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温泉の泉質10種類と、掲示の読み方

温泉の掲示に使う泉質名は、10種類

環境省の鉱泉分析法指針(2014年改訂)が、湯に溶けている成分の量で分ける。成分が薄くても25℃以上なら単純温泉になり、そのほかは、どの成分が基準を超えたかで名前が付く(量は湯1kgあたり)。

掲示用の泉質名10種類と、その泉質になる条件
泉質決まる条件
単純温泉25℃以上で、成分が1kgに1,000mg未満。下の特殊成分もどれも基準未満
塩化物泉成分1,000mg以上で、陰イオンの主成分が塩化物イオン
炭酸水素塩泉成分1,000mg以上で、陰イオンの主成分が炭酸水素イオン
硫酸塩泉成分1,000mg以上で、陰イオンの主成分が硫酸イオン
二酸化炭素泉炭酸ガス 1,000mg以上
含鉄泉鉄イオン 20mg以上
酸性泉水素イオン 1mg以上
含よう素泉よう化物イオン 10mg以上
硫黄泉総硫黄 2mg以上
放射能泉ラドン 111ベクレル以上

2つ以上の条件を満たす湯は、両方の泉質にあたる(例:含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物泉は、塩化物泉と二酸化炭素泉)。

泉質ごとに掲示される適応症(効能として並ぶ病名)は、掲示してよい病名の基準で、効くと確かめた一覧ではない。妊娠中は、2014年の改訂で温泉の禁忌症から外れた。どちらも下に、資料の言葉で書いた。

匂い・色・肌ざわりから、泉質をたどる

気になることを選ぶと、環境省の資料がその点で名前を挙げている泉質を出します。合う湯を当てるものではありません。下の表を引いているだけです。

気になることを1つ選ぶ

選ぶと、資料がその点で名前を挙げている泉質と、何を根拠にしているかが出ます。

対応の表(すべて)

気になることと、資料が名前を挙げている泉質、その根拠
気になること泉質(根拠)
肌にしみる・刺激の強い湯酸性泉、硫黄泉環境省 掲示等の基準(2014年)
刺激の少ない湯単純温泉環境省『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(2019年)
卵のような硫黄の匂いの湯硫黄泉環境省 硫化水素中毒事故防止のためのガイドライン(2017年)
泡が肌につく湯二酸化炭素泉環境省『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(2019年)
空気に触れると金色になる湯含鉄泉環境省『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(2019年)
置いておくと黄色くなる湯含よう素泉環境省『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(2019年)
白く濁った湯泉質では分けられていない鉱泉分析法指針、掲示等の基準、冊子のどれにもない
肌がすべすべする湯炭酸水素塩泉環境省『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(2019年)
しょっぱい湯塩化物泉鉱泉分析法指針、環境省『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(2019年)
飲める湯(飲泉)塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、含よう素泉、硫黄泉環境省 掲示等の基準(2014年)
湯あたりしやすい湯泉質では分けられていない環境省 掲示等の基準(2014年)

掲示の泉質名を読み解く

脱衣所の掲示(温泉分析書の写し)には、源泉名・泉温・成分の表と並んで「泉質」の行があり、「含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(低張性中性高温泉)」のような長い名前が書かれています。その名前を、指針の名付けの決まりで部分ごとに読みます。食塩泉・重曹泉のような古い名前も、新旧の対照表で読みます。

例から選ぶか、下の欄に打つ

打つか例を選ぶと、名前の部分ごとの意味と、掲示用の泉質名、その泉質の適応症と禁忌症が出ます。

泉質ごとに、分かっていること・いないこと

適応症と禁忌症は、環境省の通知(2014年)の表の文言のままです。適応症は、掲示してよい病名の基準であって、効くことを確かめた一覧ではありません(下の節)。「冊子の説明」は、環境省が2019年に出した解説の冊子からで、根拠の研究は挙がっていません。

泉質ごとに禁忌症(入ってはいけない人)が決まっているのは、酸性泉と硫黄泉の2つだけで、ほかの泉質は泉質を問わない一般的禁忌症(下の節)だけです。

単純温泉たんじゅんおんせん

溶けている成分(ガスを除く)が1kgあたり1,000mg未満で、湧き出たときの温度が25℃以上。下の特殊成分(二酸化炭素・鉄・水素イオン・よう化物イオン・硫黄・ラドン)がどれも基準に届かないもの。pHが8.5以上なら「アルカリ性単純温泉」と呼ぶ。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
飲用:なし

冊子の説明

刺激はマイルド。

分かっていること
  • 成分が薄くても、温度が25℃以上というだけで療養泉になる。成分ではなく温度で療養泉になっているのは、10種類のうちこれだけ。
  • 「アルカリ性」が付くかどうかは、湧き出た場所で測ったpHが8.5以上かどうかだけで決まる。
分かっていないこと
  • 「美肌の湯」と呼ばれることがあるが、アルカリ性単純温泉の掲示の適応症に、肌のことは入っていない。
  • 湯上がりのすべすべは、アルカリが皮脂と反応して石けんのようなものを作るから、と説明されることが多いが、人の肌で確かめた一次研究は見つからなかった(下の記事で調べた)。

塩化物泉えんかぶつせん

溶けている成分が1kgあたり1,000mg以上で、陰イオンでいちばん多いのが塩化物イオン。ナトリウム5,500mg・塩化物イオン8,500mg以上なら「ナトリウム-塩化物強塩泉」。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用:萎縮性胃炎、便秘

冊子の説明

俗に「熱の湯」と呼ばれる。

分かっていること
  • ナトリウムを含む湯の飲用には、量の上限の計算がある。1日に「1,200÷(1kgあたりのナトリウムのmg)×1,000mL」を超えて飲む場合、塩分制限の必要な病態(腎不全、心不全、肝硬変、虚血性心疾患、高血圧など)が禁忌症になる。計算した量が500mL以上なら、1日の飲用量(200〜500mL)を超えるので、掲示しなくてよいとされている。
分かっていないこと
  • 冊子は「皮膚に塩分が付着するため、保温効果・循環効果があります」と書くが、根拠の研究は挙げていない。

炭酸水素塩泉たんさんすいそえんせん

溶けている成分が1kgあたり1,000mg以上で、陰イオンでいちばん多いのが炭酸水素イオン。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
飲用:胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)

冊子の説明

俗に「美人の湯」と呼ばれる。

分かっていること
  • 10種類の中で、浴用の適応症に「皮膚乾燥症」が入るのは、塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉の3つ。
分かっていないこと
  • 冊子は「皮膚の角質を軟化する作用」があると書くが、根拠の研究は挙げていない。重曹を溶かした湯の研究はあるが、療養泉より薄い濃度で、さら湯でも角層の水分は上がっていた(下の記事で調べた)。

硫酸塩泉りゅうさんえんせん

溶けている成分が1kgあたり1,000mg以上で、陰イオンでいちばん多いのが硫酸イオン。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
飲用:胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

分かっていること
  • 浴用の適応症は、塩化物泉とまったく同じ(通知は「塩化物泉に同じ」と書く)。
分かっていないこと
  • 冊子は「飲んで胆のうを収縮させ、腸のぜん動を活発化します」と書くが、根拠の研究は挙げていない。

二酸化炭素泉にさんかたんそせん

遊離二酸化炭素(炭酸ガス)を1kgあたり1,000mg以上含む。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
飲用:胃腸機能低下

冊子の説明

入浴すると小さな気泡が身体に付着する(俗に「泡の湯」)。

分かっていること
  • 飲むときの1回の量にも上限の計算がある。「1,000÷(1kgあたりの遊離炭酸のmg)×1,000mL」が150mL未満なら、その量が1回の上限として掲示される。
分かっていないこと
  • 冊子は「炭酸ガスが皮膚から吸収され、保温効果や循環効果が知られています」と書くが、根拠の研究は挙げていない。
  • 炭酸ガスは湧き出たあと抜けていく。浴槽の湯が分析書の濃さのままとは限らない(通知の留意事項も、湧出後の揮散で成分が変わりうると書く)。

含鉄泉がんてつせん

鉄(Ⅱ)イオンと鉄(Ⅲ)イオンを合わせて、1kgあたり20mg以上含む。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:なし
飲用:鉄欠乏性貧血

冊子の説明

空気に触れると、金色に変色する。

分かっていること
  • 浴用の泉質別適応症はない(掲示されるのは泉質を問わない一般的適応症だけ)。
分かっていないこと
  • 色は分析書の「知覚的試験」に観察として書かれるもので、指針は色から泉質を決める方法を示していない。茶色い湯がすべて含鉄泉とは限らない。

酸性泉さんせいせん

水素イオンを1kgあたり1mg以上含む。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
飲用:なし

泉質別の禁忌症(浴用)

皮膚又は粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症

冊子の説明

酸性が強いと入浴で皮膚にしみ、口にすると酸味がある。

分かっていること
  • 泉質別の禁忌症がある2つのうちの1つ。入浴後の注意でも、肌の弱い人は「刺激の強い泉質(例えば酸性泉や硫黄泉等)」を温水で洗い流したほうがよい、とされている。
  • pH2の草津の湯に42℃で10分入ったあと、健康な人の皮膚表面のpHは4.9から4.5に下がり、まもなく戻った。アトピー性皮膚炎の人では4.6から3.0まで下がり、3時間以上pH3〜4のままだった(久保田ら、1999年。健康な人10人、患者8人)。
  • pH3未満の湯を飲むときは、真水でpH3以上に薄め、1回100mLまでとするよう掲示される。
分かっていないこと
  • 草津(pH2.0の酸性-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉)で入院治療を受けたアトピー性皮膚炎100人の報告(久保田ら、1999年)は、温泉に入らなかった群と比べたものではない。入浴のあとにワセリンなどで保湿し、希望者には抗ヒスタミン剤も出していたので、湯の効き目だけを取り出せない。
  • 冊子は「殺菌力が強いです」と書くが、根拠の研究は挙げていない。

含よう素泉がんようそせん

よう化物イオンを1kgあたり10mg以上含む。2014年の改訂で加わった泉質。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:なし
飲用:高コレステロール血症

冊子の説明

非火山性の温泉に多く、放置すると黄色く着色する。

分かっていること
  • 飲用には、量の上限の計算がある。1日に「0.1÷(1kgあたりのよう化物イオンのmg)×1,000mL」を超えて飲む場合、甲状腺機能亢進症が禁忌症になる。含よう素泉の下限の10mg/kgの湯でも10mLで、500mLを大きく下回るので、掲示される。
分かっていないこと
  • 冊子は「飲んで総コレステロールを抑制します」と書くが、根拠の研究は挙げていない。

硫黄泉いおうせん

総硫黄を1kgあたり2mg以上含む。硫黄が主に遊離の硫化水素の形で含まれる(遊離の硫化水素が、硫化水素イオンとチオ硫酸イオンを合わせたものより多い(モル濃度で比べる))なら「硫化水素型」と付ける。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害を加える)
飲用:耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症

泉質別の禁忌症(浴用)

皮膚又は粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症

分かっていること
  • 泉質別の禁忌症は、酸性泉と同じ。
  • 「卵が腐ったような」臭いは硫化水素のもの。環境省の硫化水素のガイドラインは、低い濃度でも長く吸い続けると嗅覚が麻痺するので、臭いを頼りに有無を判断しないこと、としている。同じガイドラインの表では、150〜200ppmで臭いを感じなくなる。浴室の空気は、湯面の10cm上で20ppm、床の70cm上で10ppmを超えないことが求められている。
分かっていないこと
  • 変形性関節症の試験をまとめたコクランのレビュー(2007年、要旨で確認)では、硫黄浴だけの群は、1か月後も3か月後も、何もしない群との差がなかった。死海の浴と組み合わせた群は治療の終わりに差が出たが、3か月後には消えていた。レビューは、試験の方法の質が低く、証拠は弱いとしている。試験は海外のもので、日本の硫黄泉で行われたものではない。
  • 冊子は「殺菌力が強く、表皮の細菌やアトピー原因物質を取り除きます」と書くが、根拠の研究は挙げていない。

放射能泉ほうしゃのうせん

ラドンを1kgあたり111ベクレル(8.25マッヘ単位)以上含む。50マッヘ単位未満なら「弱放射能」。

掲示の適応症(掲示してよい病名の基準)

浴用:高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など
飲用:なし

分かっていること
  • 関節リウマチの試験をまとめたコクランのレビュー(2015年)に、炭酸泉にラドンを加えた浴と、加えない浴を比べた2試験(194人)がある。3か月後は差がなく、6か月後に痛みの頻度と強さに小さな差が出た。レビュー全体の結論は、温泉療法が有効と示すには証拠が不十分、だった。
分かっていないこと
  • 冊子は「温泉に含まれる微量の放射能は、炎症に効果的です」と書くが、根拠の研究は挙げていない。

酸性泉とアルカリ性の湯で肌に何が起きるかは、強酸性の湯とアルカリの湯の記事で調べた。

適応症の掲示は、効くことの証明ではない

脱衣所の掲示で、温泉法と施行規則が書くことを求めているのは、源泉名、泉質、温度、成分、分析の年月日、禁忌症、入浴・飲用の方法と注意、それに加水・加温・循環・入浴剤・消毒をしているかどうかと、その理由だ。適応症は、この中に入っていない。2014年の通知は、適応症の掲示の内容を、引き続き知事の判断に委ねると書いている。

同じ通知は、温泉療養の効用を、成分だけでなく、温度、温泉地の地勢や気候、生活リズムの変化などによる「総合作用」の生体反応だとし、温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難だ、と書く。掲示の病名の一覧と、その一覧への但し書きが、同じ文書に並んでいる。

泉質の分け方そのものも、動いてきた。2014年の改訂で、それまであった含銅-鉄泉と含アルミニウム泉が消え、含よう素泉が加わった。改訂を審議した温泉小委員会で、環境省の担当者は、銅とアルミニウムを療養泉の成分から外した理由を、適応症のほうで効用が認められなかったから、と説明している。同じ改訂で、一般的禁忌症から「妊娠中(とくに初期と末期)」も削られた。

見直されて消えた記述があるということは、残っている記述も、見直されうるということだ。効能の研究がどこまで進んでいるかは、温泉の効能の記事で、関節リウマチや皮膚の研究を一つずつ読んだ。

泉質を問わず、掲示に書かれること

一般的禁忌症(浴用)

1回の入浴でも有害事象を生ずる危険性がある病気・病態として、通知が挙げるもの。専門的知識を有する医師の指導のもとでの温泉療養は妨げない、とされている。

2014年の改訂で、それまであった「妊娠中(とくに初期と末期)」は削られた(理由はよくある質問)。

  • 病気の活動期(特に熱のあるとき)
  • 活動性の結核
  • 進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合
  • 少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気
  • むくみのあるような重い腎臓の病気
  • 消化管出血、目に見える出血があるとき
  • 慢性の病気の急性増悪期

一般的適応症(浴用)

筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、病後回復期、疲労回復、健康増進

入浴の注意から

  • 食事の直前・直後と飲酒後の入浴は避ける。
  • 高齢者、高血圧症・心臓病の人、脳卒中を経験した人は、42℃以上の高温浴を避ける。
  • 1回の入浴は、初めは3〜10分程度、慣れてきたら15〜20分程度まで。
  • 入浴前と入浴後に、コップ一杯程度の水分をとる。
  • 療養を始めて3日〜1週間前後に、湯あたり(気分不快、不眠、消化器症状など)や皮膚炎が出ることがある。そのあいだは入浴を中止するか、回数を減らす。

湯の温度を変えると体に何が起きるかは、42度と38度の記事で調べた。この節は掲示の基準の要約で、体の状態についての判断はしない。

筆者が入った湯

泉質名と、入ったときの印象が並べられる湯は、まだ少ない。ここに書くのは、このサイトに体験として書いたものだけだ。

那須湯本の鹿の湯は、施設の案内では単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)で、pHは3未満。酸性泉と硫黄泉の両方にあたる。私は宿の記録に、鹿の湯は熱い濁り湯だったと書いた。近くの子鹿の湯は「硫黄の強い白い濁り湯」と書いたが、こちらの泉質は確かめていない。温泉街には、硫黄の香りがあった。

岳温泉は単純酸性温泉で、pHは約2.5。観光協会が載せている分析書では、湯は「無色・澄明」で、少量の白い沈積物がある。普段は透明で、管に付いた湯の花を流す日に白くなる、と観光協会は書く。三泊のあいだに私が見た濁りが、そのどちらだったのかは追えなかった(岳温泉の記事)。白い濁りは、泉質名からは分からない。

泊まった宿の客室の風呂が茶色い温泉だったこともあるが、成分は確かめていない(宿の記録)。色だけで泉質を言うことは、私にはできない。

よくある質問

泉質は全部で何種類ですか?

温泉の掲示に使う泉質名(掲示用泉質名)は10種類です。単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉。分析書に書かれる正式な泉質名は「ナトリウム-塩化物泉」のように成分を並べたもので、数はずっと多くなりますが、どれもこの10種類のどれか(または複数)にあたります。2014年の改訂で、それまでの含銅-鉄泉と含アルミニウム泉がなくなり、含よう素泉が加わりました。

妊娠中は温泉に入ってはいけないのですか?

2014年の改訂で、温泉の一般的禁忌症から「妊娠中(とくに初期と末期)」は削られました。中央環境審議会の温泉小委員会の議事録によると、日本温泉気候物理医学会が文献や研究成果を調べ直した結果、温泉浴が妊婦に特異な影響はなかったこと、そもそも妊娠は病気や病態ではないことが理由です。泉質を問わない入浴の注意(熱い湯や長湯を避ける、など)は、妊娠中かどうかに関係なくかかります。体の状態についての判断は、この道具ではしません。

温泉なのに、泉質名が書かれていないことがあるのはなぜですか?

温泉法の「温泉」と、泉質名が付く「療養泉」は、基準が違うからです。温泉法では、25℃以上か、メタけい酸やメタほう酸など19の成分のどれか一つが基準の量以上なら温泉です。療養泉は、25℃以上か、溶けている成分の総量や、二酸化炭素・鉄・水素イオン・よう化物イオン・硫黄・ラドンのどれかが基準の量以上のものだけで、泉質名はこの療養泉に付きます。たとえば25℃未満で、メタけい酸だけが基準の量以上の湯は、温泉ですが療養泉ではありません。

適応症に書かれている病気には、効くのですか?

それは確かめられていません。適応症は環境省の通知が定めた掲示の基準で、通知自身が、温泉の効用は温度や環境、生活リズムの変化などの総合作用によるもので、温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難だ、と書いています。温泉法と施行規則が掲示を求める事項に、適応症は入っていません。掲示の内容は、知事の判断に委ねられています。泉質ごとに、比べて確かめた研究がどこまであるかは、上の一覧の「分かっていないこと」に書きました。

「美肌の湯」は、どの泉質ですか?

「美肌」は掲示の適応症にない、通称です。環境省の冊子は、炭酸水素塩泉を「俗にいう“美人の湯”」と紹介しています。アルカリ性単純温泉が美肌の湯と呼ばれることもありますが、その適応症に肌のことは入っていません。

入力した泉質名は送信されますか?

送信しません。泉質名の読み解きも、気になることの選択も、ブラウザの中で表を引いているだけです。押したボタンの文字や打った文字も、アクセス解析に記録しない設定にしています。ただし、サイト全体で使っている解析ツールは、どのページでも画面上のクリックの位置を記録することがあります。

出典

  • 環境省自然環境局「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」2014年7月(鉱泉分析法指針のPDF)。療養泉の定義、泉温・液性・浸透圧の分類、泉質の分類と名付けの決まり、知覚的試験。
  • 環境省自然環境局長通知「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準」2014年7月1日、環自総発第1407012号(通知のPDF)と、同 新旧対照表。適応症・禁忌症の語句は、この通知の表のまま。
  • 環境省自然環境局 自然環境整備担当参事官通知「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等について」2014年7月1日(遊離炭酸などの飲用量の算出)。
  • 環境省「新旧泉質名対照表」(掲示用泉質名10種類)。
  • 中央環境審議会 自然環境部会 温泉小委員会(第14回)議事録、2014年4月3日。妊娠中を禁忌症から削った理由、含銅-鉄泉・含アルミニウム泉を削り含よう素泉を加えた経緯。
  • 環境省「温泉利用施設における硫化水素中毒事故防止のためのガイドライン」2017年9月。
  • 温泉法(昭和23年法律第125号)第18条、温泉法施行規則第10条(掲示する事項。e-Gov 法令検索)。
  • 環境省自然環境局『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(監修 日本温泉気候物理医学会)2019年3月。泉質ごとの「特徴」。
  • 久保田一雄、倉林均、田村耕成、田村遵一「成人型アトピー性皮膚炎に対する草津温泉療法——100症例の治療経験」日本温泉気候物理医学会雑誌、62巻2号、71–79、1999年。
  • Verhagen AP, et al., "Balneotherapy (or spa therapy) for rheumatoid arthritis", Cochrane Database of Systematic Reviews, 2015, CD000518(要旨で確認).
  • Verhagen AP, et al., "Balneotherapy for osteoarthritis", Cochrane Database of Systematic Reviews, 2007, CD006864(要旨で確認).

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