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コスパのいい趣味。月契約のジム会員の8割は都度払いが得だった

コスパのいい趣味。月契約のジム会員の8割は都度払いが得だった

コスパの分母は値札だけで決まらない。月契約のジム会員の8割は都度払いのほうが安く、経験にお金を使う優位は補正で縮む。図書館から道具まで、よく挙がる六つの趣味の向き不向きを見直す。

TOMOAKI··趣味

コスパという言葉は、何を割っているのか

「コスパのいい趣味」と検索すると、初期費用、ランニングコスト、こんな人におすすめ、という比較表が並ぶ。並べるほど選ぶ材料は増えるはずなのに、どれも似たように見えてきて、選べなくなる。たとえばそういう人がいる。

コスパは、費用で効用を割った値だ。ところが、この割り算のうち、費用の欄だけが数字で埋まっている。効用の欄は、人によって、時期によって、同じ人でも活動によって違う。「お金をかけない」ことを基準にした記事が増えるのは、割り算の分母だけが測りやすいからだろう。

この記事は、費用と、使った回数と、時間と、制約と、報酬を、一つずつ切り分けて見る。結論を先に言えば、「安い趣味ほど続く」という図式を、手元の研究や統計は支えていなかった。そのかわり、安さの陰で効いているらしい変数がいくつか見える。最後に、「コスパのいい趣味」として挙がりやすい活動を、図書館で読む、歩く、家で作る、習い事、道具を買う、配信で見る、の六つに分けて、向き不向きを並べる。ランキングにはしない。

日本の家計は、趣味に何を払っているか

総務省の家計調査(2025年、二人以上の世帯)で、教養娯楽の支出は月に30,796円で、消費支出(314,001円)の9.8%だった。内訳は、教養娯楽用耐久財が2,461円、教養娯楽用品が7,541円、書籍・他の印刷物が2,864円、教養娯楽サービスが17,931円。サービスのなかには、宿泊料(2,573円)、パック旅行費(2,963円)、月謝類(2,638円)が含まれる。

「本」は、品目別の年額を見るとさらに小さい。書籍は年に7,201円、月にならすと約600円で、新聞(年24,397円、月約2,030円)の3分の1ほどだ。ペットのフードと動物病院代を合わせた年21,212円は、書籍の約2.9倍にあたる(年額から計算した派生値)。お金のかからない趣味の代表として読書が挙げられるが、家計が書籍に払う額は、もともと小さい。

所得別に並べると、様子が分かれる。年間収入十分位で、教養娯楽は第1十分位が月15,536円、第10十分位が56,282円で、3.6倍開く。宿泊料は7.4倍、月謝類は7.9倍。ところが書籍・他の印刷物は、2,718円と3,410円で、1.25倍にとどまる。この区分の約7割は新聞で、本(書籍)だけを見ると、年額で、五分位別の表の第1五分位が3,855円、第5五分位が12,851円と、約3.3倍開く(同じ表で書籍・他の印刷物は約1.06倍)。令和6年の全国家計構造調査(総世帯)でも、教養娯楽は十分位で約4.2倍、月謝類は約11倍、書籍・他の印刷物は約1.7倍、書籍だけでは約3.2倍だった。なお、低所得の層は世帯主の平均年齢が高く(家計調査の第1十分位で71.9歳)、年齢の違いが混ざっている。所得が原因だと読むことはできない。

本を借りる側も数字がある。文部科学省の社会教育調査(令和6年度社会教育統計、令和5年度間の活動)で、公共図書館の貸出は約5億9,400万冊、登録者は2,825万人だった。総人口(1億2,435万人)で割ると1人あたり約4.78冊(派生値)。図書館法第17条は、公立図書館が資料の利用に対価を徴収してはならないと定めている。貸出の約33%は児童書で、児童の登録者は全体の約9.4%(いずれも派生値)。大人が子のために借りている可能性があるが、資料からは断定できない。

お金のかからない活動は、何割の人がしているか

令和3年の社会生活基本調査(10歳以上、過去1年)で、費用のかかりにくい活動の行動者率は、音楽鑑賞が53.5%、映画鑑賞(映画館以外)が52.7%、スマートフォンなどのゲームが42.9%、マンガを読むが36.8%、趣味としての読書(マンガを除く)が31.6%、園芸・庭いじりが26.0%、写真の撮影・プリントが21.9%、趣味としての料理・菓子作りが19.0%、楽器の演奏が10.2%だった。費用のかかりやすい活動では、映画館での映画鑑賞が29.8%、遊園地・動植物園・水族館が19.0%、スポーツ観覧が14.5%、パチンコが6.3%、キャンプが6.0%。歩くほうでは、ウォーキング・軽い体操が44.3%で、週1日以上している人は10歳以上の22.5%(行う人のほぼ半分)だった。「過去1年に一度でも」の割合なので、年に数日の人も、毎日の人も同じ1人に数えられる。調査の期間(2020年10月〜2021年10月)はコロナ禍にあたり、旅行や映画館は平時の水準ではない。

所得で分けた表もある。夫婦の夫で、世帯年収300万円未満と1,000万円以上を比べると、映画館は8.7%から33.9%(3.9倍)、キャンプは1.8%から10.6%(5.9倍)、旅行(1泊2日以上)は18.2%から50.1%と増える。一方、園芸は31.7%と28.7%で、妻(41.4%と41.0%)も含めて、ほとんど変わらなかった。ただし世帯年収300万円未満の夫の約3分の2は仕事からの収入がなく、引退した世代が多いと読める。年齢の構成の違いが打ち消し合った結果かもしれない。単身世帯の25〜44歳でも、ウォーキングは、世帯年収300万円未満の区分で52.3%、300〜499万円の区分で53.1%だった(高所得層は標本が小さい)。

時間はどうか。有業者の個人収入別に、趣味・娯楽に使う時間(週全体の1日あたり)を見ると、収入なしで26分、100〜149万円で38分、400〜499万円で42分、1,500万円以上で31分と、26〜49分の範囲に収まっている。スポーツの時間だけが収入とともに伸び、500万円未満では5〜10分、1,000万円以上では19〜25分だった。お金があると趣味の時間が増えるのではなく、お金のかかる活動をする人の割合が増えるように見える。なお、時間は個人収入別、割合は世帯年収別で、軸が違う。ここでも年齢の違いは混ざっている。

国民生活に関する世論調査(令和7年8月、18歳以上、複数回答)には、希望と実際の差を示す数字がある。自由時間が増えたらしたいことの1位は旅行で61.5%、現在の過ごし方に旅行を挙げた人は19.7%だった。差が最も大きいのは旅行(約42ポイント)で、次に大きいのは教養・自己啓発の約11ポイント、趣味・娯楽はほとんど差がなかった(41.5%と43.7%)。理由は尋ねていないので、費用のせいかどうかは分からない。

払った額は、使う回数を決めない

コスパを回数で割る話を、もっともはっきり示した研究がある。2006年のデラ・ヴィーニャとマルメンディエは、アメリカのジム3軒の会員7,752人を3年間追った。月会費が70ドルを超える月契約の会員は、月に平均4.3回しか通わず、1回あたりの支払いは(会員期間全体の支払いを来訪回数で割ると)17ドルを超えた。10回券なら、1回あたり10ドルで済んだ。同じ回数なら、月契約の会員の80%は、都度払いのほうが安かった。月契約の会員は、会員期間を通じて平均で約600ドルを余計に払っていた。さらに、解約できる月契約を選んだ人のほうが、年契約の人より、1年を超えて在籍する確率が17%高かった。

観察データで、1997年から2001年ごろのニューイングランドのジムの話である。著者は、会員が自分の将来の通い方を過大に見積もっているという説明を最も簡潔だとしつつ、別の説明も残している。ジムの会員費を、そのまま趣味の月謝に当てはめることはできない。それでも、「払ったから通う」は、少なくともここでは起きていなかった。

払った額が使用を押し上げる、という古典もある。1985年のアークスとブルーマーは、大学の劇場でシーズンチケットを売り、通常価格(15ドル)と、割引(13ドルと8ドル)にランダムに割り当てた。前半5公演で使われた平均枚数は、通常価格が4.11枚、割引が3.32枚と3.29枚だった。ところが後半5公演では、有意な差はなかった(2.28、1.84、2.18枚)。標本は54人で、効果は購入から約半年でなくなった。この話の続きは、サンクコストと趣味に書いている。

無料の特別さは、別の記事で扱った。ここでは、無料は1円の安さとは別物として動く、という実験(2007年のシャンパニアーらで、チョコを選んだ人のうち、ハーシーのキスの選択が27%から69%に跳ねた)の存在だけ記しておく。無料かどうかは、始めやすさを動かすかもしれないが、続けるかどうかとは別の問いだ。

もう一つ、コスパの計算で抜けやすいのが、代わりに何ができたかだ。2009年のフレデリックらの実験は、機会費用の手がかりを示すと購入が減ることを示したが、後年のメタ分析(2023年、39研究、14,005人)では、効果量が0.22で、元の研究の0.45〜0.85よりかなり小さかった。

「経験にお金を使うほうが幸せ」は、どこまで正しいか

「モノより経験」は、よく引かれる。2003年のヴァン・ボーヴェンとギロビッチの全国電話調査(アメリカの21〜69歳、1,263人)では、人生で一つずつ思い浮かべた経験購入と物質購入のうち、どちらが自分を幸せにしたかを尋ねて、経験が57%、物質が34%だった。年収が最も低い層では、経験と物質が同程度で、最低学歴の層では、物質のほうがわずかに多かった。説明として論文が挙げたのは、肯定的に再解釈されやすいこと、自己の中心にあること、社会的な価値があること、の三つだ。「他人との比較を招きにくい」は、2015年のギロビッチらの総説が挙げる機序の一つである。

その後の検証で、この優位は小さくなった。2021年のワインガーテンとグッドマンのメタ分析(141研究、360の効果量)は、経験優位の効果量をd=0.38としたが、出版バイアスの補正で、0.27(trim-and-fill)、0.23(PEESE)、0.08(PET、有意でない)に下がった。著者自身が、約3分の1は出版バイアスだと見積もっている。条件による差も大きい。件数の少ない下位集団の分析ではあるが、一人で行う経験(19件)ではd=0.07、うまくいかなかった購入(13件)ではd=0.06とほぼゼロで、社交的な経験では0.32だった。2022年に先行公開されたワインガーテンらの事前登録した4研究(3,288人)は、モノ性と経験性のどちらも幸福と正の関連を持ち、二者択一ではないと報告している。

個別の研究にも、優位が逆転する条件がある。抄録によれば、2009年のニコラオらは、購入がうまくいったときだけ経験が物より幸福を生み、うまくいかなかったときは優位が消える、慣れが遅いぶん悪い経験も長引く、と報告した。2016年のワイドマンとダンは、モノは「より頻繁な」瞬間的幸福を、経験は「より強い」瞬間的幸福を与えた、と報告している(抄録による)。

趣味に引き寄せると、こうなる。経験にお金を使うほうが優れているという主張は、この20年あまりの研究が支えてきたが、効果は思ったより小さく、一人でする活動では、ほとんど消える。一人で読み、一人で歩き、一人で作る趣味は、この優位の外にあるかもしれない。ただし、ここでの「経験」は購入の研究であって、趣味そのものを比べたものではない。

時間を買う、という逆転

もう一歩進めた研究がある。2017年のウィランズらは、アメリカ・カナダ・デンマーク・オランダの調査(計6,271人、7つの調査と1つの実験)で、メタ分析した4,469人のうち28.2%は、毎月、不快な日常作業を人に任せる支出をしていて、その人たちは生活満足度が高かった(d=0.24)。別の調査では、任せる作業は料理、買い物、家の維持管理が多かった。実験では、カナダで働く成人60人が、2回の週末のそれぞれで40ドルを渡され、一方はモノの買い物に、もう一方は時間を節約するサービスに使った。時間を節約した日の肯定的感情は4.00、モノの日は3.71(d=0.33)で、時間のせっぱ詰まった感覚が減ったことが差を説明した。時間の逼迫と生活満足度の負の関係は、時間を買っていない人でB=−0.18、買っている人で−0.03(有意でない)だった。

効果は小さく(d≈0.2〜0.3)、実験が測ったのはその日の終わりの感情だ。それでも、示唆はある。無料の趣味は、時間のコストと引き換えになっていることが多い。図書館に通う時間、冷蔵庫の中身から献立を組み立てる時間。時間に余裕がある人にとって、それは負担ではない。余裕がない人にとっては、安さが時間の負担に変わる。日本の世論調査(令和7年8月)では、時間のゆとりが「ある」と答えた人は63.9%だが、正規の職員・従業員では54.7%、生活の程度が下の人では41.5%だった。

制約は、創造性を高めるのか

お金をかけないことに、積極的な意味があるとすれば、候補は制約だ。2005年のモローとダールは、使える材料の入力に制約をかけると、強い時間圧がないときに、より創造的な処理が促されると報告した(抄録による。人数や効果量は確認できていない)。

財政的な制約を扱った2014年のスコペリッティらの研究は、4つの実験でできている。うち実験1は、学部生・大学院生59人が、5〜11歳向けの玩具を、20個の部品リストから選んで考える課題だった。予算が5ユーロに制限された条件の玩具は、制限のない条件より、専門家の評価で創造的で(3.98と3.00、7点尺度)、使った部品(4.76個と6.00個)も、金額(4.30ユーロと5.52ユーロ)も少なかった。調理学校の学生72人の実験2は、食材を最大5つまでにする制約と、予算を12ユーロ以内にする制約を比べたもので、制約のない対照群はなく、料理の創造性にも有意な差はなかった。実験3では新奇性を求める傾向が高い人で、実験4では製品を新しい、いろいろな使い方で使う傾向(使用の革新性)が高い人で、財政制約の効果が出て、低い人では出なかった(著者の受理原稿による)。

制約は誰にでも効くのではない。2011年のセリエとダールは、ニューヨークの毛糸店で、趣味の編み手76人に1週間でスカーフを編んでもらった。毛糸の色の選択肢を6色と12色に分けたところ、経験者は6色のほうが、専門家による創造性の評価が高く(7.67と5.56)、編む過程も楽しんでいた。初心者には、差がなかった。本人の実感は逆で、選択肢が多いほど創造的だと感じていた。2017年のホート=トロンプは、2行の韻文に指定された名詞を入れる条件のほうが、入れない条件より創造的と評価されたと報告した(学部生64人、分析は59人、5.18と4.29)。

全体を統合した2019年のアカーらのレビューは、組織を対象にした145の研究から、制約の量と創造性のあいだに逆U字の関係を提案している。制約が少なすぎると緩みが生まれ、中程度の制約は挑戦として受け取られ、高すぎると逆効果になる。これは概念的な統合で、一つのデータで検証された最適点ではない。私が探した範囲では、ここで挙げた個別の実験の追試は見つからなかった。「お金をかけないから創造的になる」とは、書けない。書けるのは、道具や材料の選択肢が絞られることが、慣れた人の工夫を引き出すことがある、というところまでだ。

報酬が、趣味を変える

ポイ活や、実益を目的にした活動を「コスパのいい趣味」に含める書き方を見かける。心理学には、これに対する古い警告がある。1971年のデシの実験は、大学生24人にソーマ・パズルを3日間解かせ、2日目だけ解けた形ごとに1ドルを払った。3日目は報酬が払われず、1日目と3日目を比べると、8分間の自由時間にパズルをした時間は、報酬を受けた群で減った(実験群が248秒から約199秒、対照群が214秒から242秒)。ただし、差の差は−77.6秒で、有意水準は片側.10にとどまり、著者自身が追加の証拠が必要だと書いている。

1999年のデシ、コースナー、ライアンのメタ分析(128実験)が、その後の主な根拠になった。期待された有形の報酬は、自由選択の行動で内発的動機づけを下げた(d=−0.36)。随伴性別では、参加すれば払う型が−0.40、完成すれば払う型が−0.36、成績に応じて払う型が−0.28だった。予期しない報酬では影響がなく、退屈な課題では損なわれない。逆に、肯定的な言葉の報酬は、全体では自由選択でも自己報告の興味でも動機づけを高めた(それぞれ+0.33、+0.31)。自由選択の行動では、大学生で効果が大きく(d=0.43)、子ども7研究では有意でなかった(d=0.11)。子どもでは、有形報酬の悪影響が大きかった。

形のある報酬(金銭、賞品、賞状など)と、言葉を分けて読む必要がある。「お金をかけない」と言いながら、ポイントや実益といった形のある報酬を活動に持ち込めば、デシらが警告した条件にむしろ近づく。デシらの結果に照らして問題になるのは、支出ではなく見返りのほうで、他人からの評価や言葉までは含まない。言葉は、大学生ではむしろ動機づけを高めた。

歩く時間に、お金は要るか

お金のかからない代表として挙がるのが、歩くことだ。2019年のホワイトらは、イングランドの成人19,806人の調査で、直近1週間に自然環境で過ごした時間が120〜179分の人たちの、良好な健康を報告するオッズ比は1.59、高い幸福感(生活満足度8点以上)を報告するオッズ比は1.23だった。60〜119分では(主な分析では)有意でなく、ピークは200〜300分で、それ以上は増えない。1回にまとめても、複数回に分けても、結果は同じだった。測ったのは、歩行ではなく、屋外(町の公園、運河、田園、海岸など。自宅の庭と日常の買い物を除く)への余暇の訪問の回数と、1回の長さの積である。浜辺で座っていても数に入り、市街地の道を歩いても数に入らない。観察研究で、健康で幸せな人ほど外で過ごす、という逆向きの説明を排除できない。時間は、調整前のモデルで、結果の分散の約1%しか説明しない。

費用の面でも、歩くことは特別だ。民間の調査(日本生産性本部『レジャー白書2026』速報版、インターネット調査、15〜79歳の3,279人)で、参加者1人あたりの年間平均費用は、ウォーキングが6,300円(年55.8回)、読書が14,500円(年49.6回)、ゴルフ(コース)が166,000円(年16.9回)、オートキャンプが56,400円(年7.9回)だった。1回あたりに直すと、ウォーキングが約113円、読書が約292円、ゴルフが約9,820円、キャンプが約7,140円になる(年間費用を回数で割った派生値)。公的統計の参加率とは定義が違い、混ぜて読むことはできない。

アメリカの時間利用調査(64,798人)を使った2021年のロイとオラゼムの研究は、身体的に活動的な余暇(スポーツ、ハイキング、サイクリング、ヨガなど)が、教育や健康が高いほど需要の増える正常財で、身体的に受動的な余暇(テレビ、交際、くつろぎ、ゲーム、コンピュータ、趣味など)が劣等財だと報告した(個別には、テレビ、交際、くつろぎ、ゲームが劣等財で、趣味とコンピュータは所得にほとんど反応しなかった)。ここで「趣味」に分類されているのは、個人的な関心での読書、絵、写真、収集などで、受動的な側に入っている。無料かどうかとは別の軸で、活動の性質による区分があるらしい、というところまでが言える範囲だ。

何をするかより、心がそこにあるか

費用や活動の種類より効いているものは、ほかにあるかもしれない。2010年のキリングスワースとギルバートは、スマートフォンのアプリで、2,250人の成人に、ランダムな時点で今の気分と活動、心のさまよいを尋ねた。何をしているかで説明できる、その瞬間の幸福の個人内の分散は4.6%、心がさまよっているかどうかで説明できるのは10.8%だった。何をしているかより、心がそこにあるかのほうが、大きかった。観察データで、費用は見ていない。

お金と幸福の線は、後から引き直された

お金と幸福を結ぶ線は、引かれてから十数年のうちに引き直された。2010年のカーネマンとディートンは、感情的な幸福が年収約7.5万ドルで頭打ちになると報告し、2021年のキリングスワースは、頭打ちにならないと報告した。2023年の共同研究(敵対的協業で、メラーズが進行役)は、頭打ちが見られるのは最も不幸せな約20%の層に限られ、それ以外では年収とともに伸び続けると整理した。ただし効果は小さく、対数所得と幸福の相関は0.09だった。人生の評価は、カーネマンらの当初の論文でも上がり続けていた。

支出の側から見ると、余暇への支出が幸福と関連する、という研究もある。2010年のデリアとカリルは、アメリカの高齢者の全国調査で、消費の項目のうち余暇への支出だけが幸福と正の関連を持つと報告した(抄録と二次情報による。標本の人数は資料によって食い違う)。相関で、幸福な人ほど余暇に使う、という逆向きも排除できない。「お金をかけない趣味のほうが良い」という通説に不利な数少ない証拠の一つだが、強い根拠ではない。

コスパのいい趣味を、六つに分けて考える

ここまでの材料を、よく挙がる活動に戻して並べる。優劣はつけない。何に向き、何に向かないか、根拠の強さも併せて書く。分け方は私が作ったもので、費用は公的統計と民間調査の数字に基づく。

図書館で借りて読む

費用の下限が低い。公共図書館は無料で、令和5年度間に約5億9,400万冊が貸し出された。趣味としての読書の行動者率は31.6%。弱みは、図書館に通う時間が要ること。なお、アメリカの時間利用調査の分類では、読書は受動的な余暇(趣味)の側に入っていて、趣味は単独では所得にほとんど反応しなかった。

歩く

ウォーキング・軽い体操は10歳以上の44.3%が行う。年収500万円未満の2つの区分のあいだでは、ほとんど変わらなかった(単身世帯の25〜44歳)。民間の調査では年6,300円、1回約113円。公園や海辺など自然の中で過ごす時間が週120分前後から、健康や幸福感との関連が出る、という観察研究がある(歩行そのものを測ったものではない)。弱みは、近所に歩ける場所があるか、時間があるかに左右されること。観察研究で因果は決められない。

家で作る:料理、園芸、手芸

園芸は世帯年収で変わらず、65歳以上では39.2%と全年齢(26.0%)より高い。料理・菓子作りは女性28.5%、男性9.0%。家計調査の園芸用品は年4,780円、手芸・工芸材料は年788円。材料と時間の負担が小さく、選択肢が限られるぶん、経験者の工夫が引き出されることがある(毛糸の色の研究)。ただし、初心者には効果が見られなかった。

習い事、月謝

月謝類は、所得で約8〜11倍開く支出だ。続ける仕組みとして働く可能性はあるが、それを確かめた研究は見つからなかった。払ったから通うとは限らない。ジムの研究では、月に70ドルを超えて払っていた会員も、通ったのは平均で月4.3回だった。月契約のほうが年契約より1年を超えて在籍する確率が17%高かった、という結果もあり、払い続けることと通うことは別だった。習い事に、同じ現象が起きるかは、確認できなかった。

道具を買う:楽器、キャンプ、釣り、ゴルフ

費用の大きい活動で、使う頻度が小さいものが多い。キャンプをする人の72%は年に1〜4日(社会生活基本調査の頻度別の表から計算した派生値)で、民間調査での1回あたりはオートキャンプ約7,140円、ゴルフ約9,820円。キャンプやゴルフを人と一緒にする経験として見るなら、社交的な経験購入では優位が残っていた(d=0.32)。道具そのものの購入は、研究の分類ではモノの側に入りやすい。弱みは、1回あたりの費用の大きさと、収納だ(趣味の道具と収納に書いた)。

配信で見る、聴く

音楽鑑賞は53.5%、映画鑑賞(映画館以外)は52.7%。民間調査での動画鑑賞は年10,100円(年59.2回)で、1回約171円。手軽で始めやすい。弱みは、分類上は受動的な余暇の側に入ること。受け身の時間が悪いかどうかは、研究の種類によって結果が割れている(パソコンでできる趣味に書いた)。

六つのうち、どれがコスパがいいとは言えない。コスパの割り算は、分母の費用も値札だけでは決まらず(時間がかかる)、分子の満足は、人によって、時期によって違う。

値札の外にあったもの

最後に、この記事が何に基づいているかを整理する。

確かめられたのは、統計の部分である。本(書籍)だけの支出は、収入の階級で3倍以上開いていること(新聞を含む書籍・他の印刷物では、十分位の表で1.25倍。年齢の違いは混ざっている)、趣味・娯楽の時間は収入による差が小さく、スポーツの時間と費用の大きい活動をする人の割合が所得で開くこと、無料の本の貸出が年に約5億9,400万冊あること。ジムの月契約の会員が、払った額のわりに通っていなかったこと。経験消費の優位が補正で小さくなり、一人でする経験の購入では優位が見られなかったという報告があること。

確かめられていないのは、次のようなことだ。「お金をかけない趣味のほうが続く」という主張を直接支える研究は、見つからなかった。制約が創造性を高める研究は、経験者や特定の条件に限られ、追試は見つかっていない。余暇への支出が幸福と結びつく研究は、相関で、二次情報に頼っている。習い事の月謝が続ける力になるのかも、確認できなかった。

コスパという言葉は、安さの話に見えて、使った回数と時間と、満足の話だった。続いている趣味について、その理由を後から言うのは簡単だが、選ぶときには値札しか見えない。選ぶ前に問えるのは、何回使うつもりか、その見積もりがジムの会員と同じくらい甘くないか、そのときの自分に時間があるか、ということくらいだ。

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出典

総務省統計局「家計調査」2025年(二人以上の世帯。詳細結果表 第1-1表・第2-5表〈年間収入十分位別〉・第4-3表〈年間収入五分位別〉、年報 表6-1)。統計表(Excel)で確認。月額は年額を12で割った派生値を含む
総務省統計局「令和6年全国家計構造調査」(総世帯。第1-21表)。統計表で確認
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」(2021年10月)生活行動編(趣味・娯楽〈第30-2表〉、スポーツ〈第15-2表〉、世帯年収別〈第39-2表・第29-2表〉、旅行・行楽〈第68-2表〉)、生活時間編(第14-19表)。統計表(Excel)で確認。調査期間はコロナ禍にあたる
文部科学省「令和6年度社会教育統計」(令和5年度間の活動。図書館調査 第86表・総括表)。図書館法第17条(e-Gov法令検索)。1人あたり貸出冊数・児童書の割合は派生値
内閣府「国民生活に関する世論調査」令和7年8月調査(18歳以上、標本5,000人、有効回収2,938人、複数回答)。集計表で確認
日本生産性本部「レジャー白書2026(速報版)詳細資料」(民間の調査。2025年の活動、15〜79歳のインターネット調査、有効回答3,279)。発行元の公開資料で確認。1回あたりの費用は年間平均費用を年間平均回数で割った派生値で、公的統計の参加率とは定義が異なる
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