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「趣味の資産化」という言い方について、立ち止まって考える

「趣味の資産化」という言い方について、立ち止まって考える

趣味を「投資」「資産」「ROI」という言葉で語る記事が増えている。小さな習慣から始めるという発想自体は理にかなっているが、その根拠として添えられる数字には注意が必要だ。

TOMOAKI··趣味

趣味を始めても続かないのは、意志の弱さのせいだと思われがちだ。しかし実際には、いきなり大きな目標を立てることのほうが問題であることが多いようだ。「毎日1時間勉強する」という目標は、それだけで始める前から気が重くなる。

小さく始めることには、根拠がある

日々の小さな習慣

心理学者ピーター・ゴルヴィツァーの「実行意図」研究は、「いつ・どこで・何をするか」を具体的に決めておくことが行動につながりやすいことを示している。既存の習慣(帰宅、入浴など)に新しい行動をくっつける「習慣の接ぎ木」も、同じ考え方の応用だ。「本を1ページだけ読む」「1回だけスクワットする」というように、最小単位まで小さくすることで、始めるハードルを下げる。ここまでは、実際に効果が期待できる話だ。

問題は、その先にある「ROI」という語り口

ここに、趣味を「投資」「資産」「ROI(投資利益率)」という言葉で語る記事が接続されると、話がおかしな方向に進む。「受動的な消費のROIはマイナス、戦略的な余暇のROIは無限大」というような主張を見かけたら、注意信号だと思ったほうがいい。ROIというのは本来、投じたコストに対して数値化されたリターンを比較するための言葉だ。趣味から得られる充実感を「無限大」と表現した時点で、それはもう数値でも根拠でもなく、ただのスローガンになる。

同じように、「30代の会社員が、皿の盛り付けと写真と深呼吸を組み合わせたら、2ヶ月目で資料作成スピードが20%向上した」というような具体的な体験談が添えられていたら、その出どころは疑ってかかったほうがいい。こうした数字つきの「ケーススタディ」は、たいてい実在する調査ではなく、説得力を出すために作られた創作だ。実際に効果を検証した調査であれば、その調査自体を示せばいいだけの話である。

それでも、残しておいていい部分

誇張を取り除いても、実用的な部分は残る。準備に20秒以上かかる行動を、脳は無意識に面倒だと判断しがちだという指摘や、読みかけの本を開いたまま置いておく、道具を見える場所に出しておくといった「環境を先に整えておく」工夫は、行動科学でもよく紹介される手法だ。「今日はできなかった」と自分を責めるより、道具に触れただけでも十分だと考えるほうが、長続きしやすいというのも、経験則として妥当だと思う。

結び

趣味を、AIに代替されない「人間の堀」として身構えて磨く必要はない。小さく始めるという工夫自体は理にかなっているが、それを大げさな投資用語や、出どころの怪しい体験談で飾り立てる必要はないはずだ。

出典

Gollwitzer, P. M. (1999). "Implementation Intentions: Strong Effects of Simple Plans." American Psychologist, 54(7), 493-503.