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焚き火で穴が開いたジャケットを、買い替える前に

焚き火で穴が開いたジャケットを、買い替える前に

ゴア公式はパッチを「絆創膏」と呼び、焼け焦げは保証の外に置く。撥水と防水の違い、洗濯と熱で戻る範囲、PFAS規制、ポリウレタン衣料のクレームまで平均3〜6年。補修の境目を原典で確かめ直した。

TOMOAKI··リメイク

焚き火の火の粉で、ハードシェルに小さな穴が開いたことがある。

保温性の高いダウンを着てコンビニに行くくらいには道具を大事にしているつもりだったので、少し落ち込んだ。買い替えるほどの穴ではないが、放っておけば羽毛が少しずつ抜けていく。調べてみると、この手の穴は、たいてい自分で塞げる。その「たいてい」の中身を、今回は、メーカーの公式資料、試験規格、論文に当たって確かめ直した。撥水と防水の違い、洗濯と熱で撥水が戻るという定番の手入れ、撥水剤をめぐる化学物質の規制、そして、直せる範囲と寿命の境目。以前の版に書いたことのうち、誤りだったものも出てきたので、それも書く。

穴は塞げる。ただし、補修パッチは「絆創膏」と呼ばれる

補修の基本は、地味な手順だ。メーカーのGear Aid(Tenacious Tape)のFAQによれば、まずイソプロピルアルコールで汚れを拭き、ほつれ糸を切る。パッチは、角を丸く切り、損傷部分より全方向に少なくとも1/2インチ(約13ミリ)大きくする。貼り付けの適温は10〜40℃で、24時間で最大の強さになる。洗濯機にかけても大丈夫、とある。角を丸くする理由は、このページには書かれていなかった。アウトドアブランドのStioのブログは、「角が丸いほうが剥がれにくく、尖った角は何かに引っかかって剥がれやすい」と説明している。布用のパッチの角の形を比べた研究は、確認できなかったので、これは「引っかかりにくい」という経験則の域を出ない。

ダウンジャケットの場合、はみ出した羽毛を無理に抜かない、というのが定番だ。iFixitに掲載されたパタゴニアのチームの手順では、「羽毛を引き抜かないこと。ティッシュの箱のように、次々と出てくる」とあり、裏側から羽毛を区画に引き戻し、指でこすって熱を与えると、生地の繊維が隙間を閉じる。

ここで、見落としやすい公式の記述がある。GORE-TEXの公式サポートのページには、「パッチは恒久的な修理ではなく、絆創膏だ」と明記されている。パッチを貼った服は、「濡らさないことを保証する」というゴアの保証の対象外になる。さらに、保証の対象外として、穴、摩耗、焼け焦げ(burns)、壊れたボタン、ファスナー、ドローコード、面ファスナーが挙げられている。焚き火の穴は、そもそも保証の外にある。補修パッチを貼ったあとの扱いについて、ゴアは、帰宅後に認定修理業者に持ち込めば、パッチを跡なく除去できる、と書いている。

では、火の粉は、どれほど熱いのか。ウルバンらが2019年にFire Technologyに発表した研究(抄録による)は、赤熱する燠(おき)の温度を色高温計で測り、平均温度は、風速1メートル毎秒で750℃、4メートル毎秒で950℃だった。山火事や建物火災の「飛び火」の研究であって、キャンプの焚き火そのものの測定ではない。メリーランド大学のデッカーの学位論文(2020年、抄録による)でも、くすぶる薪の燠を撮影距離を変えて測った平均は931±6.2℃で、桁は同じだった。これらの燠の温度は、ナイロンやポリエステルの融点(おおむね220〜260℃前後。ナイロン6が約215〜225℃、ナイロン6,6とポリエステルが約255〜265℃とされるが、これは大学の資料などの二次情報で、ハンドブックの値は確認できなかった)の、私の計算では、およそ3〜4倍にあたる。小さな穴が開くのは、不思議ではない。

撥水が落ちるのと、防水が落ちるのは別の話

もう一つ、つい忘れがちなことがある。「最近、雨具が水を弾かなくなった」と感じるとき、壊れているのは防水性(水を通さない力)ではなく、撥水性(水を弾く力)のほうだった、ということがある。DWRが落ちても膜は防水を保つが、表地が水を含んで冷たくべたつく、という仕組みは、ゴアの公式の説明にも書かれている。

GORE-TEXの公式ページ「Durable Water Repellent (DWR)」によれば、メンブレン(膜)が防水、防風、透湿を担い、DWR(耐久撥水加工)は、服が濡れたようなべたつく感じを防ぐ快適性の要素だ。別のページには、DWRが失われても、メンブレンは防水を保つが、表地が水を含んで飽和し、「冷たく、べたつく」感じになる、とある。DWRの寿命を縮めるものとして、日焼け止め、汚れ、洗剤、虫よけが挙げられている。

以前の版は、撥水が落ちると表面に水の膜ができて、透湿孔がふさがれ、汗の逃げ場がなくなり、雨は入っていないのに内側から濡れる、と書いた。これは、公式の記述より一歩踏み込んでいる。ゴアのブログ(2017年)に最も近い記述があり、「表地の水が少ないほど、防水生地はよく透湿する」とある。「透湿が落ちる」と言い切ったゴアの公式文言は、確認できなかった。査読論文のホルムクヴィストらの2021年の研究(Journal of Cleaner Production、全文を確認した)には、油や水が孔をふさぐと水蒸気の移動が遅れ、汗ばんで冷える、という趣旨の記述がある。方向としては合っているが、「内側から濡れる」の大きさを測った数字は、見つからなかった。

ついでに、ゴアが膜を説明するときによく使う数字にも触れておく。ゴアのブログ(2015年)には、膜には1平方インチあたり90億の孔があり、その大きさは水滴の2万分の1、水蒸気の分子の700倍、とある。測り方の説明はなく、比較の物差しとして出された数字だ。水が通らず、湿気は通るという仕組みの説明としては分かりやすいが、手元のジャケットがどのくらい透湿するかを教えてくれる数字ではない。

撥水と防水は、試験の規格も別だ。JIS L 1092(繊維製品の防水性試験方法、2025年1月改正)は、耐水度試験(静水圧法)、はっ水度試験(スプレー試験)、雨試験(シャワー試験)に分かれる。はっ水度は、試験片を45度に設置して水を散布し、濡れの状態を1〜5級の見本と比べる。耐水度は、大阪府立産業技術総合研究所の技術シート(2015年、全文を確認した)によれば、A法(低水圧法)は最大970 cmAq、B法(高水圧法)は100 kPa毎分で最大970 kPaだ。この資料には、シリコーン樹脂で撥水加工した高密度の綿織物の耐水度が35 cmAq(約350ミリ)とある。

この規格には、対応する国際規格がある。公開されているプレビューによれば、耐水度試験はISO 811:2018、はっ水度試験はISO 4920:2012、雨試験はISO 9865:1991を基にしている。JISは、この三つの国際規格を基に、日本の実情に合わせて技術的内容を変更したもの(全体評価は修正採用)なので、海外の数字とそのまま同じ物差しとは言えない。また、どれも新品の生地を測った数字であることに変わりはなく、何回洗ったあとの値かは、別に問われなければならない。

耐水圧の数字は、独特の読み方が要る。モンベルの公式ページは、通常の雨なら約50〜約1,500ミリ、座った状態で約2,000ミリ、膝をついた状態で約10,000ミリの圧がかかるとし、レインウエアに20,000ミリ以上の素材を使うと書く。この目安の算出根拠は、記載がなかった。20,000ミリは、A法の上限を超えるので、B法域の値になる(1 cmAq≒0.0981 kPaとする私の換算で約196 kPa)。ジャケットの20,000ミリと、綿織物の350ミリは、桁が違う。

洗って熱を当てると撥水が戻る、は何に効くのか

撥水の回復は、洗濯と熱の組み合わせで、たいてい戻る。以前の版は、そう書いた。GORE-TEXの手入れのページによれば、洗濯は40℃で、液体洗剤を少量、すすぎを2回。粉末洗剤、柔軟剤、しみ抜き、漂白剤は使わない。乾いた後に、さらに20分、タンブル乾燥機にかけて、DWRを再活性化する。高温では乾かさない。乾燥機がなければ、アイロンを低温(ドット2つ)で、スチームなしで、当て布をして使う。洗っても水を弾かなければ、DWRを再塗布し、その後もう一度20分、タンブル乾燥する。アークテリクスの公式ガイドも、乾燥は低〜中温で40〜50分、乾いた後に20分の低温タンブルで再活性化し、DWRは通常10〜20回の洗濯で手入れが必要、としている。

ゴアの公式ページは、PFASを使わないDWRについて、油に弱いので手入れをより頻繁に行うとよい、と書いている。焚き火の煙と、調理の油はねと、日焼け止めと。キャンプの一日は、DWRにとって、敵の見本市のようなものだ。

洗う頻度の目安は、パタゴニア(オーストラリアの公式サイト)に書かれている。PFASなしの撥水は、7〜10回着たら、または長い旅の後。PFASありは、通常30回使用後に洗える。そして、DWRの性能を落とすものとして、汚れ、皮脂、日焼け止め、煙、ピーナツバターの汚れ、が挙げられている。煙も、撥水を削る。焚き火のそばに立つこと自体が、撥水を落とす原因になりうる、ということになる。

以前の版には、最近主流のフッ素フリー系の撥水剤は、熱を加えないと分子がうまく整列しないものが多いらしい、と書かれていた。これは、確認すると、シリコーン系などでは逆だった。繊維学会誌に載った2005年の研究(Leeら、抄録による)は、フッ素系樹脂で加工した布の撥水が、洗濯で低下し、熱処理で回復することは「一般に知られている」としたうえで、シリコーン樹脂で加工した布では、洗濯で低下した撥水の、熱処理による回復は「わずか」だったと報告した。ニクワックスは公式FAQで、「フッ素系の処理と違って、ニクワックスは自然乾燥でよい」「撥水ポリマーと生地の結合に、熱を必要としない製品を作った」と書く。つまり、「乾燥機で撥水が戻る」という定番の手入れは、フッ素系の撥水を前提にした知恵だった可能性がある(これは私の推論だ)。ただし、PFASを使わないDWRへ移りつつあるゴアも、今の手入れのページで乾燥機の熱を勧めている。熱が要るかどうかは、撥水剤の種類しだいで、一つの答えにはならないのだろう。

熱で戻る仕組みについても、衣料用のDWRについて、洗濯で倒れた撥水基が、熱で再び立ち上がる、という現象を直接測った論文は、見つからなかった。液体に触れると表面の分子が並び替わる「表面再構成」の一般論は、ミルンズ=スミスらの2022年のLangmuirの論文にあるが、乾燥や加熱で元に戻るかどうかは、試験していない。「洗濯で撥水基が倒れ、熱で立ち上がる」という説明は、「と考えられている」にとどまる。

さらに、洗濯後の撥水の残り方は、撥水剤の種類だけでは決まらないらしい。ホルムクヴィストらの2021年の研究は、シェレンベルガーらの2018年の試験(この研究の紹介による)で、洗濯後の撥水性が、同じDWRを使った生地どうしでも、DWRの種類を変えたのと同じくらいばらついたため、DWRごとの性能のパラメータを定められなかった、と書いている。「どの撥水剤か」と並んで、「どの生地か」も、同じくらい効くことになる。

撥水剤の化学は、誰が測ったかで結論が変わる

「撥水を戻す」という地味な作業は、環境規制の話とつながっている。長く使われてきたフッ素系の撥水剤には、PFOAやPFOSなどのPFAS(有機フッ素化合物)が関わってきた。日本では、PFOSが2010年に、PFOAが2021年に、化審法の第一種特定化学物質に指定されたとされる(環境省や厚生労働省の資料を引いた二次情報による)。フランスでは、2025年2月27日の法律と、同年12月28日の施行令にもとづき、2026年1月1日から、一般消費者向けの衣料用繊維製品、靴、それらの撥水剤について、PFASを含むものの製造、輸入、輸出、販売が禁止されている。2026年1月1日以前に製造したものは、12か月の猶予がある。環境移行省のFAQ(2026年5月版)が根拠で、FAQ自体に法的な効力はない。欧州では、2023年にデンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンが欧州化学物質庁に包括的なPFAS制限案を提出した。その後の更新案でも、一般向け衣料とキャンプ用品には適用除外が提案されていない、と業界団体の解説にある(二次情報で、欧州化学物質庁の公式ページは確認できなかった)。

フッ素フリーの撥水は、フッ素系より劣るのか。シェレンベルガーらの2019年の研究(Journal of Cleaner Production、全文を確認した)では、油はじき(ISO 14419)が、C8で5.5、C6で3.8、C4で2.5、フッ素フリーはすべて0だった。水滴の転落角は、最良のフッ素フリー(炭化水素系)が22〜23度で、C6の16.8度に近かった。一方で、消費者調査(2014年、n=300、オンライン)では、57パーセントが「油、泥、汚れへのはじきは必須でない」と答えた。この論文は、洗濯後の耐久性を報告していないので、「フッ素フリーは長持ちしない」の根拠には使えない。

耐久性について、結論が割れた比較がある。ゴア自身が2015年に出したライフサイクル評価の要約(全文を確認した)は、ブラインドの試験(左右で撥水剤を変えたジャケット)の結果から、フッ素系の短鎖撥水は年2回の洗濯と再撥水、フッ素フリーは年26回の洗濯と再撥水が必要、という使用シナリオを置き、温暖化負荷を、短鎖が55.1、フッ素フリーが153.64 kg CO2換算と計算した。フッ素系を売る側の自社調査で、毒性も評価し、第三者によるレビューも受けている。毒性の指標でも、フッ素フリーを使うことが最大の悪化要因とされた。これに対し、独立した査読論文のホルムクヴィストらの2021年の評価は、洗濯や再撥水が増えても、PFASの毒性の影響を上回らず、PFASなしのジャケットが環境的に望ましい、と結論した。同じ問いに対して、誰が測ったかで結論が反転する。

この比較には、前提の置き方で結論が動くという側面もある。ホルムクヴィストらの基本シナリオは、5年で2,129回の着用(4〜10月に1日2回、30分の通勤)、洗濯は年2回、再撥水は2回に1回、という生活を想定している。年26回という数字がどれほど重いかは、着る頻度しだいのはずで、これは私の推論だ。ゴアの報告書自体も、年26回の洗濯と再撥水は、生活者がまず受け入れないので、実際には早期の買い替えにつながるだろう、と書いている。ゴアのLCAではジャケットは平均900グラムの2層ナイロンで、寿命は5年と置かれ、温暖化負荷の53パーセント超が生産段階にあるとされた(どのシナリオの値かは要約に明記がない)。この53パーセントはおそらく年2回のシナリオの値だ。生産段階の負荷(55.1の53パーセントで約29 kg CO2換算)が同じだと仮定して、年26回のシナリオの合計(153.64)で割ると、約19パーセントになる(私の計算)。手入れが少なく済む場合に限れば、洗濯より、作ること自体のほうが重いことになる。穴を塞いで長く着ることの意味は、ここにもある。

アウトドア衣類のPFASを測った検査もある。グリーンピースが2016年に出した報告書(環境団体の自主検査で、査読研究ではない)は、19か国・地域で購入した40製品を検査し、PFCが検出されなかったのは4製品だけだった。11製品でPFOAが1マイクログラム毎平方メートルを超えた。この数字は、団体が選んだ製品の検査であって、市場全体の割合ではない。

寿命は、どこで来るのか

撥水は手入れで戻る。では、戻らないものは何か。以前の版は、生地の表面がボコボコと浮いてきたら内側のメンブレンが剥離しているサイン、裏地から白い粉が落ちるのはポリウレタンコーティングの加水分解、と書いていた。後者の「白い粉」の具体的な記述は、公式資料では確認できなかった。確認できたのは、ポリウレタン加工の衣料の劣化についての研究だ。

熨斗秀夫らが、デサントスポーツ科学(Vol.13)に書いた研究(刊行年は確認できず、1990年前後と推定される)は、繊維製品技術研究会のクレーム分析を引いて、ポリウレタン加工の衣料は、販売からクレームが出るまでの経年が平均3〜6年、原因別では、はく離が約60パーセントで、事故はクリーニング時に集中する、と報告している。JIS L 0848の人工汗液を5倍の濃さにした促進試験では、人工汗液のジャングル試験(70℃、95パーセント以上の湿度)の1日が、通常のジャングル試験のおよそ6日に相当した。汗が劣化を早めることを示唆している。業界で定着している「ジャングル試験1週間=実使用1年」を当てはめると、耐用年数の目安が立つ、とも書かれている。

デサントの研究には、もう少し細かい知見も書かれている。劣化の影響が最も大きいのは、分子どうしの結びつきが弱い接着層で、その劣化が浮き上がりやはく離として現れる。ドライクリーニングの溶剤(パークロロエチレン)への耐性は、ポリエーテル系が低い、とある。出荷前の在庫を想定した1年(15か月)の放置では、大きな変化は出なかった。倉庫に積んであるだけなら大丈夫で、汗と洗濯の中で使われるときに進む、ということらしい。なお、ポリエステル系のポリウレタンが加水分解に弱く、ポリエーテル系は強い、というのは特許文献や業界資料にある一般論で、この研究で測られたものではない。

ゴアの苦情窓口の分析では、最初の苦情が出るまでの平均は5.5年だった(ゴアの2015年のLCA)。GORE-TEXの公式ページは、メンブレンは時間で劣化しない、と書くが、ジャケットの寿命は「あなたしだい」とも書く。アークテリクスの公式ガイドは、汚れがGORE-TEXのはく離を起こしうる、と書くが、皮脂や日焼け止め、虫よけが接着層を攻撃する具体的な仕組みは、公式資料にも学術資料にも見つからなかった。

保管についても、定量的な資料は少ない。スタッフバッグに小さく畳んだまま、押し入れの奥にしまっておくと、日本の夏は加水分解を早める、と以前の版は書いた。モンベルのダウン製品の取扱説明書には、「長期間使用しない場合は、圧縮したままの状態で保管しないでください。乾燥後に大きな通気性のある袋に収納し、日陰の風通しの良い場所で保管してください」とある。これはダウンの話で、シェル(ラミネート)の劣化を、圧縮保管が早めるという定量的な資料は、見つからなかった。ゴアの手入れのページには、保管の指示がなかった。洗って乾かしたら、吊るして風を通しておく、というのは、理にかなった常識に見えるが、証拠がある話ではない。

火に強い生地、という別の話

焚き火のそばで着る服が何でできていればよいかは、今回は調べきれていない。テントなら、ポリコットン(綿とポリエステルの混紡)は火の粉に強いと言われる。DODのポリコットン幕体は65パーセントポリエステルと35パーセントの綿で、火の粉には強いが耐火ではない、テンマクデザインも防炎加工ではない、と説明している(販売サイトの記述で、二次情報)。テントについても、ポリコットンに火の粉を当てた独立の試験は見当たらなかった。

溶ける化繊と、燃えやすい布の組み合わせには、少し怖い研究がある。石橋博と浜崎洋子が1987年に鹿児島県立短期大学の紀要に書いた研究(抄録を検索結果経由で確認した)は、ポリエステルの表地は、溶けて滴り炎から離れるため、単独では燃えにくいが、燃えやすい裏地と組み合わせると、滴下できずに激しく燃えることがあり、燃えやすい布の表地と溶ける裏地の組み合わせは、溶融物が身体に接触する危険が最大だと報告している。ただし、これは炎の中での燃え方の研究で、火の粉が一点に当たる場面や、私のジャケットの裏地には、そのまま当てはまらない。

どこまでが直せて、どこからが寿命か

なんでも直せるわけではない。生地の表面が浮いてきたら、メンブレンの剥離を疑う。デサントの研究では、接着層の劣化は浮き上がりやはく離として現れるとされ、一度はがれた接着が家庭で戻るという資料は、探した範囲では見つからなかった。シームテープ(縫い目の防水テープ)の剥がれは、部分的なら補修できるが、全体的に剥がれてきているなら寿命が近いと見ていい、というのが以前の版の整理で、家庭でシームテープを再接着する公式の手順は、確認できなかった。

ここまで調べて、整理し直すと、直せるのは、小さな穴と、撥水の低下までだ。それも、パッチは「絆創膏」で、撥水の手入れは、撥水剤の化学しだいで前提が変わる。直せない側にあるのは、ポリウレタンの劣化で、クレームが出た製品では、販売から平均3〜6年(刊行年が1990年前後と推定される研究の引用)という数字で来ていた。寿命が来ることを前提に、手入れと補修で延ばせるところまで延ばす、というのが、現実的な付き合い方なのだと思う。

新品を買う楽しさもわかる。ただ、火の粉で穴が開いたくらいで手放すには、まだ早いのではないか、と私は思う。水滴が玉になって転がり落ちるのを見ると、それなりに満足感がある。次にどこを汚しに行くかは、まだ決めていない。

出典

  • GORE-TEX「Durable Water Repellent (DWR)」、同「Restoring water repellency」(GORE-TEX Professional)、同ブログ「How to Restore the Durable Water Repellency of Your Raingear」(2017)、同「Care Instructions for GORE-TEX outerwear」、同「The GORE-TEX membrane won't deteriorate with time」、同サポート「repairs」「guarantee-and-returns」、同ブログ「How to repair your GORE-TEX gear」(2022)
  • W. L. Gore & Associates「Life Cycle Assessment of DWR treatments on waterproof, windproof and breathable jacket. Summary report」(2015)
  • Schellenberger S. ほか (2018) の洗濯後の撥水性の試験(Holmquist ほか (2021) の紹介による)/ GORE-TEX ブログ「lab」(2015)
  • Gear Aid「Tenacious Tape FAQ」/ Stio「How to patch gear in need of repair」(ブログ。角の形の説明は経験則の域)
  • iFixit「How to Pull Feathers Back Into a Down Item」(パタゴニアのチームによる手順)
  • パタゴニア(オーストラリア公式)「How to Wash Your Waterproof Jacket」/アークテリクス「GORE-TEX home wash guide」/Nikwax 公式 FAQ
  • モンベル 公式ウェブショップ(レインウエアのカテゴリページの耐水圧の目安)、ダウン製品の取扱説明書(文書番号 29-113-2509)
  • 日本産業規格 JIS L 1092:2025「繊維製品の防水性試験方法」(公開プレビュー)/京都府織物・機械金属振興センター「はっ水度試験」/大阪府立産業技術総合研究所 技術シート No.14006(2015)
  • ISO 811:2018、ISO 4920:2012、ISO 9865:1991(JIS L 1092 の序文による)/ フランス Loi n° 2025-188 と Décret n° 2025-1376(環境移行省 FAQ による)/ ナイロン・ポリエステルの融点(大学の資料などの二次情報)
  • Decker K. (2020, メリーランド大学) "Imaging Pyrometry of Smoldering Wood Embers at Various Distances and Illuminations"(学位論文。抄録による)
  • Urban J.L., Vicariotto M., Dunn-Rankin D., Fernandez-Pello A.C. (2019) "Temperature Measurement of Glowing Embers with Color Pyrometry" Fire Technology 55:1013–1026(抄録による)
  • Lee M. ほか (2005) "Change of Surface Characteristic of Cotton and Polyester Fabrics Treated with Silicone Resin by Washing and Subsequent Heat Treatment" 繊維学会誌 61(11):309–312(抄録による)
  • Schellenberger S. ほか (2019) "Highly fluorinated chemicals in functional textiles can be replaced by re-evaluating liquid repellency and end-user requirements" Journal of Cleaner Production 217:134–143
  • Holmquist H. ほか (2021) "What difference can drop-in substitution actually make? A life cycle assessment of alternative water repellent chemicals" Journal of Cleaner Production 329:129661
  • Greenpeace e.V. (2016) "Leaving Traces: The hidden hazardous chemicals in outdoor gear"(環境団体による自主検査。査読研究ではない)
  • フランス環境移行省「PFAS 政令 FAQ」(2026年5月27日版。FAQ 自体に法的効力はない)/欧州アウトドア団体 European Outdoor Group「EU updates PFAS restriction proposal」(二次情報)/厚生労働省・経済産業省・環境省「ストックホルム条約の新規対象物質の化審法第一種特定化学物質への指定について」(2022。PFOS・PFOA の指定年は検索結果経由の二次情報)
  • Milnes-Smith E. ほか (2022) "Surface Reconstruction of Fluoropolymers in Liquid Media" Langmuir 38(15):4657–4668(表面再構成の一般論。衣料用 DWR の加熱回復は試験していない)
  • 熨斗秀夫・浦畑俊博・辻阪新二・古川元彦「スポーツウェアの品質評価に関する研究―ポリウレタン加工素材の経時劣化に対する評価方法の確立について―」デサントスポーツ科学 Vol.13(刊行年は未確認)
  • 石橋博・浜崎洋子 (1987)「多重層布の燃焼性状:衣服の表地と裏地との組み合わせ」鹿児島県立短期大学紀要 自然科学篇 38:35–50(抄録による)
  • DOD、テンマクデザインの製品説明(ポリコットン幕体の火の粉への強さ。販売サイトの記述で二次情報)
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