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プロテイン30分ルールの犯人には、完璧なアリバイがあった
プロテインを摂り遅れると筋トレが無駄になる、というルールの一次資料をたどると、70代・未経験者・わずか13人の実験に行き着く。効いているのは時計ではなく、別の数字だった。
筋トレの後、時計を気にした経験がある人へ
ジムでバーベルを置いた瞬間から、頭のどこかでタイマーが動き出す。「30分以内にプロテインを摂らないと、この日のトレーニングが無駄になる」。この「アナボリックウィンドウ(同化の窓)」と呼ばれる考え方は、筋トレをする人のあいだでほとんど常識のように扱われている。ロッカーに走ってシェイカーを振る光景を、ジムで見たことのない人は少ないだろう。飛行機の乗り継ぎで搭乗ゲートに駆け込むときのような、あの独特の焦りが、トレーニングのたびに再演されている。
この切迫感の出どころをたどると、少し拍子抜けする。よく引き合いに出される根拠は、2001年に発表された研究一本にほぼ集約される。対象は70代の高齢男性、それも過去5年間レジスタンス訓練の経験がない人たちだった。しかも人数はわずか13人、内訳は運動直後にプロテインを摂った群が7人、2時間後に摂った群が6人という、途中で1人が脱落した結果の半端な数字である。12週間、週3回のトレーニングを比較しただけの、規模としてはごく小さな実験にすぎない。しかも比較対象は「摂らない群」ではなく、あくまで「摂るタイミングの違い」であって、そもそもタイミングを問わない「摂取そのものの効果」との比較にすらなっていない。ジムで多くの人が守っている掟の一次資料が、実は片手で数えられる人数の、しかも自分たちとは体力条件の違う集団の実験だった、というのはよく考えると奇妙な話だ。12週間のトレーニング後、直後群では太ももの筋肉の断面積が7パーセント増えたのに対し、2時間後群では有意な変化がなかった、という結果自体は確かに劇的に見える。筋力についても同様の分かれ方をしていて、直後群は5RMで測った動的筋力が47パーセント上昇し、関節を一定の角速度で動かして測る等速性筋力も、60度毎秒の条件で24パーセント、180度毎秒の条件で21パーセント、いずれも有意に上昇した。対する2時間後群では、動的筋力の36パーセント上昇のみが有意で、等速性筋力のほうはどちらの角速度でも有意な増加が確認されなかった。
ただし、この差が「70代・未経験者・わずか13人」という特殊な条件を離れても再現される保証は、この一本だけでは得られない。研究の著者自身も、被験者の少なさをこの研究の限界として論文の中で認めており、群間の筋肥大の差が「比較的少ない被験者数の結果である可能性を排除できない」と明記している。それだけではない。成長ホルモンやコルチゾール、インスリン様成長因子1(IGF-1)といった、筋肉の同化に関わるホルモンの変動そのものは、この研究では測定されていないとも書かれている。運動そのものがこれらホルモンの分泌を一時的に変化させることは以前から知られており、「プロテインのタイミングが効いた」という結論の裏で、実はホルモンの日内変動という、まったく別の要因が紛れ込んでいた可能性を、著者たち自身が完全には否定できていない。さらに、被験者の訓練が朝の早い時間帯に行われていたことが、他の研究との比較を難しくしている可能性にも触れている。一つの実験室での出来事を、あらゆるジムに通う人の共通ルールへと格上げしてしまう飛躍が、この通説の出発点にはある。
タイミングの効果は、統計の一操作で消えた
この小さな研究の後、より大規模な検証が行われている。2013年、研究者ブラッド・シェーンフェルドらは、筋力と筋肥大それぞれについて過去の研究を統合したメタ分析を発表した。筋肥大に関する分析だけで23本の研究、47の治療・対照群、525人分、132の効果量を束ねたもので、まず単純にタイミングの効果を見ると、統計的に意味のある差(効果量の差0.24、p=0.02)が出た。プロテインを早く摂った群のほうが、確かにわずかに有利だったのである。ここまでなら、通説は裏付けられたように見える。
ところが、この論文の核心はここからだ。分析に「1日の総タンパク質摂取量」という変数を一つ加えて調整すると、タイミングの効果はほとんど消えてしまう(効果量の差0.14、p=0.19)。統計上、有意とは言えなくなる。まるで犯人だと思い込んでいた人物に完璧なアリバイがあったと分かるような展開である。実際に効いていたのは「いつ摂ったか」ではなく「一日を通してどれだけ摂ったか」だった、ということになる。体重1キロあたりの摂取量は、単独で見ても最も強い予測因子で、0.5グラム増えるごとに効果量がおよそ0.2ずつ上がっていった。タイミングという小石にばかり気を取られて、総摂取量という大岩を見落としていた、と言い換えられる結果である。別の大規模な系統的レビュー(49本の研究、1863人分を統合したもの)でも、体重1キロあたり1.6グラムを超えて摂取量を増やしても、それ以上の上乗せ効果は見られなかったという頭打ちの数字が示されている。体重1キロあたり1.6グラムというのは、あくまでこのレビューが束ねた集団の平均から浮かび上がった頭打ちの位置であって、個々の体格や訓練歴によってどこまで動くかは、この数字だけでは決まらない。それでも、タイミングという一点に賭けていた説明が、量という別の変数に置き換わった、という構図自体は動かない。
もっとも、この犯人探し自体にも異論が出ている。2016年、同じ学術誌に寄せられたコメントで、研究者デイヴィッド・ビールは、そもそも束ねられた23本のうち20本は「プロテイン対プラセボ」という比較であり、それらのどれも群間で1日の総タンパク質摂取量を揃えていなかった、という点を指摘した。タイミングという問い自体に本来答えられる研究、つまり総摂取量を揃えた上でタイミングだけを変えた比較は、23本のうちわずか3本、合計77人分しか残らないという計算になる。525人という数字の大きさが、そのまま検証の確かさを保証するわけではないらしい。犯人にアリバイがあったという展開そのものが、実は容疑者リストの作り方に疑問符がつく、という一段深いところで揺らいでいるわけである。ビールはさらに、525人という被験者総数の大きさを根拠に「これだけの人数を集めたのだから統計的な検出力は十分だ」という含意で語られがちな点にも疑問を呈している。実際にタイミングの問いに答えられる研究がその一部の3本、77人分だけなのだとすれば、母数の大きさは検出力の高さをそのまま保証しない。大人数を集めた調査ほど信頼できるという直感も、集め方次第では裏切られる、というもう一つの教訓がここに重なる。とはいえ、この指摘に対してシェーンフェルドらから正式な反論が出されたという記録は見当たらず、この論争自体、決着がついたわけではない。
ただし「タイミングは無意味」というのも、言い過ぎではないか
話をここで終わらせると、今度は別の見落としが生まれる。2013年に発表された、訓練経験者24人(8人ずつ3群に分割)を対象にした実験では、運動後12時間で合計80グラムのタンパク質を摂取させ、その配り方だけを変えて比較している。1.5時間ごとに10グラムずつ細かく摂る群、3時間ごとに20グラムずつ摂る群、6時間ごとに40グラムずつまとめて摂る群。測定されたのは、筋肉の収縮に直接関わる筋原線維タンパク質(ミオフィブリラー・タンパク質)の合成速度で、安定同位体でラベルしたアミノ酸を使い、12時間の回復期間を通じて追跡している。結果、この合成速度が最も高まったのは3時間ごとに20グラムというペースで、細かすぎる群にもまとめすぎる群にも31から48パーセントの差をつけて上回った(p<0.02)。少しずつこまめに水をやりすぎる植物と、たまに一度に大量の水をやる植物、どちらも根が傷みやすいのと、どこか似た構図である。総量が同じなら配分はどうでもいい、という単純な話でもなかったのだ。
さらに別の研究では、この「1食20グラムで十分」という数字自体にも留保がつく。この20グラムという数字の出どころは、2009年に発表された、下半身の運動だけを行わせた6人の実験にさかのぼる。0、5、10、20、40グラムという5段階のタンパク質量を、同じ被験者に日を変えて試させたところ、筋タンパク質合成は20グラムのところで頭打ちになり、それ以上増やしても上積みは見られなかった。この2009年の実験でもう一つ分かっているのは、20グラムを超えた分のタンパク質がどこへ消えるかである。摂取量を増やすほど、体内で燃やされる(酸化される)ロイシンの量も増えていくことが、同じ実験の中で確認されている。筋肉の材料として使われなかった余剰分は、ただ捨て置かれるのではなく、エネルギー源として燃料に回されていた格好になる。20グラムという数字が「上限」だと言われる根拠は、単に合成量が頭打ちになるからだけでなく、それを超えた分の行き先が別の代謝経路にすり替わっている、という点にもある。ところが2016年、全身を使うトレーニングの後で同じ問いを検証した研究では、様相が変わる。40グラムを摂った群のほうが、20グラムを摂った群よりおよそ20パーセント高い合成率を示したのである。動かす筋肉の量が多ければ、必要になる量も変わる。一つの数字を万人に当てはめようとする発想は、ここでもまた足をすくわれる。通説を覆したつもりの「20グラムで十分」という新しい定説さえ、運動の種類次第で書き換わるのである。この二つの実験を並べると、「量が一定なら細かく分けても意味はない」という直感も、「一食あたりの上限は決まっている」という直感も、どちらも部分的にしか正しくないことになる。答えは常に「場合による」に落ち着くわけではないが、少なくとも一行のルールに圧縮できるほど単純な話ではない、ということは繰り返し確認されている。
筋肉そのものの反応速度は、30分よりずっと遅い
アラゴンとシェーンフェルドの議論は、あくまで既存研究を統合した理論的な整理だった。では、筋肉の中で実際に何が起きているのかを直接測った実験はあるのか。1995年、運動生理学者ダンカン・マクドゥーガルらのチームが、学術誌Canadian Journal of Applied Physiologyに発表した研究がその一つにあたる。対象はレジスタンス訓練の経験を積んだ健康な若い男性6人。片腕だけで上腕二頭筋の運動を12セット行わせ、もう片方の腕を対照として、安定同位体でラベルしたロイシンを11時間かけて持続的に注入し、その取り込み速度から、筋タンパク質合成の速度そのものを両腕の生検で測定した。
結果は、直感的な「運動直後がピーク」という予想を裏切るものだった。筋タンパク質合成の速度は、運動から4時間後の時点で対照群より50パーセント高く、24時間後の時点ではさらに上回って109パーセント高かった。つまりピークは30分後どころか、4時間後ですらなく、24時間後付近にある。そこから先は急速に落ち着き、36時間後には対照群との差が14パーセントまで縮まり、統計的にはもはや有意な差と言えない水準に戻っていた。合成速度が実際に高い状態を保っていたのは、数十分ではなく、丸一日に近い時間だったことになる。「同化の窓」という比喩を字義通りに受け取るなら、その窓はガレージのシャッターのように一瞬で降りるものではなく、丸一日かけてゆっくり開いてゆっくり閉じる、大きな窓ということになる。統計的な有意差が消えたという先のメタ分析の結果と、この筋肉自体の反応速度を測った実験は、別々の角度から同じ結論を指している。30分という数字は、統計上根拠が薄いだけでなく、それが説明しようとしている生理現象そのものの時間スケールとも噛み合っていない。
ただし、この実験結果を「筋肉合成が高まっているのだから、あとは食べるだけでいい」と読むのも、また一つの飛躍になる。マクドゥーガルらは論文の考察で、測定しているのはあくまで筋タンパク質の「合成」速度であって、実際に筋肉が育つかどうかは、それと同時に進む「分解」速度との差し引きで決まる、と釘を刺している。運動によって筋線維そのものに微細な損傷が生じ、分解のほうも合成と並行して高まることが知られており、合成速度の上昇だけを見て安心するのは、収入が増えたことだけを見て、支出の増加を勘定に入れないようなものである。差し引きでどれだけ残るかは、この実験単体では測られていない。合成の数字だけを見て一喜一憂するのは、売上の伸びだけを見て利益を語るのと同じ早合点になりかねない。
いつ食べたかより、その前に何を食べていたかが効くらしい
ここまでの話をまとめると、30分という区切り自体には強い根拠がないが、摂取のペースにはそれなりの意味がある、という中間的な結論になる。もう一段踏み込むと、この「意味の強さ」自体が、トレーニング前の状態によって変わってくることも分かっている。研究者アラゴンとシェーンフェルドは2013年の論文で、この「窓」という比喩そのものに疑問を投げかけている。数十分しか開いていない狭い隙間ではなく、条件次第では数時間規模まで広がりうる、というのが彼らの主張である。
その窓の幅は、トレーニング前に何も食べていなかったかどうかで変わる。起きてすぐ空腹のまま体を動かした場合は、体内の血中アミノ酸濃度が下がった状態が続くので、運動後すぐに栄養を入れることに一定の理屈がある。一方、トレーニングの1〜2時間前に食事を済ませていた場合、その食事の消化・吸収は運動後何時間も続いており、直後に慌てて追加する緊急性は薄い。この点を直接検証した実験もある。研究者ケビン・ティプトンらが2001年に発表した研究では、6人の被験者に、必須アミノ酸と炭水化物のサプリメントを運動の直前に摂らせる条件と、運動の直後に摂らせる条件を、日を変えて両方試させた。大腿の血流にカテーテルを入れて出入りするアミノ酸の量を直接測ったところ、脚の筋肉に正味で取り込まれたフェニルアラニンの量は、運動前に摂った条件では209ミリグラム、運動後に摂った条件では81ミリグラムと、2倍以上の開きがあり、この差は統計的にも明確だった(p=0.0002)。研究者たちが挙げている理由は単純で、運動の直前に摂ったアミノ酸のほうが、運動によって血流が増した脚の筋肉により多く運ばれ、供給そのものが増える、というものだ。「早く摂るべきか」という発想を、「運動中に血流が高まっている間に、材料がすでに体内を巡っているかどうか」という発想に置き換えると、直後にこだわる理由は薄れていく。摂るタイミングを運動の前か後かに動かしただけで、これだけ結果が変わったという事実自体は、タイミングという要素をまるごと無視してよいわけではないことも示している。同じ「運動後30分」というルールでも、空腹で始めたか、満腹で始めたかによって、意味のある助言にも、ほとんど意味のない儀式にもなる。掟を守っているつもりで、実は自分の胃の状態を無視していただけ、ということが起こりうる。朝食を抜いて出社前に走り込む人と、昼休みに食後1時間でジムに寄る人とでは、同じ「運動後30分ルール」の重みがまるで違う。前者にとっては理にかなった助言でも、後者にとってはすでに開いている扉をわざわざノックしに行くような、意味の薄い行為になりかねない。
配分の単位は、一食ではなく一日
ここまでの配分の話は、運動後の一食に限られていた。では、その一食を含む一日全体で見たとき、配分の仕方はどれだけ効いてくるのか。栄養学者メレディス・マメロウらが2014年に学術誌The Journal of Nutritionに発表した研究は、この問いを運動と切り離して検証している。対象は健康な成人8人。朝食・昼食・夕食の三食に、タンパク質をほぼ均等(各食約30グラム)に配る条件と、実際の食生活でよくあるように偏らせる条件(朝およそ10グラム、昼およそ16グラム、夜およそ63グラムという、夕食に極端に偏った配分)を、それぞれ7日間ずつ試させ、その間に30日間の間隔を挟んで条件を入れ替える、クロスオーバー形式で比較した。一日の総摂取量は、二つの条件でそろえてある。
結果、24時間の筋タンパク質合成速度は、均等に配った条件のほうが、偏らせた条件よりおよそ25パーセント高かった。総量は同じなのに、配り方を変えるだけでこれだけの差が出る。多くの人の実際の食生活は、朝は炭水化物中心でタンパク質が少なく、夜にまとめて摂る形に偏りがちだが、その偏り自体が、体内で使われるタンパク質の効率を目減りさせている可能性がある。運動直後の一食をどう配分するかという、ここまで見てきた狭い話は、実は一日全体という、もっと広い枠の中の一部分にすぎなかったことになる。財布に同じ額のお金を入れておいても、月末に一気に使うのと、毎週均等に使うのとでは、生活の回り方が変わってくるのに近い。この差は、7日間という比較的長い期間、同じ食事パターンを続けさせたあとの測定でも、ほぼ変わらずに残っていた。体が新しい配分に慣れて差が縮まる、ということは起きていない。8人という小規模な実験であることには注意が要るが、一食あたりに使える量には上限があるらしいという先の研究群(下半身の運動で20グラム、全身運動で40グラムという頭打ちの数字)と、この結果を並べると、輪郭がもう少しはっきりする。一食にまとめて大量に摂っても、その分がそのまま合成に回るわけではなく、上限を超えた分は先述の通り酸化されて燃料に回され、いわば取りこぼされる格好になる。夕食に63グラムを寄せる食べ方は、まさにこの取りこぼしが起きやすい配り方だったわけである。だとすれば、一日の総量を数回に分けて、それぞれの上限に収まる範囲で配る食べ方のほうが、理屈の上では無駄が少ない、ということになる。
壁の時計より、その日一日で数えるべきものがある
並べてみると、「30分」という数字は、拍子抜けするほど薄い根拠の上に立っていた。それでも、プロテインの摂り方そのものが無意味だという話には、当然ならない。1日にどれだけの総量を摂るか、その量を一食あたりの上限を意識しながら数回に配分するか、そしてトレーニング前の胃の中身がどうだったか。効いているのはこの三つであって、壁の時計ではない。筋タンパク質合成の速度そのものが24時間かけて山を描くという生理学の側の証拠と、統計上の効果がタイミングではなく総量に吸収されてしまうという疫学の側の証拠が、別々の実験室から同じ結論に合流している点は、単なる偶然にしては、あまりにも出来すぎている。もっとも、その疫学側の証拠自体、束ねた研究の質を疑う声から完全に無傷というわけでもない。一つの物語を覆した先に、また別の留保が待っている、という入れ子の構造そのものが、この話題の実情に近いのだろう。「30分ルールは誤りだった」で止まっていた段階から、「メタ分析の総量という説明も、その内訳を洗うと心もとない」という段階まで、疑いの矛先は一段ずつ奥へと進んでいく。それでも、20グラムや40グラムという一食あたりの上限、24時間かけて配る効果、運動前の胃の状態といった個々の実験結果は、それぞれ別の被験者・別の測定方法で繰り返し似た方向を指しており、そこまで積み上がったものが土台から崩れているわけではない。シェイカーを握りしめて更衣室を走る必要はなく、その日一日でどれだけ食べたかを、もう少し長い目で数えておけばいい話だったのかもしれない。「今すぐ摂らないと手遅れになる」という切迫した物語と、「一日を通して十分な量を、無理のない範囲で分けて摂る」という地味な事実のあいだには、これだけの開きがある。
体は、ストップウォッチで管理されるほど単純にはできていないらしい。一回のトレーニングの後に何をどれだけ急いで摂ったかより、その週、その月にどう食べ続けてきたかのほうが、筋肉にとってはよほど重みを持つ。壁の時計が刻んできた30分という数字は、その重みに見合うほどの根拠を、最後まで持ち合わせていなかった。ロッカーへ走る足取りが速いか遅いかで結果が大きく変わるほど、体は几帳面にはできていない。几帳面さを発揮する場所があるとすれば、それは更衣室までの数十秒ではなく、一週間分の食卓の方なのかもしれない。
出典
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