかった。ノートパソコンの画面の高さが、首や肩の筋の疲労にどう影響するかを測った実験は、あるにはある。ただ、これも痛みを減らしたかどうかの試験ではない。痛みを結果にした報告で最も近いのは、椅子とモニターをまとめて調整した、一人を対象にしたものだった。痛みは下がったが、座り心地は悪くなった、という内容だ。

コクランのレビューでも、「ワークステーションの調整」は1本の試験しか扱っておらず、上肢の痛みに明確な効果は示されなかった。調整が無駄だと言っているのではない。調整の効果を言える数の試験が、そもそもそろっていない。「測っていない」ことと「効かなかった」ことは別のことで、混ぜると、どちらの方向にも言い過ぎになる。

この点は、体験記とは相性が悪い。調整した直後は、体の感じ方が変わる。変わったと感じれば、効いたと思う。けれども、夕方の首のこわばりが軽くなった週に、たまたま睡眠が足りていたのかもしれないし、締め切りが一つ片付いていたのかもしれない。一人の一週間からは、これらを切り分けられない。

つらい週に始めた工夫は、効いたように見えやすい

体験記が、効果の証拠として弱い理由を、もう少し具体的に書いておく。人が机の環境を見直すのは、たいてい、首や肩がいちばんつらい時期だ。ところが、体の不調には波がある。つらさが際立って高い週のあとは、放っておいても、平均的には少し戻る傾向がある。統計では、平均への回帰と呼ばれる現象だ。試験で最低点を取った翌回は、勉強法を変えなくても点が上がりやすい。最低点には、一回限りの運の悪さも混じっていて、運は次の回には同じように悪くならないからだ。そこで新しい勉強法を始めていれば、勉強法が効いたような気になる。

調子の悪い週に、椅子の高さを直した人を考える。翌週、首が少し軽くなる。軽くなったのは、椅子のおかげかもしれないし、波が戻っただけかもしれない。当人にはどちらか分からない。しかも、新しい椅子の高さに合わせようと意識している間は、姿勢への注意が増えて、普段より頻繁に姿勢を変えているかもしれない。そうすると、次の節の姿勢を変える話と混ざって、何が効いたのかが、さらに見えなくなる。

無作為化試験は、この混ざりをほどくために作られた仕組みだ。人をくじ引きで介入群と対照群に分ければ、波が戻る分は、両方の群に同じように起きる。差し引いて残った差が、介入の分に近い、ということになる。期待の分は、自分がどちらの群かを参加者が知っている試験では、そろいきらない。さらに、先ほどのコクランのレビューのように、試験の作りが粗いと、この差し引きもうまくいかない。14本が高いバイアスのリスクと評価されたのは、そういうことだ。

信頼区間の読み方も、ここで整理しておく。信頼区間は、推定値のぶれの幅だ。同じやり方で何度も区間を作れば、その95パーセントは真の値を含む、という作り方をしている。手元の一本の区間は、データと矛盾しない値の幅、と読めばいい。区間が1をまたいでいれば、減った場合と増えた場合の両方が、データと矛盾しない。体重計が「あなたは50キロから90キロのどこかです」と告げるようなもので、減量を確かめる助けにはならない。

「正しい姿勢」より、姿勢を変えること

姿勢についても、通念を疑う材料がある。Slaterらは2019年に、整形外科・スポーツ理学療法の学術誌で、「悪い姿勢が痛みを起こす」という通念を支える強い証拠はない、と論じた。これは試験ではなく意見論文で、証拠の少なさを整理したものだ。強い証拠がないことは、通念が間違っている証明にもならない。ただ、正しい姿勢という一つの形を目指す考え方の根拠が、見かけほど固くはないことは、押さえておいていい。

固定された一つの姿勢よりも、姿勢を変えることに目を向けた試験がある。Waongenngarmらは2021年に、タイの事務職193人を、三つの群に分けて6か月追った。一つは短い能動的な休憩を入れる群、一つは座る姿勢を切り替える群、残りは対照だ。首の痛みが新しく出た人の割合は、能動的休憩で17パーセント、姿勢の切り替えで17パーセント、対照で44パーセントだった。調整後のハザード比(ある期間に痛みが出る危険を、群どうしで比べた値で、1より小さければ出にくい)は、首の痛みで0.45と0.41になっている。

数字だけを見ると、44が17になったのだから大きな差に見える。ここで、設計のほうも読んでおく。介入の群には、休憩や姿勢の切り替えを促すための専用の仕組みが渡されていた。座面のセンサー、携帯のアプリ、空気で座面を動かす装置などだ。能動的休憩の群は、1日に平均で30回を超える休憩を取っていた。対照には、見た目だけの座面パッドが渡されている。思い出させてくれた仕組みと、休憩そのものの効果とは、この設計では分けられない。参加者の約7割は、途中から在宅勤務になってもいる。いずれにしても、同じ形に居続けないほうに分がありそう、という方向は見えるが、道具なしで同じ差が出るのかは、この試験からは分からない。

休憩については、コクランのレビューにも記述がある。データ入力の作業者で、追加の休憩を入れた場合、首の不快感の平均差はマイナス0.25で、証拠の質は非常に低いとされている。向きは同じだが、尺度が違うので、先ほどの相対リスクとは大きさを比べられない。

博物館に展示されている、黒い傾斜天板の立ち机。天板に赤い布が敷かれ、下に棚が二段ある。

立つ机は、座る机の対案になったか

座りっぱなしが悪いなら、立てばいい。スタンディングデスクは、その発想の延長にある。Parryらが2019年にまとめたコクランのレビューでは、立って作業もできる机を使った群で、介入のない群と比べて、腰の痛みの標準化平均差がマイナス0.35(信頼区間はマイナス0.80からプラス0.10)、上背部がマイナス0.48(マイナス0.96から0.00)だった。いずれも、試験は2本ずつで、6か月未満の短期の結果だ。向きは痛みが減る方向だが、区間が0をまたぐか、0に触れている。有意ではなく、証拠の質は低い、というのが著者らの評価だ。

数字の書き方に慣れていない読者のために、一つだけ言い換えておく。標準化平均差が0.35というのは、痛みの個人差のばらつき(標準偏差)に対して、群の平均が3分の1ほど動いた、という意味だ。それは小さな動きだ。小さな動きを、小さめの人数で測れば、偶然でも出うる。区間が0をまたぐのは、そういう状況を表している。立てば痛みが減るのかは、現時点では「減るかもしれないが、確かめきれていない」としか言えない。

机の上の散らかりは、別の記事で扱った話に二点を足す

机の上の物を減らすと集中できる、という話は、この記事の外でかなり扱ってきた。家の散らかりとストレスホルモンの研究、視覚野での競合の実験、片付けの前後を測った研究が見つからなかったことは、片付けの幸福の記事に書いてある。ここでは、そこに入っていない二点だけを足す。

一つは、ChaeとZhuが2014年に消費者研究の学術誌に発表した実験だ。研究1では学生150人を、棚の文房具が散らかっている、整っている、何もない、の三つの条件に割り振り、1分待たせた。散らかった条件では、その後の買い物の支払意思額が高かった。研究2では、89人にストループ課題(色の名前を、別の色のインクで書いた文字を見て、インクの色を答える課題)をさせた。条件は、散らかった、整った、何もない、狭いの四つだ。「消耗した」という自己評価は、散らかった条件で4.19、整った条件で2.98、何もない条件で3.08、狭い条件で3.38だった。反応時間は、散らかった条件のほうが遅かった。誤答の数には、条件間で差がなかった。

もう一つは、その実験が立っている土台だ。散らかりが自制心の資源を消耗させる、という説明は、自制心は使うと減る、という考え方に寄りかかっている。この考え方を、23の研究室で事前に手順を登録して追試した報告がある(Haggerら、2016年)。参加者は2,141人で、効果量dは0.04、信頼区間はマイナス0.07からプラス0.15。つまり、ほぼゼロだった。効果量dは、平均の差を個人差の幅で割った値で、0.5前後が中くらいの差にあたる。これは、追試した課題の範囲での結果だ。土台が揺らいだからといって、散らかりの実験が無効になるわけではない。ただ、「散らかりは自制心を消耗させる」という説明の部分は、もう少し割り引いて読むことになる。

そして、自宅の机を片付けた前後を、比較群つきで測った研究は、私が探した範囲では確認できなかった。散らかった実験用の棚や部屋での測定はあっても、毎日の仕事机で何が起きるのかは、まだ測られていない。

終わっていない用事は、頭に残り続けるのか

ここから、もう一つの軸に移る。机の上に出しっぱなしの書類が気になるのは、物の見た目より、そこに結びついた「終わっていない用事」のせいではないか、という読みだ。この読みは、ツァイガルニク効果として知られている。やりかけの課題のほうが、終えた課題より覚えている、という現象だ。

最初に、この効果が実際に確認できるのかを見ておく。GhibelliniとMeierが2025年に発表したメタ分析(複数の研究の結果を、まとめて計算し直したもの)がある。想起について、やりかけの課題と終えた課題を比べた研究が37本ある。結果は、想起の平均の比が0.99、つまり差がない。やりかけのほうがよく覚えている、という有名な結果は、この数の研究をまとめると、支持されなかった。別の指標では、ごく小さな差が出た研究群もある。

残ったのは、別の傾向だった。中断された課題を、あとで自分から再開する傾向(オフシアンキナ効果)は、課題の約67パーセントで見られた。やりかけのことを覚えているわけではなくて、やりかけのことに戻りたくなる。

この違いを、身近なたとえで言い直す。冷蔵庫の中に、食べかけのケーキが入っているとする。ケーキの存在を一日中思い出し続けているわけではない。けれども、冷蔵庫を開けたとき、手のつけていないものより、食べかけのほうに先に手が伸びる。前者は記憶の話で、後者は行動の傾向の話だ。メタ分析が支持しなかったのは前者のほうで、後者は、どうやら残っている。これを机の上の書類に当てはめて、書類が気になるのは覚えているからではなく手が伸びるからだ、と読みたくなるが、そう言い切れる証拠はない。次に見る研究は、終わっていない用事が、侵入してくる思考や反芻として残る可能性を示している。ここは私の読みで、検証されたものではない。

では、終わっていない用事の影響を減らす方法はあるのか。MasicampoとBaumeisterは2011年に、課題を終えなくても、いつ・どこでやるかを具体的に計画させると、その課題が意識に割り込む侵入思考が減り、関連する語の活性化もなくなり、直後の課題の成績低下も消えた、と報告した。抄録で確認した範囲では、課題を実際に終えた人ほど侵入が増えなかった、という結果も添えられている。ただ、この報告の独立した大規模追試は、私が探した範囲では見つからなかった。

計画の効果は、人によって違うらしい。103人の1,127個の目標を調べた2016年のSmitの研究では、計画を書いて仕事から気持ちを切り離す度合いが上がったのは、もともと切り離しにくい特性の人だった。計画が万人に効くわけではなく、効きやすい人と、効きにくい人がいる。

未完了の用事は、眠りにも響く。2017年のSyrekらは、59人の357回の観測から、金曜の時点で未完了の用事が多いほど、週末の睡眠が悪くなる傾向を示した。それを説明していたのは、感情的な反芻(同じことを何度も嫌な気持ちで考えること)だった。問題を解決しようとする思考には、有意な間接効果が見られなかった。未完了の用事そのものより、それを嫌な気持ちで考え続けることが、眠りに響く。

寝る前の五分に、何を書くか

ここで、机を毎晩片付ける習慣の話に戻れる。片付けそのものの効果を比べた実験は、確認できなかった。しかし、寝る前の五分に何かを書くことの効果を、睡眠ポリグラフ(脳波などを測る検査)で調べた実験はある。

Scullinらが2018年に発表した実験では、57人の若い成人が、寝る前の5分間、二つのどちらかを書いた。一つは、これから数日にやることの一覧(28人)、もう一つは、すでに済ませたことの一覧(29人)だ。入眠にかかった時間は、やることの一覧を書いた群で約15.8分、済んだことを書いた群で約25.1分。およそ9分の差になる。統計の値は、tが2.32、pが0.02、効果量のdが0.63だった。

この結果は、意外に思える。済んだことを振り返って安心するほうが寝つきが良さそうなのに、やることを外に書き出したほうが、早く眠れた。書き出すことで、頭が覚えておく役を手放せたのかもしれない。これも私の読みだ。

九分という差の大きさは、割り引いて受け取っておく。この実験の参加者は、研究室で、眠りに入るまでの時間を測られていた。日々の暮らしの中で、この差がそのまま再現されるとは限らない。比較は、やることの一覧と、済んだことの一覧の二群だけで、何も書かない群はない。やることを書いて早まったのか、済んだことを書いて遅れたのかは、この設計では分けられない。同じ五分でも、書かせる内容を変えただけで差が出た、というところまでが、確かに言えることだ。

注意点がもう二つある。参加者は睡眠に問題のない若い成人で、不眠の人や、高齢者に当てはまるかは分からない。そして、5分間の筆記は、机を片付けることとは別の行為だ。机を毎晩リセットする習慣が、翌朝の集中を変えるのかは、測られていない。ただし、リセットの中に「明日やることを書き出す」が含まれているなら、効いている部分は、片付けではなく書き出しのほうかもしれない。机を拭くことと、付箋に明日の予定を書くことを、一つの習慣として括って語ると、どちらが効いたのかが見えなくなる。

ケーブルと金具:材料が見つからなかった二つ

最後に、確かめようとして、材料が見つからなかった二つを書いておく。

一つは、机の下のケーブルを整えると、気分や集中が変わるのかという問いだ。PubMed、Europe PMC、ウェブでの検索で、配線の見た目と気分や集中を扱った研究は、見つからなかった。企業のブログと、個人の感想はある。ケーブルを隠してすっきりした、というのは、おそらく本当に感じるのだろう。ただ、それが散らかりの研究に含まれる視覚的な負荷の話なのか、足元が引っかからないという実用の話なのかは、分けて測られていない。

もう一つは、がたつく机に金具を足すと直るのか、だ。組み立て式の家具に使われる素材の、ねじ保持力を測った実験はある。Yorurらが2020年に、厚さ18ミリのMDFとパーティクルボードで、全部で448回の引き抜き試験をした。MDFの面では1,048から2,076ニュートン、水に2時間浸したあとは695から1,018ニュートン。側面では、335から1,634ニュートンが、浸水後に79から767ニュートンに落ちる。下穴なしの条件が最も低く、下穴にポリウレタン接着剤を入れた条件が最も高かった。

これらの範囲は、ねじの太さ、下穴の有無、接着剤をまたいだ平均の幅で、79ニュートンと2,076ニュートンは、打つ向きも、浸水も、下穴も、ねじも違う別の条件どうしだ。条件を一つずつ変えた差ではない。それでも、同じ18ミリの板で、保持力が二十倍を超える開きを持ちうる、とは言える。これは素材の学術論文の数字で、金具で補強したあとの机がどうなるのかの数字ではない。金具の前後比較や、公的機関の試験の結果は、確認できなかった。金具を足すと直るのかは、この記事では答えが出せない。机の素材や直し方については、机の記事と、部屋の模様替えの記事に続きがある。照明の話は、別の記事にまとめてある。

自分の机の工夫は、どこに入るのか

検証の厚みを、もう一度だけ並べておく。複数の試験があるのは、首や肩の道具と、スタンディングデスクだ。ただし、足元は弱く、単独の効果は言い切れない。姿勢と寝る前の筆記は、一本ずつの試験で、条件がかなり限られている。散らかりと終わっていない用事は、実験室の結果が中心で、仕事机での前後比較はない。モニターの高さ、ケーブル、金具は、確かめる材料がなかった。

こうして並べると、効果の言い方に強弱があるのがわかる。体験記の中では、すべての工夫が同じ強さで「効いた」と書かれる。けれども、検証の側から見ると、強く言えるものと、言えないものが混ざっている。机を整えた手応えを疑うことは、手応えを捨てることではない。どの部分の手応えが、どの根拠に支えられているのかを、自分で分けて持っておくことだと思う。

もう一つ、この仕分けから見えることがある。今回見た範囲では、差が見えたものの多くは、道具を替える側ではなく、書き出す、動くといった行為の側にあった。ただし、書き出しは1本の研究室実験で、動くことの試験は専用の仕組みつきだ。手間やお金をかけた工夫ほど、効いたと思いたくなる人もいるだろう。検証の側から見えるのは、そうした思い入れとは別の地図だ。

分けて持っておくと、うまくいかなかった工夫の見え方も変わる。体質や意志の弱さではなく、そもそも確かめられていなかっただけ、ということがありうる。

出典

確認の水準は、全文(本文を読んだ)、抄録(PubMed等の抄録のみ)で示す。

  • Hoe VC, Urquhart DM, Kelsall HL, Zamri EN, Sim MR. 2018. Ergonomic interventions for preventing work-related musculoskeletal disorders of the upper limb and neck among office workers. Cochrane Database Syst Rev (10):CD008570.pub3(抄録)
  • Parry S, et al. 2019. Workplace interventions for increasing standing or walking for decreasing musculoskeletal symptoms in sedentary workers. Cochrane Database Syst Rev CD012487(抄録)
  • Slater D, et al. 2019. Sit up straight: time to re-evaluate. J Orthop Sports Phys Ther 49(8):562–564(抄録)
  • Waongenngarm P, et al. 2021. Effects of an active break and postural shift intervention on preventing neck and low-back pain among high-risk office workers: a 3-arm cluster-randomized controlled trial. Scand J Work Environ Health 47(4):306–317(全文)
  • van Vledder N, Louw Q. 2015. The effect of a workstation chair and computer screen height adjustment on neck and upper back musculoskeletal pain and sitting comfort in office workers. S Afr J Physiother 71(1):279(抄録)
  • Chae B, Zhu R. 2014. Environmental disorder leads to self-regulatory failure. J Consum Res 40(6):1203–1218(全文)
  • Hagger MS, et al. 2016. A multilab preregistered replication of the ego-depletion effect. Perspect Psychol Sci 11:546(抄録)
  • Ghibellini R, Meier B. 2025. Interruption, recall and resumption: a meta-analysis of the Zeigarnik and Ovsiankina effects. Humanit Soc Sci Commun 12:962(全文)
  • Masicampo EJ, Baumeister RF. 2011. Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. J Pers Soc Psychol 101:667(抄録)
  • Smit BW. 2016. Successfully leaving work at work: the self-regulatory underpinnings of psychological detachment. J Occup Organ Psychol 89(3):493–514(Crossref の抄録)
  • Syrek CJ, et al. 2017. Zeigarnik's sleepless nights: how unfinished tasks at the end of the week impair employee sleep on the weekend through rumination. J Occup Health Psychol 22(2):225–238(抄録)
  • Scullin MK, et al. 2018. The effects of bedtime writing on difficulty falling asleep: a polysomnographic study comparing to-do lists and completed activity lists. J Exp Psychol Gen 147:139(全文)
  • Yorur H, Birinci E, Gunay MN, Tor O. 2020. Effects of factors on direct screw withdrawal resistance in medium density fiberboard and particleboard. Maderas Cienc Tecnol 22(3):375–384(全文)
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